コーヒーと、穴の空いていないドーナツ

コーヒーと、穴の空いていないドーナツ

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2023.01.26

文:「あまから手帖」編集部・森千尋 / 撮影:坂上正治

2月号のコーヒー特集では、ドーナツとコーヒーのマリアージュに目覚めました。ここまで自分の身体がブラックを欲するようになるとは。しかも各店、提供しているドーナツに合わせ、コーヒーの味が全く違います。

目次

京都「kew」にて一考。 店舗情報

京都「kew」にて一考。

「とりあえず生で」の類義語は「ホットコーヒー1つ」だと思うわけです。飲みの席での一杯目、コーラで飲りたい気持ちを抑えひとまず、「とりあえず生で」という呪文を口にします。この呪文さえ淀みなく言えたら、飲み会も淀みなくスタートします。

学生の頃なんかは「ビールの人ー!」なんて挙手を募るものですから、“空気読めない”認定を避けるため、颯爽と手を挙げたものです。学生時代のファーストインプレッションは些細なことで決まりますから、あなたと私は対等である、という意思表示でもあります。

kew店内焼菓子が並ぶ店内。イートインは完全予約制。

話は冒頭に戻ります。打合せでコーヒーを頼む心情としては、その時のものに似ています。さあ対等にお話しましょう、という意思表示です。喫茶店のナポリタンや固いプリン、ミックスジュースを頼みたい衝動を抑え、涼しい顔してホットコーヒーを頼むのです。ここでパフェを頬張りだす女と、真剣な話などしたくはないでしょう。

続けて店員さんが聞きます。
「ミルクと砂糖はいかがなさいますか」
打合せ中、ここで「ください」という人には、今のところ出会ったことがありません。ビールといい、コーヒーといい、大人になるって苦味とぶつかることなのではないか? なんて思いながらブラックを頼みます。ブラックを頼めば「こいつ、やりおる」と思わせることができるのではないか。なんて逆の立場で考えてみれば、全くそんなことはなく、結局のところ自己満足であります。

京都「Kew」のドーナツは、穴が開いていません(取材中何度か「シュークリーム」と言い間違えそうに)。トップから溢れ出るほどのクリームによる重みで、ドングリのようなビジュアルながら皿の上に直立しています。生地自体の甘さは控えめですが、とろとろのクリームは甘党大歓喜な味わいなのでした。

kew外観お隣の物件が空いて、2020年には店舗を拡大した。

ドーナツとコーヒー漬けな12月だったもので、ここまで来ればコーヒー求む!状態。ホンジュラスコーヒーのほの甘い香りと、軽い苦味とによる相乗効果で、ぺろりと1個いけました。

ブラックがここまで美味しく感じるようになるとは、コーヒー特集様様。これはもう怖いものなしだ。なんて思いつつ、打合せでは結局ドーナツは頼めないんだよなあ。なんて我に返るわけです。

■店名
kew
■詳細
【住所】京都府京都市右京区龍安寺五反田町15
【電話番号】075-406-0763
【公式サイト】https://www.kewkyoto.com/
【Instagram】https://www.instagram.com/kew_kyoto/

掲載号
あまから手帖2023年2月号「コーヒー/珈琲/coffee/コーヒ」
サードウェーブが落ち着いた今、大人がじっくり味わいたいコーヒーとは何か!? ツウが気になるあの人も登場!

Writer ライター

あまから手帖 編集部

あまから手帖 編集部

amakara techo

1984年の創刊以来、関西グルメの豊かさをお届けしてきた月刊誌「あまから手帖」編集部。 旨いものを求めて東奔西走、食べ歩いた店は数知れず。パン一つ、漬物一つ掲載するにも、関西の人気店を回って商品を買い集め、食べ比べる真面目なチーム・食いしん坊。

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