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異色の歴史に醸されし 〜美食のマカオ〜
異色の歴史に醸されし 〜美食のマカオ〜

中国料理『ジ・エイト』個室。末広がりの“8”が縁起がいいとされるのは中国も同じらしい。古銭を連ねたシャンデリアは“8”の連鎖か。

ハリネズミ型のチャーシュー饅

名物点心・ハリネズミ型のチャーシュー饅一皿66MOP。蒸して針を立たせて、底はサクッと焼き上げてある。

世界遺産が溢れる街。カジノの街。
いやそれ以上に、美食の街だと言い切ろう。
源流は遙か昔、大航海時代。
香辛料を求め、キリスト教の布教を目的に、ポルトガル人が大海原に乗り出し、アフリカ、インドを経てマカオへと到った時、多様な食材と文化がもたらされた。
それから500有余年。
東洋と西洋、現在と過去が交差した、ほかに類を見ない食文化がこの地に醸成されたのだ。
昨年、ユネスコの「食文化創造都市」認定を受け、本年はマカオ美食年
世界のセレブを迎えるための最高級ダイニングから、街角のローカルフードまで。
マカオにしかない美食がある。
関西から直行便でたった4時間。
いざ行かん、食べるマカオの旅へ。

ここは別天地か?
ホテルや総合型リゾートに
ハイエンドなレストランが続々

トランク型点心

トランク型点心は川エビのパイ生地仕立て75MOP。

ファンシー点心が魅せる中華

 マカオの中国料理は旨い。何なら世界一の水準かもしれない――食好きの間で、そんな噂が密やかに語られ出したのは10数年前だろうか。日本はもちろん中国本土や香港でも味わえない華麗なる中華がここにある、と―。

 例えば、前頁の愛らしいハリネズミは、チャーシュー饅。しかもすこぶる付きに旨い本格派だ。1本1本の針は職人の庖丁仕事。ハリネズミ専門の点心師が朝から掛かりきりで手作りしている。ふんわり蒸しパンのような優しい食感。底だけ焼いてカリッと香ばしく―と、小技まで利かせて心憎いばかり。中のチャーシューもたまらない旨さだ。

 ならば、中身で勝負すればよさそうなものだが、何故このように愛らしい姿をしているかと言うと、「忘れないでほしいから」。その心は――?

金魚はエビ蒸し餃子

金魚はエビ蒸し餃子84MOP。むっちりプヨンとした浮き粉の皮の中、ブリンと弾けるのはニューカレドニア産の青いエビ。

 中国本土から伸びた半島と、「タイパ」「コロアン」の2つの島、その間を埋め立てた造成地区「コタイ」で構成されたマカオは、全部合わせても大阪市の約7分の1の面積。そこに最新の統合型リゾート(IR)が林立しており、100軒を超えるホテルが稼働中だ。その大半が中国料理店を擁しているのだから、小さなマカオにどれほどの数の中国料理店が犇めいているかは推して知るべし。

 そう、ここでは旨いだけでは足りないほどに競争率が高い。「我こそは」と存在をアピールするのは並大抵ではない。故に、独創性をも競うこととなる。

 こうした背景が、件のハリネズミ点心を生み出した。これは、1カ月以上前の予約必須という人気店『ジ・エイト』の看板メニュー。他にも、金魚姿にトランク型と、忘れ難い名物点心がわんさか。見た目ファンシーでも、地に足の着いた揺るぎない味わいだ。

バーベキュー・ポーク

バーベキュー・ポーク160MOP。脂と赤身のバランスのいい肩肉を低温でじっくり火を入れて、驚異的にしっとりジューシー。幸せな甘さは蜂蜜の仕業。

黒白胡麻プリン

黒白胡麻プリンは陰陽の模様にドキリ。60MOP。

ホテル『The 8』 ホテル『The 8』

マカオ半島・中国料理

『The 8』

蓮の花をイメージしたという奇天烈な形の52階建て、マカオ半島のランドマーク、『グランド・リスボア・ホテル』の2階。アプローチから度肝を抜く演出に迎えられ、ダイニングは縁起がいいとされる巨大金魚とクリスタルが燦めき、絢爛豪華な内装。昼の飲茶は350MOP程度と意外にリーズナブル。ホテル最上階にはフレンチ『ロブション・オ・ドーム』があり、16800本を揃えるワインリストは共有。サ10%別。
●グランド・リスボア・ホテル 2F
TEL:8803-7788

オーガニック・チキンの串焼き

ザクロとビーツに漬け込んだオーガニック・チキンの串焼き130MOP。

花畑のようなインド料理

 お次も度肝を抜く、ピンク色の肉の塊に金粉がけ。何とタンドリー・チキンだ。
 マカオでインド料理とは唐突に感じる向きもあろうが、実は、両者は深い縁で結ばれている。15~17世紀の大航海時代、インド西海岸のゴアもマカオも、ポルトガル領とされ、ゴアからマカオへとインドの香辛料が伝えられた。それがマカオ料理のルーツとなり、カレーを使ったローカルフードを生むのだが、それは後述。ここでは “アジア初の星付きインド料理店”として話題の『ゴールデン・ピーコック』をご紹介しよう。

 スパイシーチェリーのタルト

サクッと軽い食感、デザートの特製スパイシーチェリーのタルト108MOP。7時間煮込んだミルクをベースにした優しい味わいの生地と、チェリーの爽やかな酸味の組合せは初体験。

 週末なら1日10万人が訪れる観光スポットでもあるメガ・リゾート『ザ・ヴェネチアン・マカオ』内。ランチはブッフェ・スタイルで、10種以上のカレーにサラダ、牛・豚以外の肉料理も豊富に揃って198MOPとお手頃でもあり、インド人ツーリストが列を成す。このハイエンドなインド料理は、本国人にも、わざわざ訪れる価値あるものらしい。

 真骨頂は夜の看板メニュー。カラフルでアーティスティックな料理に、茶色いイメージのインド料理の概念が片っ端から覆される。ピンクのタンドリー・チキンは、ザクロとビーツをベースにしたタレに24時間漬け込んだもの。野菜や果物の甘みが鶏肉の中に活きていて、パサつくことなくソフトでジューシーだ。
「ザクロの働きで肉が軟らかくなるんです」とは、シェフのジャスティン・ポールさん。「スタッフはインド各地から来ているから、多くの地方料理をカバーしています。中国人向けにインドスパイスは控えめにしてますよ」とも。確かにマイルドで上品な料理が多い。それ以上に、こんなに華やかなインド料理は初体験。

シェフ

気さくでサービス精神旺盛なジャスティン・ポール氏。

ケバブ

花畑のようなインド風クリスピーマッシュルームとチーズのケバブ98MOP。割るとチーズがとろり。フルーティーなソースで。

ホテル『GOLDEN PEACOCK』

コタイ地区・インド料理

『GOLDEN PEACOCK』

2007年にコタイ地区に完成した巨大リゾート『ザ・ヴェネチアン・マカオ』内。ゴンドラが行き来する運河まであるヴェネチアを模したIR。ホテル客室は3000室。高級レストランは20以上。その内の1軒が『ゴールデン・ピーコック』で、意匠の異なる3つのフロアがあり広々。夜のセットメニュー888MOPなど、カジュアルに楽しめる。サ10%別。
●ザ・ヴェネチアン・マカオ1F TEL:8118-9696

アーティスティックな
料理と店内装飾で
世界中から集まる客を魅了

マリネ・ジャパニーズ・ツナ

マリネ・ジャパニーズ・ツナ398MOP。食材の95%は世界中から輸入。「日本の素材は新鮮で美しい」とシェフのお気に入り。

ジャポネに出合うイタリアン

 各国料理の水準も高いマカオ。イタリアンの名店も数多い。今回は、“本国以外で唯一の三ツ星イタリアン”として名高い香港の『81/2ボンバーナ』マカオ店へ。

『ザ・リッツ・カールトン』、『JWマリオット』など6つのホテルを擁する『ギャラクシー・マカオ』内に2015年開店。イタリアのアーティストによる店内装飾も情熱的にしてエレガントなこの店で、まさかたくさんの“ジャポネ”に出合うとは思いも寄らなかった。

 まずは、スイーツのようにキュートな赤い円筒形の料理。ベリー系のゼリーに見えたそれは、築地から空輸したマグロの大トロ。「柚子と、僕の出身地ナポリのレモン、シシリーのオリーブ油でマリネしています」とシェフのアンティモ・メローヌさん。キャビアを戴いたジュエリーボックスのように燦めく逸品は、食せば確かにイタリアンなアロマが漂う。

パスタ

パスタは、ブルンと力強い歯応えのリングイネ。バター代わりのバフンウニとレモングラスの香りが秀逸428MOP。

 パスタには北海道産ウニを卵黄代わりにソースに混ぜて。魚料理は東京から届いた天然のキンキ。「水分を多く含む魚なので、軽く焼いただけ」と、繊細な火入れで、蕩けるように滑らかな食感に。

 そしてドルチェは、エスプーマを使ったスポンジケーキと柔らかいチョコフレーク、幾層もの薄いパイ生地と、多様な食感が愉しく、味わいの輪郭が際立ったチョコケーキ。こちらは、何と作り手が日本人。長野出身の高橋草哉さん30歳。いつか故郷にパティスリーを開くことを目標にマカオで奮闘中。ソーヤ・タカハシという名前、覚えておきたい。

 キンキ  

ワイルド・キンキは、ジューシーに焼かれ、キンキの骨と野菜でとったスープをベースにした甘酸っぱいソースで。ホウレン草の中には極小のキューブ状のカポナータが。598MOP。

 ドルチェ  

日本人パティシエによるドルチェは、ラズベリーのミルフィーユ、ソルベ、チョコレートケーキ158MOP。

 シェフ  

ボンバーナ氏の信頼厚い若きシェフ、アンティモ・メローヌ氏。

『8½ Otto e Mezzo BOMBANA』

コタイ地区・イタリア料理

『8½ Otto e Mezzo BOMBANA』

現在第3期工事中で、完成すればマカオ最大のメガ・リゾートとなる予定の『ギャラクシー・マカオ』内。ムラーノ・ガラスやモザイクタイルが彩る華麗なインテリアにも心躍るレストランだ。メニューの40%は香港の本店と同じだが、それ以外は「少しモダンに、科学的アプローチも取り入れてアレンジしています」とシェフ。ランチ488MOP~。ディナーコース1380MOP~。サ10%別。
●ギャラクシー・マカオ 1F TEL:8886·2169

まさに東西食文化ミックス。
大航海時代の副産物・
マカオ料理の独自性

聖ポール天主堂跡

世界遺産、聖ポール天主堂跡。イエズス会により1602年に創建され、東洋一美しい教会と言われたが、1835年の火災で焼失。現在はファサードが残るのみだが、美しいレリーフは健在。

マカエンセが作るウチの味

 ハイエンドなレストランばかりがマカオではない。
「食べるのがとにかく好きで、同じ通りに同じ業種の店があれば、全員美味しい方へ流れる」と言われる、シビアなマカオの人に育てられた、町場の店もハイレベルだ。しかも、前述した大航海時代に端を発するポルトガルやアフリカ、インドからもたらされた食材や習俗が、中国南部のマカオで新たな食文化となって醸成された、唯一無二のユニークなジャンルがある。それが“マカオ料理”だ。

 代表的な一品は “ミンチィ”。家庭ごとに味が異なるソウルフードで、豚肉のミンチ、刻んだポルトガル・ソーセージ、玉ネギ、ニンニク、香辛料を甘辛く炒めたそぼろと、ポテトフライをご飯の上にのせ、天辺に目玉焼きを飾れば出来上がりだ。中華でもなく、さりとてポルトガル料理でもない、ちょっぴりスパイシーな家ご飯。「卵やポテトは、ボリュームを出すために後から入れるようになったと思うよ」とは、マカオの肝っ玉母さんと呼びたい『老地方』のアンナさん。

  アフリカにはないアフリカンチキンも代表格。船乗りがアフリカで出合った辛い鶏肉のグリルがルーツで、インドのカレーや、経由地の一つ、マラッカのココナツミルクが加わり、マカオで独自の進化を遂げた鶏のグリル料理だ。カレーとは違うし、中近東風味もあり、ココナツミルクのマイルドさも優しくて、深みのある…。日本人には未体験の複雑な味わい。数十種の香辛料を配合して看板メニューに掲げるなど、店ごとに異なる味を食べ比べるのも面白い。

聖フランシスコ・ザビエル教会

コロアンにある聖フランシスコ・ザビエル教会は、クリームイエローの可愛い佇まい。

 アフリカンチキンと似て非なるポルトガルチキンなるメニューもある。前者は手の込んだレストラン料理だが、後者は町場の味。こちらにもココナツミルクが入っていて、カレー風味のクリームシチューのようだが、これまた未知の味。卵とジャガイモが入っているのは、やっぱりボリュームアップのためだろうか。そして、これも本国ポルトガルには存在しない、マカオ独自の味だ。

他にも、ポルトガルでよく食べる塩鱈・バカリャウのコロッケなど、ポルトガルの血を受け継ぐ子孫・マカエンセたちの“ウチの味”は、優しくも本気で旨い。

世界遺産とストリートフード

 東洋と西洋のミクスチャーな食は、ストリートにも溢れている。

 マカオの象徴とも言える世界遺産の聖ポール天主堂跡のほど近く。リスボンを思わせる白黒の石畳の上で、若いカップルが頬張っているのは、ポークチョップバーガーだ。幾つもの店があるが、行列ができる人気店は、1965年創業の『世記咖啡』。パンはフランス風の硬いバンズかトーストが選べるが、バンズを指さしてグッド・ジェスチャーをする店のオネエサンに従って正解。中華風スパイスに漬け込んで揚げた豚肉が、パンからはみ出る大迫力。お供には炭焼きコーヒーを。ポルトガル人が持ち込んだ当時のように、七輪に掛けた土鍋で淹れる。キリリとした苦みは歴史の味か。

ミンチィ

ミンチィ80MOP。ガツンと濃厚。他のマカオ料理店でもミンチィにトライしたが、そちらは上品な仕上がりであった。

コロッケとポルトガルチキン

左/バカリャウのコロッケ2個18MOP。幾つでも食べられる素朴な味わい。
右/ポルトガルチキン55MOP。インドのサフランが決め手、ココナツミルクを使うのはマレー料理の影響らしい。

アンナさん

元気印のアンナさんを慕う常連多数。

老地方

福隆新街は、元遊郭があった通り。赤い飾り窓や扉が色っぽい。

マカオ半島・家庭料理

『老地方』

マカオ観光の出発点として、誰もが訪れるセナド広場から歩いてすぐ。『老地方』とは、「いつものところ」という意味とか。名物母さんは元公務員のマカエンセ。料理好きが高じて店を始めたそうな。「ダンナは中国系。息子はポルトガル顔で、お相撲さんみたいに大きいよ」と笑う。
●新馬路福隆新街10號 TEL:2893·8670

混沌たる路地裏フードもマカオの象徴

 そこから徒歩1分ほど。セナド広場から大堂巷通りに入った路地裏のベンチで、みんなが食べていたのはカレーおでん。10年ほど前からB級グルメの人気者にのし上がってきた。元は、モツ鍋屋が健康志向を受けてマイナーチェンジし、野菜やつみれを煮て、16世紀からマカオの人にお馴染みのカレーを掛けたら人気が爆発。続々と真似する店が出て、カレーおでん通りができる事態になっている。「中でもここのカレーソースが一番美味しい」と言うマカオ在住の知人のお薦め『恒友』でトライ。カラフルな練り物や野菜、ホルモンが串に刺さってきれいに並べられている。その中から好みの物を洗面器に放り込んでいくのは愉快だ。店番のオバサンが串から外した具材を鍋に投入。鍋の中はだしでなく、ただの水らしい。朝はあっさり、夜になると具材から出ただしで濃厚になるらしい。熱々に炊かれた具材にカレーを掛ける。辛さは選べるけど、「スパイシー」を選ぶと大変な激辛が来るので注意。味は、おでんとはまるで別物のエスニックな風味。安くてお腹一杯になるのは確か。

カレーおでん

カレーおでん串1本10MOP。チーズ入りやイカスミなどつみれ各種。黄白のつみれは蝦子入り。トマトやレタスが旨い。

路地裏

『恒友』(左上)の隣もカレーおでん屋。50mに1軒はありそうだ。『世記咖啡』はいつも行列が(右下)。

 デザートもバラエティー豊かだが、ポルトガル発祥・エッグタルトは必食。道頓堀にも看板を掲げる『アンドリューのエッグタルト』の本店『ロード・ストウズ・ベーカリー』が、南端のコロアンにある。イギリス人のアンドリュー・ストウさんが、ポルトガルの伝統菓子を英国風タルトにアレンジしたところ大好評で、マカオ中に広まったとか。1989年創業以来のレシピそのままに焼くタルトは1日2万個も売れるらしい。

 焼きたてのサクサクとしたパイ生地を楽しみながら歩けば、日本人観光客が必ず訪れる聖フランシスコ・ザビエル教会にほどなく着く。薄黄色の外壁と空色の窓枠が愛らしい小さな教会で、教科書に載っていたザビエルの肖像画に悪戯書きしたことを思い出す。

 メガ・リゾートが妍を競い合うテーマパークめいたコタイ地区とは対照的な、鄙びた漁村の静けさが残るコロアン。その迷路のような路地をのんびり散歩する。これもまたマカオだ。

 エッグタルト

『ロード·ストウズ·ベーカリー』のエッグタルト1個9MOP。

ポークチョップバーガー

ポークチョップバーガー 48MOP。炭焼きコーヒー20MOP。

“美食はマカオに在り”私的第2期突入

 香港に似ているか。否。中国に、ポルトガルに似た街があるだろうか。否。地球上どこを探してもこんな街はない。

 特異な歴史と地理的条件、神の計らいによって生まれた、唯一無二の存在。近未来を覗いたような見たこともない形の建造物があり、ネオンサインが目映く燦めく。その足もとには当たり前の人の営みがあり、人懐こい笑顔を浮かべる顔はアジア系と西洋系が入り交じっている。道路標識には一々漢字とポルトガル語が併記され、石畳に浮き上がる白と黒の石灰岩で描かれたモザイク模様は、波や船や錨、エビにタコと、海にまつわるものたちに、陰陽のマークや中国風の古銭が混じっている。そして、世界遺産を構築する30の建造物と広場のある歴史の街でありながら、急速に変化成長し続けている。

 30年前、香港旅行のついでに立ち寄ったのが初回。七色のネオンが遊園地めいて見える『ホテル・リスボア』前で撮った記念写真が残っている。当時、マカオで一番高いランドマークだったリスボアの隣に、『グランド・リスボア・ホテル』が52階という威容を見せたのは2008年。建ったばかりのそのホテルに宿泊したのも、香港のついでだったが。その時、華麗なるホテル中華とイタリアン、町場のマカオ料理に魅了された。

「カジノで大金を賭けるハイローラーは、食にも大金を掛けるので、世界中から有名料理人をヘッドハントしている」― との事情通の言に深く納得してしまった。

 以来、食べるためにマカオを目指して10数度。すっかり通な気分で、“マカオグルメ探訪の旅”など企画したのは2010年のことだ。何となく知り尽くした気になって暫くご無沙汰していたが、8年ぶりの此度。

 埋め立て地区コタイの急成長ぶりに開いた口がふさがらなかった。新たなレストランの登場と、いよいよ苛烈さを増した競争に勝ち残るための創意工夫に感動さえ覚え…。

“美食はマカオに在り”私的第2期突入。またぞろ通うことになりそうだ。もうすぐ香港―マカオを結ぶ海上大橋も開通しそうだから、次回はマカオのついでに香港にも寄ろうと思う。

【今、泊まるならコタイ地区】

メガ・リゾートが集中するコタイ地区。それぞれに度肝を抜く演出、意匠を凝らしており、見学して回るだけでも愉しいし、行くべきレストランは目白押し。下写真は、今年2月にオープンしたホテル『MGMコタイ』。館内300点のコレクションを巡るアートツアーも。

文/団田芳子
だんだよしこ・フリーライター。「大阪」と「旅」が2大テーマ。気に入ると通う習性は、旅も飲食店も同様。未訪の国が多数あるのに、香港に20数回、マカオに10数回訪れている。本誌では『関西だけのこの宿とまれ』を連載中(10月号P132)。
撮影/ハリー中西 構成/的場幸恵

※マカオへの電話のエリア番号は(+853)、レートは1マカオ·パタカ(MOP)=約14円です (2018年9月現在)。