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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第77回〉
2017年 6月

大阪も梅雨入りが発表され曇天での開催となったが、早くも涼風の爽やかさを感じさせてくれる前菜が披露された。また今回から、新たな特別テーマがスタート。日本全国の知られざる食材や産品を、どのように大阪的に料っていくのか、楽しみなところである。



久保是人さん 久保是人さん
おおさか料理 浅井
お店HP
ぐるなび
坂本 晋さん 坂本 晋さん
北新地「味菜」
お店HP
ぐるなび
中村正明さん 中村正明さん
和洋遊膳「中村」
ぐるなび



◆7月の前菜テーマ「涼風渡瓜畑 〜瓜尽し〜」 料理人:久保是人氏
前菜「涼風渡瓜畑 〜瓜尽し〜」

涼風渡瓜畑 〜瓜尽し〜

・冷やし南瓜
・毛馬胡瓜 飛荒味噌煮
・白瓜手鞠寿司
・豆鰺南蛮漬
・青瓜 鱧の子金糸巻

【料理について】

色合そして食味で夏らしさを演出してくれる瓜。今回はそんな瓜のみを使った前菜が披露された。戎南瓜を使った冷やし南瓜は、裏濾したものを加減出汁で合わせ、卵白に寒天とゼラチン、そして和辛子で寄せている。毛馬胡瓜の味噌煮では、霜降りした毛馬胡瓜、そして飛荒海老のガラで出汁をとったものと白味噌を合わせ、ゼラチンとアガーで葛引きし卵白で泡状にしたものが掛けられている。白瓜の手鞠寿司は、昆布〆にした白瓜を輪切りにし、叩き木の芽の寿司飯と茗荷で手鞠寿司としている。豆鰺の南蛮漬は、常のごとく掃除し踊り串を打ち、揚げて南蛮漬けにした豆鰺を、乾燥器にかけ一晩干しているところが面白い。最後に青瓜を使った鱧の子金糸巻は、霜降りした鱧の子を、旨出汁で炊きあげ、これをゼラチンで流し固めている。青瓜を桂むきとし立て塩して干し、後にこれを金糸玉子と先ほどの鱧の子で巻き切り出している。


大阪料理会

【総評】

「夏らしく、そして色合いも美しい」「それぞれ異なった瓜の食感を楽しむことができた」といった賛辞が多く寄せられた。質問が相次いだのが、冷やし南瓜。卵白とゼラチン、寒天の他に和辛子を加えている点。えびす南瓜の料理といえば、どうしても甘くなるが、和辛子を加えたことで大人の味わいになっている、といった声が聞かれた。「南瓜を生かす新しいアプローチではないか」といった評も少なくなかった。また「和辛子といえばすぐに辛みが飛んでしまいがちに感じるが、とてもよい辛みになっている」という感想もあった。次に質問で目立ったものが豆鰺南蛮漬。「なぜ、乾燥器にかける必要があったのか」という問いに対して、「味がなじんだ豆鰺を、さらに一晩乾燥器で乾かす。これにより汁気をなくし旨みだけを残すことができるのではないか」という久保氏の狙いなどが紹介された。

大阪料理会




◆6月のテーマ食材「泉州鱧」  料理人:坂本 晋氏
泉州鱧の流しもの・泉州鱧の巻き上げ

泉州鱧の流しもの
泉州鱧の巻き上げ

最近では、料理店においては韓国産の鱧や他府県産がほとんどを占めるようになった鱧。
今回はあえて大阪料理会らしく、泉州産の鱧にスポットがあてられた。先ずは「流しもの」だが、骨切りした鱧を筒状にして巻き上げておく。そして骨などのアラでスープをとっている。鱧の白子は酒蒸しに、八尾枝豆はペーストに、猿海老は微塵切りとしている。これらを鱧出汁で炊いた鱧の浮き袋と混ぜ合わせ、筒状にした鱧の上身に流し込んでいる。ソースは、鱧の肝に猿海老の頭そして焼き梅干しを鱧出汁で裏濾したもので作られている。 次に泉州鱧を使った「巻き揚げ」は、骨切りした鱧に、鱧のすり身と玉蜀黍を合わせたものを乗せ巻いている。芯には鱧の子を酒盗漬けにし干して焼いたものが使われている。梅干しの種を使った煎り酒風のタレが塗られている。


【総評】

泉州鱧を丸ごと使った料理二品。いずれも「内臓の使い方が見事」との賛辞が相次いだ。鱧の流しものは、その中に使われている猿海老がとてもよく効いているという意見に対して、坂本氏から「泉州にある郷土料理、じゃこごうこをひとつのヒントにしている」との答えがなされたのが印象的であった。また合わせて坂本氏からは、「最近では韓国産だけでなく、淡路からは『べっぴんさん』、徳島からは『あっぱれ』などの鱧が大阪市場に溢れている。ある意味、大阪産の鱧を探すのが難しい状態でもある。だからこそ泉州鱧を使う意味があるのではないか」とするコメントがなされた。巻き揚げの料理については、梅干しの煎り酒風のタレに多くの関心が集まった。焼いた梅干しを酒で焚くことで出る酸味感、それに淡口醤油が非常によくマッチングし、素晴らしいタレとなっている、とのコメントも寄せられていた。

大阪料理会




◆6月のテーマ食材 その1「淀川天然鰻」  料理人:坂本 晋氏
淀川鰻豆腐の葡萄油煮

淀川鰻豆腐の葡萄油煮

鰻は4cm程度の大きさにぶつ切りとし内臓を掃除。これを素焼きし火を通して骨を抜いている。これに湯がいた牛蒡を詰め鍋に入れて、赤ワインを入れてアルコールを飛ばしている。これを砂糖と濃口で炊いていき、味醂とタマリで調味する。すり身1に対して豆腐3を合わせ豆腐のすり身を作り、ラップに延ばしこれに先ほどの牛蒡鰻を巻いて蒸している。鰻を焚いた地で共地餡を作り掛けてられている。



◆6月のテーマ食材 その2「泉州水茄子」
  料理人:中村正明氏
水茄子と魚素麺

水茄子と魚素麺

皮をむいた水茄子を八等分して揚げ、色出しし火を通している。これを油抜きし旨出汁に干し海老を加えたもので炊いている。鱈などで作ったすり身に焼いた干し海老・砂糖・塩・片栗粉を加え魚素麺を作っている。自家製の紫蘇ペーストオイルで先ほどの魚素麺を和え水茄子を炊いた出汁を絡め、器には水茄子と魚素麺を盛り合わせ針を天盛りとしている。


【総評】

夏の大阪を代表する旨い物を使った二品。「どうして鰻に赤ワインを合わせたのか、その発想はどこから」との質問に中村氏は「ワインのソムリエからのアドバイスに、鰻には赤ワインですよ、というある種定説のようなものがあることを知った。鰻は魚なので白ワインかと思いきやそうではない。そこには鰻と赤ワインとの相性があるのではないかと思い試作してみた」。また続けて料理そのもののヒントは昔の料理も関係していることをこのように説明した。
「鰻の印籠煮という料理があります。今回はそこにもヒントを得て、これを赤ワインでやってみました」。料理へのコメントとしては、「淀川天然鰻ならではの皮の柔らかさが、印籠煮に適してものとなっている」。「確かに鰻と赤ワインとの相性には面白い魅力がある」などのコメントが寄せられていた。
水茄子をテーマにした料理では、最初に中村氏より「泉州水茄子といえば、どうしても漬物というイメージが強い。まずこれを払拭したかった」との説明がなされた。試食後の感想の多くは「シンプルな美味しさがある」という意見が大半であった。また運営委員の中からは「みずみずしい水茄子を炊くというのは、どうかと最初思ったが、海老と合わせたことがよい結果を生んでいると思う」との評もあった。これに対し中村氏は「水茄子と海老との相性は、ジャコゴウコが証明しているように思う」との説明を行った。また魚素麺の作り方などについての質疑応答も行われ、各店での魚素麺法も紹介された。

大阪料理会




特別テーマ 〜知られざる郷土食材を和する〜
第一回:岐阜県「塩烏賊」

塩いかは、岐阜・長野など海から離れた地域で加工されてきたもの。皮を剥いたイカを茹でて塩漬けにした食材。イカ(スルメイカ)の内臓を取り去り、茹でたイカの胴部にゲソ(下足)とともに塩(岩塩など)を詰め加工した塩蔵食材。冷蔵、冷凍保存ができなかった昔から、保存食として活用されている。


塩烏賊と大阪夏野菜の冷製盛合せ

坂本晋氏の献立

塩烏賊と大阪夏野菜の冷製盛合せ

岐阜出身の坂本氏によると「最も一般的な塩烏賊の食べ方は、夏野菜と合わせる料理法。よってこれを大阪夏野菜と合わせてみました」との料理説明が行われた。
塩烏賊の塩を落として割き、塩水に浸けさらに塩抜きする。残った塩水に昆布を加えて火を入れ、馬場茄子を切り出してこれに浸けておく。毛馬胡瓜は切り出し炒め、ほうれん草は湯がき八方出汁へ。ペーストにしたトマトを裏濾し、塩昆布水で調味し荏胡麻油を乳化させる。


大阪料理会

『塩烏賊飯詰め』『塩烏賊の燻製と毛馬胡瓜』

中村正明氏の献立

塩烏賊飯詰め

「一品目はいわゆる烏賊飯をヒントに、塩烏賊で味わいの違いを狙ってみました」との説明がなされた。 塩烏賊の塩を洗い流し、昆布水に浸けてさらに塩抜きをする。餅米と米を同割りとし、人参、椎茸、下足の微塵切りを太白胡麻油で炒め調味して煮ている。塩烏賊の胴体にこれらを詰めて蒸す。昆布出汁に烏賊の魚醤と味醂・砂糖で味付けし葛を引き餡掛けとしている。


塩烏賊の燻製と毛馬胡瓜

「二品目は烏賊の燻製、塩烏賊の燻製でどう風味や味わいが変わるかなどを狙ってみました」との説明がなされた。 塩烏賊を同様に塩抜きし、これを丸ごと櫻のチップで燻製にしている。毛馬胡瓜は種を取り去り昆布の立て塩に漬けている。燻製にした塩烏賊を薄切りにして胡瓜と合わせて揉み合わせ、土佐酢を掛けて仕上げる。


大阪料理会




撮影/藤澤 了  文/笹井良隆