大分の温泉旅館「界 由布院」の 個性派“ジビエ鍋”に舌鼓

大分の温泉旅館「界 由布院」の 個性派“ジビエ鍋”に舌鼓

あまからジャーニー

2023.10.24

文:川島美保 / 撮影:岡森大輔 

Sponsored by 界 由布院

全国有数の人気温泉地、大分・由布院の奥座敷に昨夏開業した「界 由布院」。棚田を抱くランドスケープが郷愁を誘う温泉旅館には、新しい由布院を感じる提案が其処此処に。なかでも印象に残ったのは、「山のももんじ鍋」なるジビエ料理でした。

目次

コンセプトは、‟棚田暦で憩う宿“ 農家の手仕事「わら綯(な)い」でお守りづくり! 名物「山のももんじ鍋」とは? 朝食の「だんご汁」にほっこり

コンセプトは、‟棚田暦で憩う宿“

澄み渡る秋晴れの空の下、棚田の稲がそよ風に揺れている。元気に飛び回る赤トンボに、日暮れと共に響き渡る、鈴虫やコオロギの声。里山ののどかな空気感に包まれながらテラスで呑む湯上がりのビールが、なんと沁みることか。

「由布院の原風景を感じながら、当地の知られざる文化や歴史に触れていただければ」と、滞在の醍醐味を話す総支配人の丹澤 徹さん。‟棚田暦で憩う宿“をコンセプトにする旅館のランドマークである棚田は、荒廃していた耕作放棄地を再興したもの。棚田に見える季節の移ろいが、実に味わい深い。農家の土間をイメージしたロビーのフロントには羽釜を飾り、客室を照らすらせん状の照明は、大分県北東部の国東(くにさき)半島で栽培されている七島藺(しちとうい)というイ草に似た多年草を使った逸品。大分がマダケ竹材の生産量が日本一であることにちなんで、館内や客室の随所にあしらわれた竹材が、洒落ていながらも温かみあるムードを醸している。

「界 由布院」の棚田春先は青空が映り込む美しい水鏡、秋は金色の稲穂が一面にと、季節ごとに表情を変える棚田の景色は宿の見どころのひとつ。棚田の中には、2棟の客室「棚田離れ」が建つ。

「界 由布院」のロビーミュージアムのような趣があるロビー。左手にあるのは、24時間開放されているトラベルライブラリー。大分にまつわる様々な本が取り揃えてられていて、カフェも無料。

「界 由布院」の客室「くぬぎ離れ」七島藺を使った「蛍かご照明」(写真上部)は、45室ある全客室に使用。蛍が籠の中を舞うように点滅する淡い光が癒される。写真の客室「くぬぎ離れ」は全3室で2名1室利用の場合、1泊2食付35000円~。

農家の手仕事「わら綯(な)い」でお守りづくり!

「両手を合わせてより合わせていく縄は、祈りのかたちを表すと言われています」とスタッフ。ご当地の文化を体験できるご当地楽「わら綯い」は、由布院の農閑期に行われる手仕事を楽しめるもの。稲わらを手でより合わせる作業は、単純に見えて集中力が必要。自らの手で稲わらが縄へと変化していく様に、物づくりの原点を垣間見たような感動を覚える。

ひと仕事終えたところで、大浴場の露天風呂でひと息。雄大な由布岳を遠く真正面に見ながらの湯浴みは、開放感抜群。透明でやわらかな湯に導かれるように、心も身体もほどけていく。

『界 由布院』のご当地楽「わら綯い」の体験風景ご当地楽「わら綯い」の体験は毎日16:00~18:00に開催。要予約で参加無料。15分ほどで、手のひらサイズの可愛らしい縄飾りのお守りを完成できる。

『界 由布院』の露天風呂と内風呂豊後富士の異名を持つ由布岳を真正面に見据える露天風呂と内風呂。露天風呂は浴槽の一部に段差が設けられていて半身浴もしやすい造り。寝湯のスペースもある。湯上がりに冷えた麦茶やフルーツ味のアイスキャンディーが無料で用意されているのもときめく。

『界 由布院』の湯上がりビールセット&棚田テラスそれぞれ鹿と猪をベースに豚挽肉を合わせた2種のジビエソーセージとオリジナルの「至福の湯上がりビール」を楽しめる湯上がりビールセット(1500円。15:30~17:00のみの提供 ※期間限定)を頼むのも一興。風が心地よい棚田テラス(写真右)でも、部屋に持ち込むでも、場所の選択は自由。

名物「山のももんじ鍋」とは?

真っ白な脂身が、独特の甘みを広げながら舌の上で蕩けていく。酸味が利いたカボスおろしでいただく穴熊の肉は意外と食べやすく、程よい野趣がクセになる。あっさりした鹿肉は太白ゴマ油とスモモジャムのタレでフルーティーに、猪肉はクルミや松の実の木の実ダレでこってりと、サシが見事な牛ロースは黄身醤油ですき焼き風に…。

4種の肉を旨み豊かなスッポンだしにくぐらせてから4種のタレでいただくメイン「山のももんじ鍋」は、穴熊・鹿・猪のジビエ3種を多彩なタレで食べ比べられる趣向。
「ももんじとは、猪や鹿などの獣肉を指す古い言葉。鹿も穴熊も猪も、この地域では昔から馴染みのあるジビエ。『界 由布院』夕食の定番として年中提供をしていて、鍋だしとタレの工夫で初めての方でも食べやすくしています」と料理長の山本大亮(だいすけ)さん。

先付の猪と椎茸の最中パテや猪の生ハムを散らしたクレソンサラダを盛るのは、民藝の器として三百年以上の歴史を誇る、大分県日田市の小鹿(おんた)焼。鍋と同時にという最高のタイミングで供される土鍋ご飯は、国東半島特産の姫島ひじきをシソの実とあっさり炊き込んで。大分の食文化を気負いなく織り交ぜた特別会席は、心躍る初めてに満ちている。

『界 由布院』の特別会席の一部夕食の特別会席は、先付の最中パテやクレソンサラダから始まり、酢の物や八寸、お造りを盛り合わせた「宝楽盛」、煮物碗、「山のももんじ鍋」など全7品。地元生産者との密な繋がりがあるから、希少な穴熊を年中味わえる。

『界 由布院』の特別会席の一部。土鍋ご飯と甘味左/一客ごとに目の前で炊き上げてくれる土鍋ご飯は、姫島ひじきのシャキシャキ感とシソの実のプチプチ感がクセになる。肉の旨みが溶け込んだ鍋だしをかけて‟ジビエ茶漬け“にするのもアリ。右/甘味は玄米のやっこめ(炒り米)のミルク煮を底に敷いたミルクジェラート。ふるふるの麦茶ゼリーをかけて味変を楽しむ仕立て。

朝食の「だんご汁」にほっこり

小麦粉を練ったムチムチの幅広麺が、和む味。和朝食の味噌汁的存在、大分の郷土料理「だんご汁」が優しく胃を目覚めさせる。遠く由布岳を眺めながらのストレッチ「棚田体操」を早朝からこなした甲斐もあってか、心身共に絶好調。大分特産のジャンボ椎茸が炭火に炙られてじわじわと焼けていくのを待つ時間も、なんだか落ち着く。

「あちこち巡らず、旅館で過ごす時間を大切にされるお客様が多いですね」。広く高い空を見上げながら、総支配人の台詞がふと頭をよぎる。ゆるりと身を委ね、何もしないことの贅沢さ。確かにそんな過ごし方が、この宿には良く似合う。

『界 由布院』棚田体操/和朝食イメージ左/スタッフが丁寧にレッスンしてくれる棚田体操(要予約。無料)は毎朝7:00~7:25に開催。右/和朝食は地野菜の炭火焼やだんご汁のほか、2種の焼き魚や自家製豆腐など盛りだくさん。フォカッチャや米粉パンなど、5種のパンを味わえる洋朝食を選ぶこともできる。

■店名
『界 由布院』
■詳細
【住所】大分県由布市湯布院町川上398
【電話番号】050-3134-8092(界 予約センター)
【営業時間】in15:00~、out~12:00
【宿泊】1泊2食付35000円~
【公式サイト】https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiyufuin/

掲載号
2023年11月号

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