中谷彰宏の「恋愛食堂」vol.7:キャンセルをしない人が、愛される。
キャンセルをする時、どうするか。
――その時の対応で、愛されるお客さんになれるかどうかが、決まる。
お店は、キャンセルに対し、どう対応すれば良いか。
――キャンセルポリシーを掲げることを恐れない。
「面接の達人」シリーズの著者で知られる中谷彰宏が恋愛のコーチングをする連載「中谷彰宏の恋愛食堂」。食事にまつわる実体験をもとに、「愛されるにはどうすればいいか」中谷流メソッドをご紹介します。
最近はお店のキャンセルポリシーが、以前より厳しくなっています。
「当日キャンセルは、100%料金をいただきます」
という表記が、以前より増えました。
理由は、ドタキャンが増えているからです。
ドタキャンが増えた理由は、予約方法が、電話予約から、オンライン予約にスライドしたことです。
電話予約だと、覚悟を決めて予約します。
オンライン予約では、便利で簡単に予約ができる為、覚悟が弱まります。
とりあえず何軒か予約しておいて、後で決めればいいか、となります。
1人3軒予約して、4人が各自予約すれば、12軒。
結局、11軒はキャンセルになります。
顔が見えないだけに、キャンセルをすることに抵抗感がなくなります。
最悪の場合は、連絡なしでのキャンセルも増えています。
こういう状況で、お店の人に愛されるお客さんになるチャンスがあります。
愛されるお客さんは、キャンセルをしません。
1件のキャンセルで、お店は赤字になる。
「前日までなら、仕入れの食材費もかからないから当然無料」
というのは、勘違いです。
食材は、何日も前から準備をしています。
スタッフは、予約の人数でシフトを組んでいます。
前日に席が空いても、翌日までに埋まる確率は少ない。
結果、空席になります。
4人がけテーブル×3席の家族経営のフレンチレストランで、1テーブル空いた時の損失額がどれほど痛いか、客商売をしたことがない人には分かりません。
オンライン予約は、お客さんにも、お店にも、便利なはずのシステムでした。
でも、マナーが崩壊すると、オンライン予約自体が、崩壊することになります。
新しい技術は、マナーが伴ったもののみが、存続していきます。
同行者の都合が悪くなった時は、別の人を連れて行く。
「かといって、当日、相手のスケジュールがNGになった場合は、どうすれば良いのですか」
ある接待の達人は、こうしています。
得意先のスケジュールが急遽、NGになった。
それでも、キャンセルはしない。
「お金を払えばいい」というのは、ルールであって、マナーではありません。
ルールさえ守れば、愛されるお客さんになれるわけではありません。
マナーを良くすることで、愛されるのです。
接待の達人は、その日、部下を連れてお店に行きます。
そうしないと、次回から、席を取ってもらえなくなります。
高級なお店ほど、「お金を払えばいい」お店ではありません。
信用で繋がっています。
「キャンセルが多い人」という記憶は、焼き付きます。
「一度もキャンセルをしたことがない人」という評判も、残ります。
というと「店は、無限にあるから大丈夫じゃないか」と思うかもしれません。
ところが、レストランのスタッフ同士は、繋がっているのです。
レストラン関係者の間で、その人の名前が出た時、「ああ、キャンセルが多い人でしょ」で通じてしまうのです。
そういう人には、席が空いていても、「あいにく、満席をいただいておりまして」と言うようになります。
自分のマナーの悪さが生み出した結果なのです。
お店は、キャンセルポリシーを掲げて、マナーの良いお客さんへの対応は手厚く。
キャンセルをしたお店には、足を運びにくくなります。
もともと予約をしていた好みのお店なのに、行きにくくなってしまいます。
自分で自分のお気に入りのお店を、予約の候補から外すことになります。
「どうしても、都合がつかなくなってしまった場合は、どうすれば良いいですか」
その場合は、別の日に予約を入れます。
少なくとも、1週間以内に来店することで、精神的な埋め合わせになります。
「キャンセルの連絡をした時、お店の人の対応が悪い」と怒っている人がいますが、お店側からすると、切ない気持ちになっているのです。
「キャンセルをすること」は、クセになります。
一度、キャンセルをすると、抵抗感がなくなります。
「キャンセルをしないこと」も、クセになります。
「お店側はどうしたら良いですか。マナーの良いお客さんもいらっしゃるので」と飲食店の従業員に聞かれました。
お店側は、遠慮なく、キャンセルポリシーを明確に掲げておくことです。
その上で、マナーの良いお客さんには、情状酌量の幅を持たせれば良いのです。
writer
中谷 彰宏
nakataniakihiro
作家・俳優。恋愛からレストラン経営まで、著作1100冊を超える。日本中・世界中のレストランを巡りサービスについて研修。実家は、スナック・寿司店。中谷塾主宰。【公式サイト】https://an-web.com/