わくわく高須会議 「ちょっと贅沢なおとなのパン」のはなしVol.1

日本の食と文化を明るい未来につなげる、次世代の若者たちへの応援メッセージ「わくわく高須会議」。高須光聖氏・椎木隆太氏・古川純氏・現役大学生がパンの価値を上げるには、どうすれば良いかを存分に語りあいます。

パンはおしゃれ でも単価は安い

高須
先日、冷凍パンの専門家と話す機会を頂き、そこでパンは手間がかかる割に単価が安く、パン職人は大変だと聞きました。値段が高くてもいいから、ちょっと贅沢な、おとなのためのパンはないかなと、それならワインじゃないかと提案しました。ワインに合うパンということなら高単価にできるのではと。
おいしいパンをつまんで、おとな女子とおとな男子が楽しい時間を過ごす、ワインによく合う贅沢なパンを日本中から集めて、食べ比べてみたらどうだろうと、そういう優雅な話で盛り上がりました。今日は、そんなパンの未来、夢と希望を広げていきたいと思います。
実は、個人的な話で恐縮ですが、僕は自らすすんでパンを食べないようにしています。パンはひとつ食べれば満足、というわけにはいきません。いちどパン屋さんに入ってしまうと、甘いもの、辛いもの、お惣菜的ものなどいろんな味と種類のパンを、いくつも買いたくなり、パン屋さんは誘惑でいっぱい。そろそろ、カロリーも気になる年齢だし…。ただ、パンがおいしいのは間違いないです。
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古川
女性がパン好きなのは、なぜなのでしょうね。
学生
それは、パンはおしゃれだから…。
高須
おしゃれ?
椎木
確かに、片手に茶碗を持って白飯を食べるとか、大きなおにぎりをほおばるというイメージとかとは違いますね。
学生
はい、パンそのものも可愛いし、それを食べている姿も可愛いでしょ。それと、私たちは、甘いものもしょっぱいものも、いろいろ食べたい。クイニーアマン(フランスの伝統的な甘い焼き菓子)もおかずパンも、両方を同時に食べたいのです。
日本ではパン屋さんがいろんなバリエーションのクイニーアマンを作っています。表面が硬めで中はしっとりしていて、私も大好き。
高須
なるほど。女性は日常生活の中で、毎日のようにパンを買うのですね。たしかにパンは単価が安いですね。値上がりしたといっても、ひとつ300円、400円ですか。ランチにいくらくらい使うのでしょうか?
学生
500円くらいかな。パンは2つくらい買えます。でも休みの日にみんなで食べるときには、カフェで4000円くらいのアフタヌーンティーも行きますね。ホテルだと1万円以上するのですが、それと同じような見た目だったら、4000円はお得ですから。
椎木
アフタヌーンティーは女性に人気ですが、見栄えがいいからでしょうかね。なんかこう、高く積んでいて、いろいろ並んでいて…。
学生
そう、見た目がきれいで、特別感があるのは大事です。

ワインとともに プラスワンのイメージアップ

高須
では、高くてもひとつ500円以下という現状の中で、パンをもっと価値のあるものにするにはどうすればいいでしょうか。
椎木
高すぎるパンは売れない、というのは思い込みかもしれません。例えば、ワインによく合う少々贅沢なクロワッサンというなら、1000円でも1500円でも納得できます。ワインとパンをパッケージにすれば、1000円以上のパンでも価値があると思えるのです。
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椎木
プラスワンのイメージアップですか。また、ワインでなく日本酒に合うパン、というのではダメですかね? 日本酒と塩辛を挟んだおつまみパンとか。
高須
面白い、いいかも。ただ日本酒については、スッキリしているとか、甘口、辛口とはいうけれど、味を語る言葉が少ない印象を持っています。ワインは、芳醇な香りとか、「まるで世界一の山を登った後の清涼感」とか、ブドウの話や年代や産地のうんちくなど、いろいろな背景を尽きることなく語れますよね。なぜでしょうね。 パンそのものに関してもあまり語りようがないですね。甘いとかしょっぱいとか、他は何を語ればいいのか…
そうですね。かつて高級食パンが話題になったとき、おいしい食パンブームになりましたが、いつのまにかそのブームが去りました。パン自体に語るものが少なかったかもしれません。でも、ワインを語りながら一緒に味わいたいパン、というならがぜん興味が沸きます。女性は、もちろんワインを飲みますよね。
学生
はい。ワインはおしゃれ、という感覚がありますから、好きな人も多いですね。でも、焼酎や日本酒はあまり飲む機会はありませんし、味について話すこともないです。

こだわりのワインの話もしよう

古川
日本のワイン産地といえば、みんな長野や山梨を思い浮かべます。近年は気候変動の影響で産地に変化を及ぼしていると言われています。日本の変化をいち早くキャッチ、おいしいワイン選定、ブランディング、それに合わせたおいしいパンができれば。興味深いですよね。
高須
面白いですね。地球温暖化、異常気象などの科学的なデータ、それに伴う味の変化、ますますワインで語れることが増えますね。そんなワインに最もマッチしたおいしいパン…。
椎木
1000円でも、2000円でも、本当においしければ食べてみたい、そういうジャンルのパンは魅力的です。
高須
ワインによく合う、という付加価値のフレーズがついてくることが大事なような気がします。極上のワインに合うように作られた上質のクロワッサンと言われると、椎木さん言うように多少高くても一度食べてみたく思いますよね。

profile

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高須光聖

放送作家、作詞家、脚本家など多岐にわたるジャンルで活躍。「水曜日のダウンタウン」「ロンドンハーツ」ほか、これまでに約300のテレビ番組を企画、現在も十数本のレギュラー番組を持つ。

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椎木隆太

1991年ソニー入社。シンガポール・ベトナム(ハノイ)に5年間駐在。ハノイの会社前の道端に天秤棒で毎日運ばれてくるバインミーに感激して以来パンマニアになる。2001年に独立・起業し2014年に株式上場を達成。

古川純

講談社で企画開発に従事。FT&MCEO、神奈川大学講師、東京余市会広報役員、tsumiki証券brandproducer等を兼務。著書TIME≠MONEY。最高のパンを探求し、世界87ヶ国を巡るパン好き旅人。