リニューアルオープンした割烹『衹園さゝ木』の料理

リニューアルオープンした割烹『衹園さゝ木』の料理

門上武司の「今月の一軒!」

2023.08.14

文・撮影:門上武司

半年におよぶ改装工事を経て、8月2日にリニューアルオープンした割烹『衹園さゝ木』。早速、本誌編集顧問・門上が真新しいカウンターにて食事をしてきました。その料理内容を詳しくレポートします!

目次

チームでつくる、カウンター割烹 メリハリの利いたコース展開 佐々木劇場、第4章の始まり 店舗情報

チームでつくる、カウンター割烹

メインのフルオープンキッチンのカウンター12席。『衹園さゝ木』店主・佐々木 浩さんはその中央で空間を支配するのだが、これまでとは少しスタイルが異なる。

以前は圧倒的な存在感とエネルギーの塊のような主人であったが、新たな舞台ではチームリーダー的存在で、若く勢いのある料理人を引率しているかのようでもあった。

最初に登場したスイカウォーター。昆布とスイカを見事に調和させたすっきりとした飲み口で、酷暑の中、ここに辿り着いた身体を整えてくれる。
続く清楚なガラスの器に入った伊勢海老と白ズイキ。ジュレがかかるのだが、その正体は昆布だしに中国料理の清湯(チンタン)を加えたものである。「中国料理の印象が強くならないよう、針ショウガを忍ばせました」。料理の説明は若きスタッフが満面の笑みで伝えてくれ、佐々木さんはそれを見守る。

リニューアルのコンセプトは「若いスタッフと一緒に料理する」。改装期間中、中国料理店で武者修行したスタッフから出た「清湯のジュレをかけてはどうか」という案を汲み取った一品だ。「針ショウガで香りのアクセントを足した方がいい」という佐々木さんの経験値からくるアイデアとの相乗効果で、見事な一品に昇華していた。

『衹園さゝ木』のスイカウォーターと伊勢海老と白ズイキの料理料理はすべて夜のコース44000円(料理9品、ご飯、デザート2品)から。スイカウォーター(左)と先付の伊勢海老と白ズイキ。

メリハリの利いたコース展開

温前菜は、笹ガレイの一夜干しに夏野菜。トウモロコシ、ズッキーニなどに蓼(たで)のソースがかかる。温かいが爽やかさを感じる一皿だ。

椀物は圧巻である。しっかり味を含ませた冬瓜に鮎の焼き物。だしと鮎、鮎と冬瓜のハーモニーがいつの間にか大合唱になってゆくようなスペクタクルを味わう。

最初の盛り上がりを見せたところで、造りが2種登場。一皿目は1週間寝かせた白甘鯛を40分昆布〆し、アクセントに梨を挟み、スダチ・レモン・ライムの酸味でいただく。コクのある白甘鯛の旨みを最大限に引き出した趣向。

二皿目は牡丹海老・剣先イカ・ウニをお客自ら海苔で巻いて。「必ずウニを入れてください。いいソースになります」と佐々木さん。確かにエビとウニ、イカとウニ、それぞれ食べてみたが、ウニはソースという大役を見事に果たしていた。

ここでお決まりのにぎり2カン。まずは壱岐対馬の迷いガツオである。鉄分を感じる香りは秀逸であった。続いてアジ。2日寝かし、1日塩を当て、酢漬けは7分程度。この淡路のアジのコクと旨みの強さに麗しい、寿司飯のバランス。やはりこのにぎりは佐々木さんならではの仕事である。

『衹園さゝ木』の前菜と椀物前菜の、笹ガレイの一夜干しと夏野菜(左)。爽やかな蓼ソースと共に。椀物は、冬瓜の松前煮と鮎の風干し。ほろりと崩れる冬瓜、鮎の苦みが素晴らしい。

『衹園さゝ木』上段は造り2種。左は梨を挟んだ白甘鯛。右は、お客自ら巻く海苔巻き。下段の寿司は佐々木さんからの手渡しで提供。迷いガツオ(左)とアジ。

佐々木劇場、第4章の始まり

アワビは2時間強煮てからステーキに。歯応えから生まれる旨みの粒の大きさには心が躍る。肝のソースもベストマッチだ。
このインパクトを一旦フラットにするのが、ガスパチョ。トマト、パイナップル、キウイ、黄色のパプリカなどで構成され、重層的な酸味が口内をさっぱりとする。

そして料理の最後は伝助穴子の塩焼きと冷製ナス。ナスはしっかり味を含み、クタクタの状態。口に含めば、ジュワッと溢れるコクと穴子の弾力ある味わいが重なる。これぞ佐々木さんの世界観だと感じるのであった。

『衹園さゝ木』のアワビのステーキと、冷やし鉢アワビのステーキ(左)の下には飴色の玉ネギを忍ばせて。塩揉みしたコリンキーが食感にリズムを付ける。ナスと穴子の鉢物は、温冷の温度差でも楽しませる。ミョウガを添え、振り柚子をして提供。

締めのご飯は、なんと太刀魚の天丼というか混ぜご飯である。太刀魚の大きなサイズから生まれるふっくら感には驚きを覚える。

『衹園さゝ木』の締めのご飯物

『衹園さゝ木』は最初の店から数えると、移転・改装を経て4回目のステージとなる。つまり佐々木さんの第4章の幕開けということ。若いスタッフと共に新たなチームが完成したという印象を受ける。料理はこれまでの流れを踏襲しながらも、新鮮なエネルギーが見え隠れするのが見事だと思った。

■店名
『衹園さゝ木』
■詳細
【住所】京都市東山区八坂通大和大路東入小松町566-27
【電話番号】075-551-5000
【営業時間】12:00・18:30一斉スタート(ショップ11:00〜18:30※オープン日未定)
【定休日】日・月曜、不定休あり
【お料理】昼/おまかせコース22000円、夜/おまかせコース44000円(仕入れにより変動)。日本酒1合2300円〜。※税・サービス料込。予約は月初めの営業日に2カ月先〜末日の予約開始(受付時間10:00~12:00、16:30~18:30)。

【店づくりに関する佐々木 浩さんとの対談はコチラ
リニューアルにかける想い、店のスタイル、設えのこだわりなどをご紹介。

Writer ライター

門上 武司

門上 武司

Takeshi Kadokami

あまから手帖・編集顧問。年間外食350日という生活を20年以上続け、食事と食事の合間にもおやつをボリボリ…。ゆえに食の知識の深さは言わずもがな。食に携わる生産者・流通・料理人・サービス・消費者を繋ぎ、発信すべく、日々奔走している。

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