[食な人]焙煎人 中川ワニさん

焙煎人 中川ワニさん
「中川ワニ珈琲」のレシピ 家でたのしむ 手焙煎(ハンド・ロースト)コーヒーの基本
「中川ワニ珈琲」のレシピ
家でたのしむ
手焙煎(ハンド・ロースト)コーヒーの基本
リトルモア/1400円
コーヒーの豊かな旨みと個性を引き出すブレンドでファンを魅了する焙煎人・中川ワニさんが、ハンド・ローストの基本を詳細に解説。長年の経験から培った知識・技術を凝縮し、コーヒーの醍醐味を伝える画期的なロースト&ドリップの手引書。

誰でもできるハンド・ローストで
コーヒーにも“お家の味”を

今や家庭でも気軽にコーヒーが楽しめるようになった一方で、「コーヒーは味も、淹れる工程も難しい」というイメージもいまだ根強い。なかでも「焙煎」は、その最たるものだろう。一見、大掛かりと思われがちだが、「手焙煎(ハンド・ロースト)なら、日々のご飯を作るのと同様、誰もが家で気軽にできます。パンやケーキと同じで、お店の味とホームメイド、それぞれの魅力があるように、コーヒーも多様な楽しみ方があるんです」と中川ワニさん。

焙煎を始めて24年。個人ロースターのパイオニアとして、焙煎の仕事の傍ら、各地を旅しながら教室を開き、コーヒーライフを楽しむ人の輪を広げてきた。そんな中川さんが近年よく訪れているのがインドネシア。「現地では気分によって豆や焙煎を変えたりして、それぞれ自分の家の味を楽しんでいる。郷土食や家庭の味があるように、コーヒーも地域や家ごとに色んなおいしさがあっていいんだと感じましたね」。

各地での出会いやインドネシアで豊かな日常に触れた経験もきっかけとなり、今年2月、中川さんは焙煎、それもハンド・ローストをテーマにした本を初めて上梓した。「コーヒーも〝調理できる食材〟の一つ。どういう風にできあがっていくのかをリアルに感じることで、より身近なものになれば」との思いが込められている。

紹介されるレシピは、中川さんが日々の焙煎で培ったノウハウを、可能な限り自宅でできる手焙煎に落とし込んだもの。手焙煎自体は昔からある原始的な手法だが「できるだけ手間なく、おいしく調理してもらえるように」と、道具は100円ショップでも手に入る取っ手付きのザルを使用。生豆は水洗いして、弾ぜた時に散らかってしまうチャフ(薄皮)を予め取り除いておく。豆の変化を秒刻みの連続写真で追い、火元とザルの距離だけで火加減を〝見える化〟したり、豆が弾ぜる音の大小を擬音語で表したりと、感覚的な部分を伝える見せ方にも腐心した。もちろん、その豆で淹れるワニ式ハンドドリップも詳細に指南されている。

「誰でもすぐできるので、カレーや玉子焼きのような家庭料理を作る感覚で、まずはやってみてほしい。このレシピが、自分なりの〝おいしさ〟を追求するはじめの一歩になれば。そこからバリエーションが生まれていったらいいですね」と中川さん。自らの手で作ったオリジナルの一杯が、コーヒーの新たな楽しみを開いてくれる。


中川ワニ(なかがわ わに)
1964年石川県生まれ。画家・焙煎人。13歳でコーヒーに目覚め、94年『中川ワニ珈琲』を立ち上げる。注文に応じて豆を届ける、個人焙煎の草分けであり全国にファンを持つ。

撮影/東谷幸一 文/田中慶一
撮影協力/『喫茶月森』

食な人〜foodist〜
2018年5月号から転載/掲載号の詳細はこちら