[食な人]料理人 エネコ・アチャ・アスルメンディさん

エネコ・アチャ・アスルメンディ さん

“持続可能”な食を求めて――
自然への敬意が生む究極の料理

今、バスク料理が世界の注目を集めていることをご存知だろうか。スペインの北西部からフランス南西部にかけて広がるバスク地方は、バスク美食街道とも呼ばれ、現在この地方だけでも三ツ星レストラン4店を抱える。その急先鋒が、このほど公開された映画『世界が愛した料理人』の主人公、エネコ・アチャ・アスルメンディがオーナーシェフを務める『アスルメンディ』だ。

映画では、エネコ氏をはじめ、同じく三ツ星を獲得したスペイン料理店『ラサルテ』のオーナーシェフ・マルティン=ベラサテギ氏、フレンチの巨匠・ジョエル=ロブション氏、『すきやばし次郎』の小野二郎氏など錚々たる顔ぶれが登場し、その料理への思い、哲学を語る。

「この映画で感じたことは、バスクと日本の共通点について。バスクと日本は気候も風土も全く違うし、料理も似ていない。にも関わらず映画が進むにつれ両者が近しく感じられたのは、どちらも、お客様をとても大切にするという点が似ているから。そしてどちらも、食べることをただ生きるための行為ではなく、お祝いやイベントとして楽しんでいますよね」。

そんな日本へのシンパシーを感じる彼が昨年、東京・六本木に『エネコ東京』をオープン。バスク料理をベースに、日本の季節の食材を使った美しく想像力豊かな料理を提供している。バスクの郷土料理が日本の食材によってどう花開いたかはぜひお店で確認していただきたいのだが、「冬には特別なフュージョン料理を考えています。ぜひ待っていてください」とのこと。その全容も今から気になるところだ。

映画ではまた、『アスルメンディ』が持つ独自のエコシステムについても語られる。畑で植物を育て、室内の空調は地熱システムを利用。雨水は貯水し、ゴミは肥料にリサイクルする。そのサスティナブルな取組みもまた世界的な評価を得、「世界で最も持続可能性の高いレストラン」に選出されている。

「これまで料理の世界ではそうした取組みはあまり行われてきませんでしたが、私はその土地の食材を使い料理する料理人の義務だと思っています。私達は自然、その土地と寄り添って生きているし、そうするべきなんです」。

料理を通して世界と、そして自然とのつながりを説く彼が、この映画を通じて今後の〝食〟というもののあり方を示してくれているようである。

撮影/清水純一 文/土澤あゆみ

世界が愛した料理人

世界が愛した料理人

『二郎は鮨の夢を見る』(11年)、『ノーマ、世界を変える料理』(15年)に続く美食ドキュメンタリー。エネコ氏をはじめ、『すきやばし次郎』の小野二郎氏らガストロノミーの世界を支える巨匠たちがその料理哲学を語る。
なお、関西エリアでは、11月3日から、大阪・テアトル梅田などで順次公開。

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エネコ・アチャ・アスルメンディ

1977年生まれ。2005年に『アスルメンディ』をオープン。2012年、スペイン史上最年少でミシュラン・ガイドの三ツ星レストランに選出された。2017年にはエリート・トラベラー誌が選ぶ「世界のベストレストラン」第1位を獲得。同年、東京・六本木に『エネコ東京』をオープンした。


食な人〜foodist〜
2018年11月号から転載/掲載号の詳細はこちら