『日本料理 希粋』の門戸が広く開きましたよ~!

『日本料理 希粋』の門戸が広く開きましたよ~!

団田芳子の「わたホレ新章」

2023.03.15

文:団田芳子 / 撮影:太田恭史(本文中2枚目)、団田芳子

コロナ禍の逆風吹きすさぶ中で、飲食店が生き残るためには、さまざまなチャレンジが必要です。第7回は、『わたホレ』で、「もっと有名になるべき和食店」と題して紹介したミナミは宗右衛門町の『日本料理 希粋』の挑戦物語です。

目次

「一品料理、気軽なランチ、始めました」。 店舗情報

「一品料理、気軽なランチ、始めました」。

相合橋のたもとの細長いビルは、なかなかに古びていて、ここにお客様をご案内すると、大抵、「え?ここですか?」とビックリされる。
小さいエレベーターで4階へ上がる間もおっかなびっくりという感じ。だけどその分、扉を開けたときの驚きは大きい!

店内は、ビルの雰囲気とはうらはらに、畳カウンターの凛とした和の風情。お客様の顔はパッと明るくなり、表情に期待感が表れる。これを見るのが、私の密かな楽しみ。そして、コースを食べ終えたとき、「絶対また来ます!」と皆さん大満足で笑顔満開。私は胸の内でガッツポーズだ。

内観畳カウンターも粋な店内。

『日本料理 希粋』の店主・羽様久さんは、かの名店『高麗橋吉兆 本店』で9年間修業した方。その後、フレンチや割烹を経て、奈良に仕出しを中心にした自店を10年ほど営んでいた。
その間ずっと、いつかは「吉兆」で学んだ正統日本料理をもう一度――との夢を育み続け、ついに2013年、この店を開いた。

そんな羽様さんが存分に腕を振るった懐石は、まさに至極。しっかりとした日本料理の伝統的な手法を基礎に持ちながら、フレンチや割烹の経験を活かした創意工夫でも楽しませてくれる。

料理『あまから手帖』(2015年8月号)で初めて取材したときの八寸。大根雪洞(ぼんぼり)の艶っぽさに感激した。

そんな羽様さんから、メールが入ったのは昨年10月。
「完全予約制のコース料理のみの営業でしたが、アラカルト中心にリニューアルさせていただきます。おひとり様より、予約無しで気軽にお越しください」と。
私などは、急に時間ができて、どこかでちょっと美味しいものをと考えることが多いから、こりゃ有り難い。

続いて1月に入ると、「鯛めしのもとなどの通販を始めました」と連絡が。
『希粋』のご飯はいつもとっても楽しみな逸品。炊きたてを土鍋で披露してくれると、座が沸き立つ。
中でも、鯛めしは名物と呼べる定番だ。それが家で食べられる?早速お取り寄せしてみた。

希粋極味シリーズ「鯛めしのもと」は、贈答にも喜ばれそうな豪華木箱入りで、1セット7200円(送料込み。北海道、沖縄、一部離島を除く)。

鯛は、羽様さんが「へたな天然よりずっと美味しい」と、惚れ込んだ愛媛県宇和島産のブランド養殖魚“鯛一郎クン”。その鯛アラ丸ごと一尾分を、血合いや余分な水分を取り除き4日間かけて熟成させたのち、強火で焼き上げてある。そのほぐし身がたんまり。
そして北海道産3年熟成真昆布と枕崎産の本枯れ鰹節で取っただしがたっぷり。サービス精神旺盛な羽様さんらしくて私は思わずニンマリ。

早速、ウチの炊飯器で炊いてみたらば…。お店で食べる味がバッチリ再現できてしまった!旨い旨いと家族も大喜びで爆喰い。

土鍋ご飯ある日の土鍋ご飯は、うすい豌豆とあさりの炊き込みご飯。お店では、羽様さんがこうしてお披露目してくれる。炊きたてのいい匂い!

そしてお店の昼食も、大きく変身。
拙著『わたホレ』ではコース7000円~と紹介していたが、ぐぐぐーっとお手軽な鯛茶漬け御膳が登場したのだ。

水曜日、土曜日は鯛飯御膳2750円(限定10食・前日までに要予約)で、12種の酒盃に盛り付けた彩り料理とお椀、おかわり自由(!)の鯛めし。

料理2鯛飯御膳2750円。出汁巻き、鱈白子チリ酢、キノコのみぞれ和え、大根と蒟蒻の味噌田楽、柿ナマス、ツブ貝と車海老旨煮、鯛の昆布〆、ニラの真砂子和え、海老芋と焼南京、牡蠣フライらっきょのタルタル、漬物、果物、お椀は蓮根五穀饅頭、鯛飯(おかわり自由)。料理は季節や仕入れにより変わります。

さらに、月、火、木、金曜日は、もっとお手軽な鯛茶漬け御膳1650円(限定6食)も。鯛の昆布じめ、だし巻き、小鉢、漬物、御飯、お出汁付き。
または、天まぶし御膳1650円(限定6食)。こちらは海老2尾、白身魚、かぼちゃ、エリンギ茸、半熟卵、野菜のかき揚げなど多彩な天ぷらと、天だし、天丼出し、天茶出し、漬物、ごはん付き。どちらもご飯のおかわり自由!(共に、当日2時間前までにご予約を)

思い切ったメタモルフォーゼは、コロナ禍で必死に考えられたものなのだろう。
おかげで、『希粋』の門戸は大きく開いた。これで「もっともっと有名になってほしい」と心から願う。

■店名
『日本料理 希粋』
■詳細
【住所】大阪市中央区宗右衛門町4-12 春帆ビル4階
【電話番号】06-6212-2191
【営業時間】12:00~23:00
【定休日】日曜
【お料理】昼/コース1650・2750円、コース9680円、夜/一品500円~、コース9680・18150円。※税込み。
【Instagram】https://www.instagram.com/kisui_japan/

Writer ライター

団田 芳子

団田 芳子

Yoshiko Danda

食・酒・大阪を愛するフリーライター。旅行ペンクラブ会員。小宿の会塾長。料理人には怖れと親しみを込め“姐(ねえ)さん”と呼ばれる。講演、TV・ラジオ出演も。著書に『私がホレた旨し店 大阪』(西日本出版社)、 『ポケット版大阪名物』(新潮文庫・共著)ほか。

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