昼はコース、夜は単品注文も。京都・金閣寺道『わか杦』

昼はコース、夜は単品注文も。京都・金閣寺道『わか杦』

門上武司の「今月の一軒!」

2023.02.06

文・撮影:門上武司

京都・金閣寺から歩いてすぐ。2022年9月に和食店『わか杦(すぎ)』は開店しました。昼の満足感あるコースは5500円、夜はアラカルトで注文できるとあって、嬉しい存在。今回は、昼のコースを紹介します。

目次

需要増す、アラカルト和食 基本を忘れず、発想豊かに 締めのご飯ものまで魅力的 店舗情報

需要増す、アラカルト和食

最近、よく耳にするのが「アラカルトで食べられる店はありがたいね」という食べ手の率直な想い。料理人たちも要望に応えたいという気持ちがあるのか、そんな店が少しずつ増えてきた。

昨秋、金閣寺近くに暖簾を掲げた『わか杦』もそんな一軒。夜の献立表を見せてもらうと、酒肴、造り、焼物、油物、焚物、ごはんの欄がある。季節の食材を生かした料理から定番ものまで、食べたくなる料理がずらりと並ぶ。とはいえ、昼の営業はコースのみとした。昼までアラカルトでは、あまりにも煩雑になるので当然のこと。

日本料理は水の料理とも評される。主人の若杉葉陽(のぶはる)さんは「毎日、京見峠まで汲みに行きます」と話す。それほど水に神経を使うということである。

『わか杦』店主若杉さんは大阪や島根の料理旅館、京都『和久傳』などでの修業を経て、2022年9月に独立。金閣寺のすぐ近くに店を構えた。

基本を忘れず、発想豊かに

今回いただいたのは昼のコース。
印象的だったのは、玄米餅の入った堀川ゴボウのすり流し。一口でゴボウの香りに圧倒され、続く玄米餅のモチモチ感で我に返る。季節の味わいに心がときめく。
この椀物を食しながら厨房を見ていると、若杉さんが脂ののった鰤(ブリ)を調理する姿が目に入る。切り出すと、だしの入った鍋にくぐらせた。つまりしゃぶしゃぶ仕立てである。そこに縮みホウレン草を添える。横にはポン酢が付く。しゃぶしゃぶはタイミングが重要。料理人の手によって見事に火入れされ、余分な脂は落ち、旨みはきちんと残る。そして縮みホウレン草のサクッとした歯ごたえと青味が効果的なのである。一本やられたという感覚を覚えた。

焼きかぶらには湯葉とウニがのる。あんはだしと土佐醤油である。まさに冬の恵みをいただいていることを実感する。千枚かぶらは赤蕪と水菜とナマコという取合せ。目に映る風景も冬らしい。
また、風呂吹き大根。これは冬場の定番料理だが、若杉さんはここにぷっとり太った牡蛎をプラスする。味噌と牡蛎を混ぜると、なんとどて焼きの様相を呈するのだ。つまり時間差で異なる冬の料理が味わえることになる。このあたりの柔軟な考えが嬉しいのである。

『わか杦』の千枚かぶら・風呂吹き大根料理はすべてコース5500円(全8品)から。千枚かぶら(左)と、風呂吹き大根(右)。創意ある料理の姿、味の重ね方に驚く。

締めのご飯ものまで魅力的

コースのご飯は王道のちりめん山椒だと思っていたら、そこにへしこが入っていた。この少量のへしこが存在感を示してくれる。コクのある塩味がいい仕事をしていて、ついおかわりと言いたくなる危険な味わいだ。
夜のアラカルトなら、煮鰻寿司、トロたく、鯛味噌茶漬けなどバリエーション豊か。非常に魅力的なラインナップだ。

金閣寺の近く、まずは地元の人たちに愛してもらうことを最優先するという。日常使いの一軒となれば、食べる側の要望を叶えることが大切。このようなご飯のライナップもその一つだと感じた。

通いたくなる一軒である。

『わか杦』のご飯

■店名
『わか杦』
■詳細
【住所】京都市北区衣笠街道町5
【電話番号】075-600-9256
【営業時間】11:30~13:30入店、17:30~22:00
【定休日】月曜
【お料理】昼/コース5500円(前日までに要予約)、夜/アラカルト650円~、コース13200円。
【Instagram】https://www.instagram.com/haru.8489/

Writer ライター

門上 武司

門上 武司

Takeshi Kadokami

あまから手帖・編集顧問。年間外食350日という生活を20年以上続け、食事と食事の合間にもおやつをボリボリ…。ゆえに食の知識の深さは言わずもがな。食に携わる生産者・流通・料理人・サービス・消費者を繋ぎ、発信すべく、日々奔走している。

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