スターシェフの新展開『神戸北野テラス』

「神戸は成熟した街と豊かな海、食材に恵まれていながら、京都や大阪に比べるとアピール力がちょっと弱いように思います。ここは山の緑がすぐそばに感じられて、眼下には街並みと神戸港が一望できる。素晴らしいランドスケープ（景色）を楽しみながら、土地の豊かさを実感していただき、神戸の魅力を国内外に発信する場所にしたいですね」と山口シェフ。

代名詞「世界一の朝食」も

シェフの熱い思いは、時間帯ごとにがらりと表情を変えるメニューにも込められている。朝食は、『神戸北野ホテル』の代名詞ともいえる「世界一の朝食」だ。ビジュアルも風味も鮮やかな“飲むサラダ”をはじめ、たっぷりのパンや半熟卵、ジャンボンブランと生ハムなど、洗練されたヨーロピアン・ブレックファストが絶景とともに味わえる。一番だしのスープや丹波の黒豆入りタピオカ・オ・レなど、和のテイストを感じさせる品々も。「この朝食は20年以上続けていますが、内容を少しずつ変えることで変わらず“世界一”でいられるんです」。

山口シェフの師、ベルナール・ロワゾー氏から公式に継承した「世界一の朝食」8600円（税サ込）。焼きたてのクロワッサンやフィナンシェは持ち帰りも可能。（写真は一部2名分）

記憶に残るランチ

ランチコースの顔となるのは、意外やパスタ。「フランスも南に行けばイタリアと食が似通って、洗練されたパスタ料理もあるんです」と山口シェフ。そのアプローチはサプライズに富んでいる。カルボナーラは大きなチーズの器でパスタを絡め、さらに仕上げに削り節をこんもりと！　「卵かけご飯のイメージです」とシェフは笑顔。“ボロネーゼ”は長時間低温調理した神戸牛を合わせるなど、フランス料理の技法を駆使し、記憶に残るひと皿に仕立てる。

デザートはホテル譲りのワゴンスタイルで、好きなものを好きなだけ。ポートタワーや神戸空港、気候条件がよければ淡路島や紀伊半島の島影まで見渡せる眺望と相まって、贅沢感に気持ちが上がる。このほか、ニーズが高まるヴィーガンのコースも用意。

「料理人の日常はお客様の非日常」をコンセプトに、目の前で仕上げるプレゼンテーションを重視。タイミングによっては、山口シェフと出会えるチャンスも。3種から選べるパスタに前菜、デザートなどがつくランチ4800円（税サ込）。

0.01mmの薄さに削られた鰹節は、口で瞬時に溶けて芳醇な香りを残す。丹羽地鶏の卵の卵黄を崩し、全体をよく混ぜてまろやかな旨みを楽しみたい。

「神戸北野ホテル」から届く季節のスイーツを昼から好きなだけ、の幸せ。クレームブリュレは目の前でキャラメリゼして仕上げるなど、心が華やぐ演出も。

ディナーは山口流ガストロノミー

そして、宝石箱のようにきらめく夜景が広がるディナータイムは、三つの柱で構成されるという。一つ目は、日本の食材とフランス料理のテクニックを融合させた山口シェフ流ガストロノミー。二つ目は、観光客を想定した神戸ビーフ。三つ目は、ロマンティックなプロポーズプラン。「ここビーナスブリッジには恋愛成就の伝説があります。未来のある若い二人のために、利用しやすい価格で提供できたら」。

山口シェフが30数年前、フランスで体得した「ムニュ・レギューム（野菜のみのメニュー）を現代的にバージョンアップしたヴィーガンコースも登場予定。写真は種類も火入れもさまざまな野菜に複雑なスパイスを香らせた前菜。※ヴィーガンコースは、昼夜とも同内容で提供。（要問い合わせ）

空が赤から青へと染まるマジックアワーに続き、次第に街の灯りが輝き始める絶景は、いくら眺めても飽きることがない。

２階は大人のスペシャル空間

ちなみに2階は、お忍び感溢れる「amuse Bar (アミューズ・バー)」。ヨーロッパのアンティーク家具を配した非日常の空間は、食後の余韻を楽しみながらグラスを傾けたり、プロポーズなど特別な日を演出する場所としてゲストを迎える予定だ。

宮廷を思わせる、エレガントかつ重厚なバーのインテリア。明石鯛などが描かれた天井画、オールドバカラやラリックといった博物館クラスのコレクションも圧巻。

山口シェフのキャリアの集大成と、神戸という土地の魅力を体験できる一軒。いつもより少しだけ足を伸ばして、山の手での優雅な時間を愉しみたい。

■店名
神戸北野テラス
■詳細
【住所】兵庫県神戸市中央区神戸港地方口一里山
【電話番号】078-894-3200
【公式サイト】https://www.kobekitano-t.jp/