どう変わる?京都『祇園さゝ木』が8月2日にリニューアルオープン

どう変わる?京都『祇園さゝ木』が8月2日にリニューアルオープン

門上武司の「今月の一軒!」

2023.08.01

文:本庄彩 / 撮影:内藤貞保

門上武司の「今月の一軒!」、今回は特別編です!6ヶ月近くに及ぶ休業と改装を経て、2023年8月2日に晴れてリニューアルオープンを迎える『祇園さゝ木』。新たなスタートにかける店主・佐々木浩さんの思いとは?真新しい舞台で、本誌編集顧問・門上がお話をうかがいました。

目次

還暦を過ぎてなお、守りに入らず チーム全員が主役になれる店 若い感性と豊富な経験の融合を強みに 店舗情報

還暦を過ぎてなお、守りに入らず

『あまから手帖』編集顧問・門上武司

門上武司(以下:門)
まずはリニューアル、おめでとうございます。

佐々木浩(以下:佐)
ありがとうございます。

門:一斉スタートのライブ感溢れる“板前劇場”、石窯調理、大トロのにぎりなど、日本料理に革命を起こしてきた佐々木さんも62歳を迎えられたとか。いま新しいチャレンジを始める、その原動力は何でしょう?

佐:店を始めて25年、ここへ移転して15年。僕もいい年になって、このままあと10年ぐらいやって引退した時には左うちわ…っていうのが普通かもしれない(笑)ただ、老舗さんはいろいろ守っていかなあかんけど、地方出身で初代である僕は「守りに入るのはやめよう」と一念発起したんです。京都は伝統の街。常に革新しているからこそ、伝統が守られていると思います。自分なりの立ち位置を示すことで「あいつ、あの年になってまだ行きよるやん!」と驚いてもらって、「『祇園さゝ木』みたいにならなあかんな」と刺激を受ける人が一人でも出てきてくれたら嬉しい。

『祇園さゝ木』店主・佐々木浩さん

門:それは京都の街の活性化にも繋がりそうですね。

チーム全員が主役になれる店

門:店内の大きな変化としては、フルオープンキッチンになってカウンターの威容が今までと全く違いますね。石窯もなくなってる。

佐:今回のリニューアルのコンセプトは「若いスタッフと一緒に料理する」。若い子を守って、新しい料理をみんなで追求していこうと。もう“俺が俺が”の時代じゃなくなってますからね。まず玄関を入ると、厨房の一角がガラス張りになっていて、スタッフが料理を準備する様子を見てもらえる。ホールに繋がるドアの両脇には、邪気を払うために仁王さんをお祀りしました。

『祇園さゝ木』ドアと仁王さん

新しく入れた檜のカウンターの真上では、以前使っていたマホガニーのカウンターがいつも見守っています。石窯はすごく話題にしていただいてたから、撤去する時には泣けてきましたわ…。でも、あれがあるがために次のステップに行けないなと。その代わりにキッチンの中心に据えたのが、炭焼き場です。炭の並べ方や火入れという原点を改めて大事にしてほしいと思ってます。

見通しがいいフルオープンのキッチンやから、気になったことはその場で伝えられるし、技術を継承できる。そしてメインのカウンター以外に、奥の離れにもカウンターをしつらえました。二本カウンターであえて時間をずらさず、以前のように一斉スタートです。僕があっち(離れ)に行ってたら、誰かがここを守らないといけない。僕だけでなく、チームの全員が主役でいてほしいんです。

『祇園さゝ木』カウンターフルオープンキッチンになったホール。奥に進むと、庭と離れが

『祇園さゝ木』離れ

若い感性と豊富な経験の融合を強みに

『祇園さゝ木』店主・佐々木さん

門:とはいえ、“俺が俺が”を封印して、やってきたことをフラットにするって凄いことですよ。もう一回若い人たちと一緒にやろうと思ったのはどうしてですか?

佐:10年ひと昔って言いますけど、もう今は5年とか3年、凄まじい勢いで世の中が動いていってる。僕だけのアンテナではダメやと思うし、若い子のエネルギッシュな血を入れられたらいいなと。スタッフが6人いたら6本のアンテナがある。そのアンテナに何か引っかかって「おやっさん、こんな料理してみたいです!」と言われたら「ほんならやろうや!」と受け入れる柔軟さがこれから必要やと思うんですよね。僕の経験を活かして、彼らがやりたいことを具体化するんです。それで実際にお客さんに提供する時に「この焼き物、あいつが考えよったんです」と言うと、もっと頑張ろうという励みにもなるでしょ。それが成長につながって、活躍していってくれたらいいなと思います。

門:若い感性と、佐々木さんの経験値がもたらす相乗効果が楽しみです。物販も本格的に始めるんですね。

佐:路面の、ずっとシャッターが下りていたスペースが物販のショップになります。だしやお菓子といったオリジナルの食品を用意しますので、お客さんのお土産としてだけでなく、もちろん通りすがりの人にも利用してほしい。食材を粗末にしないよう、日によっては鯖寿司なんかも登場します。
もうひとつ考えているのが「こども割烹」。定休日の日曜日に子どもさんを招いて、みんなで料理をして食べる。お父さんお母さんにレシピを渡して、「家でも作ってあげてね」と伝えたいですね。一緒に食事して会話も大切にする、そんな親子の助けになりたいです。

門:夢が広がりますね。新生『祇園さゝ木』、ますます楽しみです。ありがとうございました。

『祇園さゝ木』楽味

次回はオープン後の『祇園さゝ木』を訪問。門上がお料理をいただきレポートします。

続く。

■店名
『祇園さゝ木』
■詳細
【住所】京都府京都市東山区八坂通大和大路東入小松町566-27
【電話番号】075-551-5000
【公式サイト】https://gionsasaki.com

Writer ライター

門上 武司

門上 武司

Takeshi Kadokami

あまから手帖・編集顧問。年間外食350日という生活を20年以上続け、食事と食事の合間にもおやつをボリボリ…。ゆえに食の知識の深さは言わずもがな。食に携わる生産者・流通・料理人・サービス・消費者を繋ぎ、発信すべく、日々奔走している。

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