昔懐かしい風情も味な割烹、京都・千本上立売『成萬』

塩でいただく鯛の造りや山椒香るカブト焼き、鱧の押寿司など、10品以上いただけるコースが夜でも8800円から。京都・西陣で65年近く続いている、しみじみおいしい割烹です。

京都・西陣で約65年

北野白梅町駅から今出川通を東へと歩いて20分弱。尾州産ヒノキのカウンターに薄水色のタイルを合わせた粋な設え。赤紫色の暖簾がたなびく古めかしい建物は、聞けば築100年近くになるそうです。

「最初は近くで仕出し屋を営んでいたのですが、1965年にこちらに移転。カウンター7席だけの小さな割烹からの再出発だったと父から聞いています」と、2代目の岩井大人(だいじん)さんは話します。

『成萬』外観
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『成萬』店主の岩井大人さん。
岩井大人さんは生粋の京都人。京都・伏見の名割烹『魚三楼』などで修業した後に店を継ぎ、もうじき40年になります。
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父から継いだ、実直な料理

「実家以外の料理店でも修業はしましたが、何だかんだ父から教わったものが大きいですね」と、岩井さん。拭き漆の折敷を始め、器のほとんどはお父様が買い集めたもの。昔ながらの味を求める長年の馴染み客が多いこともあり、奇を衒わない真っ直ぐな料理を第一にしています。

食べ応えあるよう厚切りした鯛を塩でいただくスタイルは、お父様が「鯛の旨みをダイレクトに味わえる」と始めたもの。皮は湯引きして造りに添え、頭は後ほど山椒焼きにして豪勢な焼き物に。キスも身だけでなく頭は唐揚げに、中骨はじっくり素揚げして骨煎餅に。丸ごと一尾をおいしく食べ尽くす心遣いが素敵です。

『成萬』の造り
厚切りした鯛の造りは、湯引きした皮のほかにキュウリや花形に切ったニンジンを添えて。「地元漁師が鯛の身を海水で洗って食べるという話から、父がヒントを得たそうです」と岩井さん。
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『成萬』の鯛の山椒焼
鯛のカブトに甘辛い醤油ダレを塗り焼いた山椒焼は、もちろん一人一つずつ。粉山椒の涼し気な香りが食欲をそそります。
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『成萬』の天ぷら盛合せ
天ぷらも塩でいただきます。キスは頭と中骨も別に揚げて骨煎餅に。ジャガイモの籠の中は、色味がキレイな一寸豆のみじん粉揚げです。
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『成萬』の鱧の押寿司
土鍋炊きご飯ではなく、鱧の押寿司が登場することも。鱧のアラでだしを取ったタレが旨み濃厚です。
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2階の個室は宴会利用にも

かつてはアラカルトも対応していましたが、コロナ禍を経て昼夜共コース料理のみに。「若い方にも和食を味わっていただけるように」と、昼は6600円から、夜は8800円から用意しています。先付から造り、焼き物、揚げ物など11品とかなり食べ応えがある内容でこのお値段は、今や貴重な存在です。

どこか昭和ノスタルジックなカウンターでゆるりと寛ぐのも素敵ですが、2階の個室もおすすめ。部屋をつなげれば最大20名までの宴会にも対応しているので、歓送迎会や忘新年会、会食などにも便利ですよ。

『成萬』の2階テーブル席
個室は2階に3部屋。最大20名まで利用でき、10名以上の予約で貸し切り利用も可能です。
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