中谷彰宏の「恋愛食堂」最終回:たくさん喋ったお店に、また来る。
お皿をさげる時が、喋るチャンス。
――喋ることで、友だちになれる。
おしゃべりが増えると、お店が繁盛する。
――おしゃべりが増えると、クレームが減る。
「面接の達人」シリーズの著者で知られる中谷彰宏が恋愛のコーチングをする連載「中谷彰宏の恋愛食堂」。食事にまつわる実体験をもとに、「愛されるにはどうすればいいか」中谷流メソッドをご紹介します。
contents
「デートで食事に行って、次回のデートに繋がりません。どうしたら良いですか」
と相談されました。
デートでの食事の満足度は、料理では決まりません。
インテリアでも、ありません。
「そのお店に行って楽しかったか」で決まります。
「楽しかったかどうか」は、「いっぱい喋ったかどうか」で決まります。
いっぱい喋った時は、満足度が上がります。
そうすると、次回のデートに繋がります。
喋る相手は、同行者だけではありません。
お店のスタッフと、どれだけ喋ったか。
他のお客さんと、どれだけ喋ったか。
その総量が、喋った量です。
オーダーは、「おしゃべり」に入りません。
「ありがとうございます」「美味しかったです」も、喋りに入りません。
それは、業務連絡です。
業務連絡から一歩進んだ会話が「おしゃべり」です。
料理と関係ないことも、「おしゃべり」です。
関西人の「いらんこと」を言うのが、これです。
「いらんこと」が、関係を深めるのです。
お客さんは、お客さん扱いをされたいわけではありません。
お店のスタッフと、友だちになりたいのです。
料理と関係がないおしゃべりをした時、初めて友だちになることができます。
「お仕事の邪魔にならないか」と、心配するかもしれません。
「おしゃべり」は、長さではなく、頻度です。
頻度が少なくなると、長話になって、仕事の邪魔になります。
頻度が多くなると、短く切れるので、仕事の邪魔になりません。
時々、お客さんとおしゃべりをしていて、叱られているスタッフもいます。
これは、店長さんの勘違いです。
「『おしゃべり』をしているヒマがあったら、働け」という発想です。
売上げは、関係が深まることで、生まれます。
「おしゃべり」が、関係を深めるので、利益を上げることに繋がっているのです。
食べに来るのではなく、喋りに来ている。
お客さんは、食べに来ているのではありません。
喋りに来ています。
僕の実家のスナックでも、お酒を飲みに来ているわけではありません。
喋りに来ています。
喋ることで、仕事で抱えたストレスを、発散できるのです。
親戚が、美容師をしています。
カットの腕よりも、喋りがうまいので、人気です。
別の親戚は、写真店を経営しています。
やはり、喋りがうまいのでリラックスした、良い写真を撮ることができます。
楽しく子どもとおしゃべりすることができるか、ということが子どもの写真をより可愛く撮れるテクニックになります。
「客として来店した際の、喋るタイミング」に悩みます。
最初の皿を下げに来た時が、喋るチャンスです。
料理を出す時は、料理の説明があるのでタイミングはありません。
下げる時は説明がないので、喋ることができます。
もう一つのチャンスは、お水を注ぎに来た時です。
本当は、お水を注ぐのが目的ではありません。
お客さんの反応を見るのが、お水を注ぎに来る理由です。
会話の原点は、驚きをツッコむこと。
「何を話せば良いか、わかりません」と言います。
「ありがとうございます」をあえて言わず、「ありがとう」以外の別の言葉を話そう、という切り替えをします。
「ありがとう」と言うと、会話が終了します。
「ありがとう」は、会話から逃げる言葉なのです。
「美味しいです」で終わると、スタッフに「ありがとうございます」と言わせてしまうので、会話が終了します。
おしゃべりとは、相手に関心を持つことです。
関心は、驚きから生まれます。
「美味しい」は、評価です。
評価は、上から目線です。
「良い味付けだ」というのは、上司が部下に言う台詞です。
「おしゃべり」は、水平関係から生まれます。
「美味しい」より「何これっ!」と驚くことのほうが、「おしゃべり」を生み出します。
驚きとは、漫才でいうツッコミです。
おしゃべりが減ると、ストレスが溜まります。
お客さんだけではなく、スタッフにも溜まります。
これがクレームになります。
おしゃべりが増えると、クレームも少なくなります。
スタッフもストレスが無くなるので、サービスをする余裕が生まれます。
その結果、お客さんの満足度も上がるという好循環になります。
お客さんは、たくさん喋ったお店にまた来ます。
その結果、お店が繁盛します。
お客さんとお店の関係は、恋愛関係と同じなのです。
「恋愛食堂」は、しばらく「中休み」です。
また、どこかのお店で、おしゃべりしましょう。
writer
中谷 彰宏
nakataniakihiro
作家・俳優。恋愛からレストラン経営まで、著作1100冊を超える。日本中・世界中のレストランを巡りサービスについて研修。実家は、スナック・寿司店。中谷塾主宰。【公式サイト】https://an-web.com/