愛知から来た愛を知るきしめん。/『星が丘製麺所 大阪・九条ゼニヤ店』

愛知から来た愛を知るきしめん。/『星が丘製麺所 大阪・九条ゼニヤ店』

曽束政昭の「一麺口福」

2023.01.18

文・撮影:曽束政昭

年末の寒波がキンと肌身に刺さる頃、愛知県からやって来たきしめんの新星を訪れた。きしめんの魅力を今に広める『星が丘製麺所』は『うどん屋 太門』と『手打ちうどん 高砂』が手がける話題の店。大阪初進出とあって、関西の麺好きたちが早くも足繁く通っている。

目次

帯状の麺に込められた食への愛と知る。 店舗情報

帯状の麺に込められた食への愛と知る。

実のところいつか本店に行かねばならぬと思っていた。

『星が丘製麺所』の幅広のきしめんを知ったのは、SNS上のことだった。大阪のうどん店主や麺好きの方たちが、こぞってこの店で通常よりも幅広の平打ち麺のうどんをアップされていた。昨年の春、大阪・難波の『き田たけうどん』で期間限定の冷凍麺イベントで来阪されていたため、大阪への進出をひそかに願っていたのだが、次いでお目にかかったのも淡路島のこれまた期間限定のイベントだった。

半ば諦めていた頃に、この店がオープン。地下鉄九条駅から北へきらら商店街から少し東に入ったあたり。JR西九条駅からだと南に歩いて、安治川隧道(安治川トンネル)をくぐり数分で到着、ちょっとした下町観光気分である。渋居酒屋の『白雪温酒場』からも徒歩圏内だ。

外観半世紀続いた『欧風めしや ゼニヤ』の場所。トルコライスでお馴染みだったが、店主がご高齢のため2022年1月末惜しまれる中閉店。前店主からの許可を得て店名は継承。下町の町家風で、基本的な店の造りもそのまま利用してリノベーション。

その場所で提供されるきしめん。通常の名古屋で見かけるきしめんより3倍ほど幅広で、厚みも極薄でツヤツヤで透明感あふれる表情だ。愛知県産小麦きぬあかりを用い、箸上げすればモチモチ感が指先に伝わってくる。すすればテロテロのプルプル。噛めばモチモチでムギュッと絶妙な感触であっという間に完食だ。

太門

きしめん太門720円は人気No1。さっぱり白つゆにスダチかレモンが浮かぶ。冷やの方が、きしめんのツルモチ食感がよくわかるが、温もモチモチ。

「きしめんの魅力を伝えたい。最新冷凍技術と伝統的な名古屋の手打ち技術を落とし込み、いつでもどこでも美味しいきしめんが食べられるように」

そんな想いが込められているこの麺、なんと冷凍麺なのだそう。麺は本店から、ダシや具材はこの店で仕込まれるが、調味料やレシピなどは本店そのまま。味噌おでん、天ぷらも用意されている。

味噌おでん大根200円、牛すじ250円。ダシで炊いた出汁ごはんとも合わせたい。欲を言えば味噌ダレの串カツがあればなおよし。

天ぷらちくわ150円、大阪らしい紅しょうが200円。衣がサクサクの軽快なタイプで、ダシに浸して食べればなお美味い。

下町に現れた新星が、関西の麺業界の刺激となっていくはず。伝統を守りつつ新しい味を提供するその姿勢は、その指針・ポーラスターとなるやもしれない。

店内「きしめんを広く長くひろめていきたいな~」という想いのこもった壁画。

■店名
『星が丘製麺所 大阪・九条ゼニヤ店』
■詳細
【住所】大阪市西区九条2-28-1
【電話番号】06-6616-9330
【営業時間】11:00~21:00
【定休日】不定休
【お料理】高砂(きつね)790円、味噌月見840円、キムラ君950円、キーマカレー950円。
【公式サイト】https://hoshigaokaseimenjo.shop/
【Instagram】https://www.instagram.com/hoshigaokaseimenjo/https://www.instagram.com/hoshigaoka_osaka_kujyo/

Writer ライター

曽束 政昭

曽束 政昭

Masaaki Sotsuka

京都府出身。関西のラーメンを中心に、うどんや蕎麦にも精通する、言わずと知れた麺ライター。「最近は食が細くなった」と話すも、「2杯ずつ連続2軒の取材なら守備範囲」。コメンテーターやレポートなどマルチに活躍中。

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