[食な人]大阪ガス 近畿圏部 都市魅力研究室長 山納 洋さん

大阪ガス 近畿圏部 都市魅力研究室長 山納 洋 さん
地域プロデュース、はじめの一歩
地域プロデュース、はじめの一歩
河出書房新社/1600円
会社員の傍ら、日替わり店主のカフェをプロデュース。1000回以上のイベントや数々のプロジェクトを企画してきた型破りなサラリーマン(著者)が、実際の事例から学んだ成功と失敗を、わかりやすい言葉で綴った“山納流プロデュース論”。

新しい世界をひらく
カフェは“間口の広い何か”

「プロデューサー」と聞いて思い浮かべるのは「肩に掛けたカーディガンの袖を前で結んでいる」、「有名人と友達であることを自慢する」、あるいは「あいつもあいつも俺が育てた」という人? 冒頭の〝プロデューサーあるある〟にいきなりつかまれる。

劇場のマネージャーやクリエーターの創業支援事業に携わり、さらには地域を舞台にしたラジオドラマをプロデュースしてしまう。会社員でありながら、地域プロデューサーとしてカフェのオーナーも務める山納さん。3月に上梓した本書は、経験と実績を失敗例も交えてまとめた、集大成ともいうべき独自のプロデュース論だ。

六甲山麓の茶屋カフェやラジオドラマの制作など、数々のプロジェクトを成功させてきた山納さんが「自分の原点」とも言うのが、2004年に立ち上げた日替わり店主の『コモンカフェ』だ。街で見つけたとある一軒の店が、カフェであり、小劇場であり、ギャラリーでもあるのを見て「これからはこんな複合施設が必要とされる」と直感。曰く、カフェとは「間口の広い何か」。つまり、一番広い表現空間になり得るところ。『コモンカフェ』の場合、開業を目指す人にとって小さな挑戦ができる場であり、表現活動に携わる人にとっては〝試し打ち〟ができる場でもあるというわけだ。

「〝食〟を介して、知らない人と出会ってお喋りができるという、今でいえばSNSのような側面もある」。カフェは、〝人とつながりたい〟〝何かを表現したい〟という、人間の根源的な欲求と結びついているのではないか、と。「この仕組みを使って何かをやってみたいという人たちが現れる限り、これからもずっと続けていきたい」とも。

飲食やカルチャー、アートまで。数々のイベントやコミュニティプロデュースを手がけてきた山納さんは言う。「世の中の流れを読みつつ、小さなアクションを起こす。そうすれば、そこから新たな動きが必然的に生まれてくる。大事なのは、思いつきをまず形にすること。そしてそれは、僕のように組織の中で働く人にもできることだと思うんです」。プロデューサーにとっての思考や行動を綴りながら、〝どの山に登ればいいかわからない時代〟を生きる人達に向けて「一歩を踏み出せば、違った景色が見えるかも」と呼びかけるメッセージにも受け取れる。


山納 洋(やまのう ひろし)
1993年大阪ガス入社。扇町ミュージアムスクエア、メビック扇町、大阪21世紀協会での企画・プロデュース業務を経て、2010年より大阪ガス 近畿圏部。地域活性化、社会貢献事業に携わり、個人としては04年より『コモンカフェ』を主宰。

撮影/下村亮人 文/柴田くみ子

食な人〜foodist〜
2018年7月号から転載/掲載号の詳細はこちら