[食な人]エッセイスト 武部好伸 さん

武部好伸
ウイスキーアンドシネマ2 心も酔わせる名優たち/武部好伸
ウイスキーアンドシネマ2
心も酔わせる名優たち

淡交社/1500円
前著『ウイスキーアンドシネマ 琥珀色の名脇役たち』同様、往年の名作から最新作まで47作(おまけ+1作)を厳選。“琥珀色の名優”たちが魅せる多彩な表情を、遊び心たっぷりに紹介している。読めば飲みたくなり、観たくなる一冊。

銀幕の隠れた“名優”
ウイスキーに魅せられて

『ジョン・ウィック』でキアヌ・リーブス扮する孤高の殺し屋が、麻酔代わりにあおったのはなんと高級バーボンの「ブラントン」! 『容疑者Xの献身』で主人公・福山雅治が旧友への手土産に「ボウモア17年」を選んだのには、理由があった…。映画の中に登場するウイスキーにスポットをあてて綴ったエッセイ集『ウイスキーアンドシネマ』の第2弾を、昨年11月に上梓した武部好伸さん。

「映画とウイスキーをこよなく愛する僕にとって、どんな形であれ銀幕にウイスキーが登場するとワクワクします。単なる小道具といえばそれまでですが、その作品の歴史的背景や人物の生い立ちなど、いろんな情報を発信している〝演技派の役者〟でもあるんですよ」。

武部さんが映画の魅力に開眼したのは大学2年生の頃。「黒澤 明監督の『生きる』で、人生観が変わりました」。一方、ウイスキーとの出合いは、新聞記者になってからの33歳。「親戚から貰ったシングルモルト『グレンフィディック』を飲んだ瞬間、全身にビビビッと電流が走ったんです」。そこからウイスキーの魅力にハマり「酒飲みから酒好きに変わりました」。ウイスキーへの興味からスコットランドを訪れたことで、現在のライフワークでもあるケルト文化の研究へと繋がる。「1本の映画と1本のウイスキーが、僕の人生を変えたんです」。

著書の中には、スコッチだけでなく、バーボンやジャパニーズ・ウイスキーも登場する。映像で判然としない銘柄は、国や時代背景から推測したり、信頼のおけるバーテンダーに聞くなどしてウラを取る。「調べてみるとフェイク(架空の代物)が使われていることも多いんですがそれを解き明かすのもまた楽しい」。

作品は自身で観たもの以外に、配給会社や洋酒好きの映画愛好家にも協力を得て集めた。「チェッカーの駒の代わりにウイスキーのミニチュアボトルを使うシーンがある」と教えてくれたのは、ふらりと立ち寄った天王寺のバーのバーテンダー。「だけど題名が曖昧で、〝何とかの男〟としかわからない。手当たり次第に観たり聞いたり、1年がかりでやっと見付けたのが『ハバナの男』です」。

独自の視点で読み解き、描かれた本書を読めば、銘柄や飲み方が、登場人物の心理状態をセリフ以上に饒舌に物語っていることに気付かされる。ウイスキーの知識やエピソードも興味をそそり、前に観た映画も再鑑賞したくなり、グラスを傾けながらその余韻に浸りたくなる。


武部好伸(たけべ よしのぶ)/
1954年大阪市生まれ。大阪大学文学部美学科卒。読売新聞大阪本社記者を経て、エッセイストに。映画、洋酒、ケルト文化などをテーマに執筆活動に励む傍ら、 2011年にはアコギ・ユニット「ちょかBand」を結成。ライブ活動も精力的に行う。

撮影/塩崎 聰
文/柴田くみ子

食な人〜foodist〜
2018年3月号から転載/掲載号の詳細はこちら