【レポート】関西で活躍する女性菓子職人 パティシエールの饗宴

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴

1960年代から70年代にかけて渡仏、かの地で本物のフランス菓子に触れ、技術を身に付けてきた日本のフランス菓子職人たちを第1世代とすれば、その後に続く第2世代から薫陶を受け、自身もかの地に渡り技術とエスプリを磨き、帰国後にそれぞれの個性を花開かせて活躍する第3世代たち。そんな今、旬なパティシエの中でも関西で活躍する3人の女性菓子職人を一堂に集めて開いた特別レッスン。大阪ガス「ハグミュージアム」 2’ndアニバーサリーを飾ったパティシエールの個性を皿の上に盛り合わせて、スペシャルなアシェット・デセールを仕上げてもらった。

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴

老若男女が大好きな和洋の栗。
12のパーツと合わせて、贅沢に食べくらべ。

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴関西で活躍するパティシエールをフューチャーして行われた今回のレッスン。母から受け継いだ素朴な焼き菓子にフランス生活で身につけたエスプリを加味、極上の焼き菓子を繰り出して人気を博する『マモン・エ・フィーユ』の松下奈保さん、町工場が密集する東大阪で小さなフランスを表現する『パティスリー・リエルグ』の小森理恵さん、フランス就業でチョコレートの魅力に開眼して以来、チョコレートのある小さな幸せを発信し続ける『ル・プティ・ボヌール』の廣嶋 恵さんら、3人のシェフ・パティシエールがそれぞれの得意分野に注力。焼き菓子の松下さんがビスキュイ、ガトーに定評の小森さんがクリームやチュイル、廣嶋さんがチョコレートとグラスをといった具合に、アシェット・デセールを仕立てるためのパーツを準備。参加者の感性でひと皿に仕上げる、夢のコラボレーションを実現しました。さらに、美と健康の視点から食をとらえ、自らも美食を楽しむ美のカリスマ、『エステ・ド・ヒロ』の有馬ヒロ子さんも登壇。美と食の関係について語ってくれるというゴージャスなイベントとなった。

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴

当日は午前、午後の2部を実施。回ごとに違った食材をテーマに、デセールを仕立ててもらうという豪華な内容です。まず午前の部、テーマはマロン。
「老若男女が好きな素材。ゆで栗をペーストにして、ミルクと砂糖を加えたクリームがあるだけで幸せな気分になれる」と語る松下さんの満面の笑みに、会場内の空気もゆるんでリラックス。今回は和栗と洋栗、2種類のクリームを用意するという豪華な仕立てに。
「和栗も洋栗も種類が豊富で、それぞれに微妙な違いを楽しめます」と自店でも栗を使っている小森さん。とは言え、ひと皿に和洋を取り合わせるのは珍しい。
「理由は単純。両方食べられたらうれしい! 食べくらべみたいにしてみたいよね、って私たちが言ったから。シンプルに食いしん坊の願望を実現しただけ(笑)」。
その屈託のなさに、会場にも同感の笑いが広がった。

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴今回の洋栗クリームは、リエルグでお菓子に使っているのと同じものを用意。香り華やかなアンベールにサバトンのマロンペーストをブレンド。香りも味わいも濃厚なのが特徴です。さらに松下シェフからはブランデーケーキについてのこだわり、より香り豊かに仕上げるポイントを伝授されました。
「とにかく口溶けにこだわって、発酵バターの上澄のみを使い、オーブンは焼成温度のプラス20℃で予熱して生地の立ち上がりをしっかりとつくること」とすぐにでも実践できるポイントを教えてくれました。グラッサージュショコラは廣嶋シェフのデモンストレーション付き。カカオパウダーを使って手軽に作れるルセットを紹介。

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴「作って冷蔵・冷凍保存しておけるので、おうちデザートにも使ってもらえます」と廣嶋さん。
その他にも、小森シェフの和栗クリーム、マロンのコンフィ、松下シェフのサブレとパイ、廣嶋シェフのプティックショコラとショコラのメレンゲをそれぞれに用意。参加者のみなさんにはクレームシャンティーを立ててもらい、マロンクリームを絞ってアシェット・デセールに仕上げてもらいました。基本のクレーム・シャンティ—を作ってもらう実習では、3人のシェフと有馬さんも参加。各実習台を回り、生クリームの混ぜ方や盛り付けのコツ、さらには健康や美容についての質問に答えていました。
「シャンティーは盛りつける直前に、もう一度しっかり混ぜるとキレイに形づくれるんですよ」(松下シェフ)、「盛り付けるときは、正面を自分のほうに向けてバランスを見ながら」(廣嶋シェフ)など、参加者のみなさんもシェフそれぞれのアドバイスを熱心に聞き入りながらの実習でした。

続くお楽しみの試食タイムには、糖質の吸収を抑制する効果が期待されるサラシアを使ったオリジナルカクテルも用意。甘酸っぱいベリージュースとリキュールを合わせて、まずはひとくち。さっぱりとしてベリーの香りが広がり、リキュールのほのかな苦みが尾を引き、スイーツのおいしさもひときわでした。

素材の香りと色をダイレクトに表現。
シンプルで同調したゴージャスな皿。

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴午後からの第2部のテーマはナッツの女王、ピスタチオです。
「初回のミーティングで、何をする?って聞かれて私が即答して決定しました」と松下シェフ。めったに食べられないピスタチオのミルフィーユを作りたい!との一言に、2人のパティシエールも同意。スペシャルなピスタチオのミルフィーユが、午後の部の主役に決まりました。ちなみに、松下シェフにとってピスタチオのお菓子は、フランス滞在中の思い出の味だそう。
関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴「地中海を渡って、たびたび遊びに行っていた北アフリカで出会ったのがピスタチオのお菓子。ナッツに砂糖を合わせて丸めただけのシンプルなお菓子でしたが、ナッツの濃厚な香りとすっきりとした味わいに、目からウロコでした。それ以来、ピスタチオは大好きな素材のひとつ」。
そんな松下シェフのリクエストを映したのが、小森シェフが作るピスタチオのクリーム。
「ミルフィーユのパイ生地との相性を起点に、ア・ラ・ミニッツで仕上げられるクリームにしようと考えました。配合はシンプルに、ナッツのおいしさがダイレクトに伝わるよう心掛けました」と小森シェフ。
バターをしっかりと気泡させたブールモンテに、ピスタチオのペーストをたっぷりと合わせて、ごく少量のアーモンドリキュールで香りを加えただけ。口に入れるとパイ生地とからみ、スッと溶けてナッツの香りが広がるクリームです。そのクリームに合わせて廣嶋シェフが用意したのは2種類のチョコレートシート。こちらもシンプルに、ナッツの香りにシンクロするミルクチョコレート、味のコントラストを生み出すブラックチョコレートを合わせました。3人が共有したのはシンプルな仕立てで、との視点。
「今回、組み合わせを考えるにあたって、意見が割れることはなかったですね。不思議と3人で同調して、何をどうするか、ストンストンとまとまっていった」と松下シェフ。

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴シンプルな主役を引き立てる脇がためには、松下シェフがクリアな味わいを追求したフランボワーズのコンフィチュールを。
「コンフィチュールは香りが大切。だから私は芳香のしっかりとしたフランス産かセルビア産のブランボワーズを使います。フルーツに含まれる天然成分で適度なトロミに仕上がるから、ペクチンは添加しないの。砂糖だけで煮て、とにかくていねいにアクをすくい取るだけ。それがクリアで上品な味に仕上げるポイント」と自店のコンフィチュールづくりをおしげもなく披露してくれた松下シェフ。
「フランボワーズは脂肪の吸収を抑制してくれる効果もあるんですよ。肉料理のソースとして使われているんのも、理にかなっているというワケです」と有馬さん。
さらに食感のアクセントになり、ゴージャスなビジュアルを演出するためのチュイルを小森シェフのデモンストレーションで。
「水分や湿度に弱く、パリパリの食感がすぐに悪くなるからガトーに使えない」としながら、砂糖とバター、水だけのごくシンプルなルセットと作り方を伝授してくれた。またフィニッシュのデモンストレーションでは、ブライダル施設のレストランでデセールシェフを務めた経験を持つ廣嶋シェフが見せる盛り付けのポイントを伝授。
「今回のパーツは全部で11種類。これだけ色々盛り込んでも、シンプルなお皿を選べば映えますよ」と廣嶋シェフ。
「技法としてよく使うのが、点描と線描。クッキングシートを三角形に折った紙コルネにソースを入れて、先端を細く切って押し出せば、細い線や小さなドットも描きやすいです。太さ、大きさをランダムに、リズムや表情を作るのもおもしろいですよ」とワンポイント。少し盛り付けを変えるだけで、ガラリと変わる表情を楽しめる。

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴「甘いものを食べるとき、私が実践しているのが食前にお酢を飲むのと野菜を食べること。甘いものを食べると血糖値が急上昇して体内のコラーゲンを傷つけるんです。
これが肌荒れの原因。また脂肪細胞も増えるんです。お酢を飲んだり野菜を食べることで糖の吸収を抑制し、血糖値の急上昇を防ぐよう心掛けています」と美のカリスマの有馬さん。お酢を飲んだり野菜を食べたりできないときは、ナッツを食べてから食事や甘いものを口にするそうです。
「今回のピスタチオのデセールは、ナッツもたっぷり。美容にもとっても良いんですよ」と女性にはうれしいお話も聞けました。

それぞれが体験したフランスを語り、
その魅力を伝えたトークショーも盛り上がり。

参加者のみなさん、それぞれに仕上げたデセールを楽しみながら、フランスで暮らした経験を持つ4人のトークタイム。フランスでの生活、思い出を語っていただきました。松下シェフは大好きなパリの蚤の市巡りで、お宝のオールドバカラとの出合いについて。有馬さんは日本人である個性を大切に、自分らしさを大切にとの言葉をかけられたかのバレエダンサー、シルヴィ・ギエムとの出合いについて。小森シェフは修業時代に買い集めた料理本を今も大切にとっていると。廣嶋シェフはフランス修業時代に出会ったチョコレート細工から、今に至るまでに力を注いだ細工ものの作品画像を拝借。その精巧な造作に、会場の参加者からも感嘆の声が上がっていました。

関西で活躍する女性菓子職人~パティシエールの饗宴(文/植田唯起子)