好きが高じて、パン屋の主に/京都・丸太町七本松『MIYAUCHI BAKERY』

好きが高じて、パン屋の主に/京都・丸太町七本松『MIYAUCHI BAKERY』

小林明子の「偏愛パン」

2023.05.12

文:小林明子 / 撮影:増田えみ

現在発売中のあまから手帖「京都特集」号には、ベーカリー6店6様の物語が掲載されている。『MIYAUCHI BAKERY』もそのひとつ。誌面の都合上掲載できなかった、ちょっと意外な開店秘話と人気急上昇中のレモンケーキの話――。

目次

通い続けた店をまるごと受け継ぐ 真面目な人柄が伝わるパンの数々 店舗情報

通い続けた店をまるごと受け継ぐ

丁寧なパン作りをすることで知られた『ラ・モワッソン』に長年通い続けたうえに、スタッフとして働いた時期もある宮内奈津代さん。『ラ・モワッソン』が閉店するとの知らせを聞いて店に駆けつけた。
「昨年の秋のことでした。最後だからとパンを買いに行ったのですが、もう食べられなくなるのかと思った時、店長の和田陽さんに言ってしまったんです。“私にこの店を続けさせてください”って…」と、当時を思い出す。

驚きながらも快諾してくれた和田さん。店名を『MIYAUCHI BAKERY』と改めてオープンさせる準備期間中、パン作りを特訓してくれた。
ところが「開店予定日が近づくにつれ、私も和田さんも不安になってきて…」と宮内さんは苦笑。結局、再オープン後も毎日パンを焼きに通ってくれることになった。

真面目な人柄が伝わるパンの数々

『MIYAUCHI BAKERY』宮内さんと和田さん販売は対面式に変更。店内はナチュラルな雰囲気になった。右端が、のんびり過ごすはずだった第2の人生の計画変更を余儀なくされた“元”店長の和田さん。左から2人目が宮内さん。

『ラ・モワッソン』時代も名物的存在だった、ふっくら生地の真ん中でトロトロの半熟卵が顔をのぞかせるハムエッグ(220円)。全粒粉入りの生地で焼く、食べごたえ抜群ながら歯切れも良いコッペパンには、レモンカードの生クリームをたっぷりサンド(380円)。
そのままでコリコリ感を、リベイクすればトロッと感も楽しめるチョコベーグル(250円)。ネーミングがきめ細かい食感を的確に表現している絹食パン(1斤380円)。

“元”店長が考え出したパンの数々からは真面目な人柄が伝わってくる。

「働いていた頃は、この店に通うお客さんはクールな方が多いと思っていたのですが、引き継いでからは“ありがとう”と言われることもしばしば。愛されている存在なんだと、改めて実感しています」と宮内さんは話す。

『MIYAUCHI BAKERY』レモンケーキ 1個250円。国産レモンが手に入る期間中は店頭に並ぶ予定。個包装されているので、手みやげにも向く。

『MIYAUCHI BAKERY』では焼き菓子やラスクも販売している。なかでもファン激増中なのがレモンケーキだ。国産レモンの生絞り果汁とすりおろした皮を、生地はもちろん、表面を覆う砂糖衣にもたっぷり加えているため甘みも酸味もしっかり。口の中でフレッシュな香りが弾ける。

「『ラ・モワッサン』で働いていた時、パートの方が差し入れてくださった手作りのレモンケーキが忘れられなくて。その方にお願いして作っていただいてます」。

国産レモンの在庫が無くなり次第、終売になるのでお早めに。

『MIYAUCHI BAKERY』外観 外観は『ラ・モワッサン』時代のまま。パンの種類は少し減らしていて、日々約30種を焼いている。

■店名
『MIYAUCHI BAKERY』
■詳細
【住所】京都府京都市中京区聚楽廻西町183-5 松宮ビル1階
【電話番号】050-3575-4182
【営業時間】11:00~17:30
【定休日】日・月・火曜
【Instagram】https://www.instagram.com/miyauchi_bakery/

掲載号 あまから手帖2023年5月号/京都の迷い方

Writer ライター

小林 明子

小林 明子

Akiko Kobayashi

「パンの街」と呼ばれる京都の商家に生まれる。数人の従業員も住み込む、大家族に育ったため、朝食は各自が用意できるパン食が常だった。以来、半世紀以上にわたって毎朝の主食はパン。パン屋巡りの旅に出ることもあるライター。パンシェルジュ1級。

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