フランス料理の名店が原点回帰。大阪・北浜『SINAE』

フランス料理の名店が原点回帰。大阪・北浜『SINAE』

門上武司の「今月の一軒!」

2022.11.07

文・撮影:門上武司

10月にオープンした大阪・北浜のフランス料理店『SINAE』。オーナーシェフ・大東(だいとう)和彦さんは、前店『エッサンシエル』を大幅にリニューアルし、再スタートを切りました。その魅力をご紹介します。

目次

テーブル席へ、原点回帰 日本の食材を意識する レストランを選ぶ理由とは

テーブル席へ、原点回帰

2022年10月、大阪の北浜にフランス料理店がオープンした。 店名の『SINAE』はシンプル、ナチュラル、エッセンスの頭文字を並べたもの、とオーナーシェフの大東さんは説明した。

大学卒業後、東京のフランス料理店で働き、渡仏。老舗グランメゾン『タイユヴァン』や、アラン・デュカス※率いる『レストラン・アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ』などで4年修業した後、同グループの東京店『ブノア』開業スタッフとして帰国。2008年、大阪の『ル・コントワール・ド・ブノワ』で総料理長として働いた後、2012年、北浜で『エッサンシエル』を独立開店した。この店はカウンターのみで、シェフの仕事ぶりを見ながら料理を楽しむレストランとして人気を博した。そしてこの秋、「次のステージを考えて移転リニューアルし、店名も変更しました」という。

※アラン・デュカスは1956年生まれ。フランス出身でモナコ国籍のシェフ。史上最年少でミシュラン三つ星を獲得。異なる国で三つ星を獲得した世界初のシェフでもある。現在、世界各地でレストランを経営し、日本ではチョコレートブランド『ル・ショコラ・アラン・デュカス」を展開する。

「テーブル席にした理由は、レストランの原点を見直した方がいいと思ったからです。サービスの在り方、テーブル席が生み出す華やかな雰囲気などが今の時代、必要だと思いました」と語る。2階にウェイティングスペースがあり、そこから階段を上がると丸テーブルが数卓並ぶフロア。やや緊張した空気感が流れるのも心地が良いものだ。

日本の食材を意識する

アミューズ・ブーシュは6種類。季節の食材を巧みに使い、フランス料理のテクニックと旬を感じさせる。この秋なら枝豆のマカロン、ギンナンと剣先イカのレモンコンフィ、ロックフォールチーズと柿など、酸味の表現が見事な料理が登場する。

「毛ガニ、サフランのジュレ」は視覚に訴える美しさに加え、コンソメジュレのクリアでコクのある味わいに胸がときめく。魚介料理、肉料理、デザートは2種からチョイス可能。魚介料理の「車エビのブーダン、ビスク」はフランス料理の伝統的な手法・ブーダンに見立てたホタテと車エビのムース、車エビのポワレ、そして濃厚なビスクと、一皿で車エビを3尾も使うという贅沢さ。肉は滋賀・南草津の肉卸し『サカエヤ』の新保(にいほ)吉伸さんが手当てをした40日熟成牛。香りの奥行きが深く、噛むごとに増してゆく。付合せの柑橘類の酸味も見事な調和をみせてくれた。

大阪『シナエ』のフランス料理料理は夜のコース22000円より。左上/アミューズ・ブーシュ(写真は3名分)。右上/毛ガニ、サフランのジュレ。左下/車エビのブーダン、ビスク。右下/帆立とフォアグラ セップ茸。

大阪『シナエ』のフランス料理左上/秋野菜のサラダ ホエー。右上/愛農ナチュラルポークのポワレ。左下/『サカエヤ』の40日熟成牛のロティ。右下/栗のパルフェ ジンジャー。

レストランを選ぶ理由とは

厨房からサービスの女性が料理を運ぶ。料理に対する説明があり、時折シェフが顔を出し、料理への想いを語る。この時間の流れが、実にゆったりしているのもこのレストランの特徴かもしれないと感じた。カウンター越しではない、少しタイムラグのあるシェフとの会話。想いを巡らせる時間があり、料理に対する気持ちも深まってゆくのだと思う。

カウンターやビストロなど、フランス料理を食べる機会と様式はさまざまである。だからこそ、時には華やかな雰囲気が漂う、テーブル席で食事をする時間を持つのもいいのではないかと感じた。

■店名
『SINAE』
■詳細
【住所】大阪市中央区伏見町2-4-12 クスノキビル2・3F
【電話番号】06-6201-6556
【営業時間】12:00〜12:30入店(金・日曜のみ)、17:30〜19:00入店
【定休日】月曜、第2・4日曜
【お料理】昼/コース13200円、夜/コース22000円。※サービス料8%別。

Writer ライター

門上 武司

門上 武司

Takeshi Kadokami

あまから手帖・編集顧問。年間外食350日という生活を20年以上続け、食事と食事の合間にもおやつをボリボリ…。ゆえに食の知識の深さは言わずもがな。食に携わる生産者・流通・料理人・サービス・消費者を繋ぎ、発信すべく、日々奔走している。

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