100年先までも続く食パン/京都・堺町錦『小川珈琲 堺町錦店』

100年先までも続く食パン/京都・堺町錦『小川珈琲 堺町錦店』

小林明子の「偏愛パン」

2023.02.09

文:小林明子 / 画像:内藤貞保(本文中1、2枚目) / 画像提供:小川珈琲

“100年先も続く店”をコンセプトに掲げて2022年2月にオープンした『小川珈琲 堺町錦店』。京都ならではのおもてなしの一環として、京都産小麦を使う食パン2種を店内焼成している。2022年末には、ミニサイズの食パンも新登場!

目次

開発したのは、伝説のブーランジェリー創業者 店内では炭焼きトーストとして ミニ食パンも新登場 店舗情報

開発したのは、伝説のブーランジェリー創業者

「その話を聞いた時、全力で止めようと思いました」

目を見開きながら話すのは西山逸成(いつなり)さん。関西のパン好きなら一度は足を運んでいるに違いない『ル・プチメック』の創業者だ。
“話”とは、『小川珈琲 堺町錦店』のオープンに合わせて食パンを開発してほしいとの依頼。条件のひとつが京都産小麦を使うことだった。

「ブームに流されない、100年続く食パンを京都産小麦で。しかも店内で焼きたいなんて無茶ですよ…」と言いつつも、テストキッチンに籠るうち、西山さんの創作意欲に火が付く。
「引き受けるからには自分らしい、毎日食べても飽きないパンを作りたい」と西山さんは試行錯誤。ふっくら&もちもち食感を実現させるため、小麦粉の一部に湯を加えて捏ねる湯種製法を用いることを決める。

日本における珈琲文化の黎明期である昭和27年に創業。国内外で十数軒の店舗を展開する『小川珈琲』にとっても、食パンの店内焼成は初の取り組みだ。

設置する機械類の選択なども西山さんが担当。本店のパティシエでもある河合郁二さんと二人三脚で着々と準備を進めていった。

完成した山型食パンは京都産小麦100%。トーストすると、クラムはふっくら、クラストはサクサク。シンプルに、バターや季節のジャムで小麦の風味を楽しみたいタイプだ。
一方、角食パンは京都産小麦65%に熊本県産の石臼中挽き全粒粉35%をブレンド。相性の良いハチミツを加えてしっとり食感に。ハムやベーコンといったコクのある食材合わせても負けない風味が特徴だ。

『小川珈琲 堺町錦店』山型食パンオープンに合わせて開発したオリジナル食パン。1本だけでなく、ハーフサイズ、1枚単位でも購入できる。京都産小麦100%の山食パンは、1本1200円、1/2本600円、1枚120円。角型の全粒粉食パンは、1本1400円、1/2本700円、1枚140円。

店内では炭焼きトーストとして

モーニングタイムでは炭焼きトーストとして提供。

横に添えられる自家製糀バターは、洛中に残る貴重な酒蔵としても知られる『佐々木酒造』の米糀とグラスフェッドバターで作られている。なめらかな食感、まろやかな塩味がトーストとの無限ループを生む。

炭焼きトーストモーニングタイムの炭焼きトースト。パンは、京都産小麦100%の山食パンと全粒粉の角型食パンの2種類から選べる。糀バターは100g600円から量り売りされている。

ランチタイムやカフェタイムにはサンドイッチやフレンチトーストとしても提供。テイクアウトももちろん可能だ。

ミニ食パンも新登場

2022年末にはそれぞれのミニサイズ版も登場。全く同じパン生地をパウンドケーキ型で焼き上げている。

ミニ食パンは、少人数家族にもうれしい食べ切りサイズ。薄めにスライスしてカリッと焼き、好みの具材を乗せてカナッペ感覚で楽しむも良し。分厚めカットでトーストして、むちむちのクラムを堪能するも良し。日々の食卓に彩りを添えてくれる。

ミニ食パン右の京都産小麦ミニ食パン(右)は1本330円。全粒粉ミニ食パン(左)は1本380円。

外観

内観堺町錦店は、創業70 周年を迎えた『小川珈琲』が、これまで培ってきた“ 京都の珈琲職人”としての矜持を胸に、これからのあるべき姿を体現する場所としてオープンさせた。

■店名
『小川珈琲 堺町錦店』
■詳細
【住所】京都府京都市中京区堺町通錦小路上る菊屋町 519-1
【電話番号】075-748-1699
【営業時間】7:00~20:00
【定休日】無休
【公式サイト】https://www.oc-ogawa.co.jp/nishiki/
【Instagram】https://www.instagram.com/ogawacoffee_nishiki/

掲載号
あまから手帖2022年5月/京都のリアル(創業70年の『小川珈琲』最新店より)

Writer ライター

小林 明子

小林 明子

Akiko Kobayashi

「パンの街」と呼ばれる京都の商家に生まれる。数人の従業員も住み込む、大家族に育ったため、朝食は各自が用意できるパン食が常だった。以来、半世紀以上にわたって毎朝の主食はパン。パン屋巡りの旅に出ることもあるライター。パンシェルジュ1級。

Related article 関連記事