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大阪料理会とは 組織メンバー 今月の大阪料理 活動レポート
今月の献立 〈第116回〉
2021年 2月

1月半ばに緊急事態宣言が発令されたため、3カ月ぶりの開催となった。明るいニュースが乏しい飲食業界ではあるが、本会の運営委員である『浪速割烹 㐂川』店主・上野修氏が昨年、現代の名工を受賞。朗報に際して畑会長は「大阪の料理に真摯に取り組んできた功績等が支持されたのだと思う」と祝辞を述べた。また、今回は試作発表を担当する島村氏より、料理に加えて大阪料理の始末の精神をSDGsの観点から考えるための講義も行われた。



杉本 亨 杉本 亨さん

浪速割烹 和亨

ぐるなび
島村雅晴 島村雅晴さん

懐石料理 雲鶴

お店HP
ぐるなび



◆2月のテーマ「始末 祝い」  杉本 亨による献立
献立1

春甘藍白和え
烏賊蒲鉾
鯖へしこ御握り

「日ごろから当たり前のようにやっている“始末”の仕事。割烹で合間にちょっと出す料理を中猪口といいますが、今回はそのイメージで仕立てました」と杉本さん。
白和えは、柔らかい春甘藍(春キャベツ)の茎まで使ったもの。葉はだしをとった後の昆布の活用し、その上にのせて蒸す。茎は、野菜の切れ端とカツオでとっただしに牛脂を加えた地で茹でる。これを薄揚げと共に、木綿豆腐・白味噌・砂糖・煎りゴマの白地(白和え衣)で和えている。
イカは皮を剥き、下足をミキサーにかけて摺り身にし、卵白、山芋おろしと合わせて、塩・淡口醤油・みりんで塩梅する。プロセスチーズを角切りにして混ぜ、250℃のオーブンで30分ほど焼く。表面に卵白を塗って化粧する。
鯖へしこは自家製。醤油で和えたカツオ節と共に細かく刻んで同割で合わせ、乾煎りする。切り胡麻、一味唐辛子を加え、おにぎりにまぶす。


献立2

【総評】

料理屋における始末の料理とは?というテーマで活発な意見交換が行われた。「野菜の切れ端で味噌汁を作りましたというのでは、料理屋の始末の料理とは言えない。創意工夫がなければ」「捨てる部分を使うにしても、そこに付加価値を付ける必要がある」などの会話がなされ、畑会長は「牛脂を入れた地のコクがキャベツの茎から感じられ、美味しさに繋がっている。このような工夫こそが素晴らしい」とまとめた。
また、鯖や白身が余った時にベタ塩し、調味料を加えた煎り糠に真空で漬ける、という杉本氏のへしこの仕事に興味を持つ会員が多く、ニシンやノドグロのへしこも旨い、といった声も集まった。
祝い椀は、「師匠への想いが伝わってきた」という感想に加えて、「鯛を揚げることで、若竹の存在感が弱まってしまった」という声も。
始末にしても、祝いにしても、今回のテーマは、参加者が「食べ手を思って仕立てることの大切さ」を今一度考えるきっかけになったようだ。

お祝い若竹椀

師匠である『浪速割烹 㐂川』店主・上野修氏の受賞祝いとして仕立てた椀物。椀種として、筍、若布に、薄塩して揚げた鯛。吸い口に炙ったカラスミを添え、吸い地をはる。


大阪料理会
大阪料理会




◆2月のテーマ「SDGs」  島村雅晴による献立
献立1

春キャベツの真丈椀

目に鮮やかな緑色の春キャベツで包んだ椀種は、豆腐と春キャベツの真丈。水切りした豆腐に、ペーストにしたキャベツを合わせ、葛粉を加えて煉った中に、焼いた椎茸、トサカノリ、玉ネギを加えて、春キャベツの葉で包んで蒸し上げている。吸い地は、干したキャベツの葉に他の野菜くずなどを加えて、昆布だしで煮出したもの。動物性の旨みを使わない精進だしを、塩と淡口醤油で加減。キャベツの太い茎の部分をおかき揚げにして添えている。


大阪料理会
献立2

【総評】

椀物は、まずその美しい見た目に目を奪われたというコメントが多数出た。また、精進だしについて、「動物性の素材を使わずに、これほど深い旨みが出せるというのは発見」「次代のだしと言えるのではないか」という声が集まり、運営委員からは「寒風に当てると甘みと旨みが出る。金時人参や白菜は特に、1〜2週間乾燥させるといい」との助言も。畑会長は、「カツオだしを使わないことで、逆にキャベツの旨みがしっかりと堪能できた」と締めくくった。
また、だしがらとなった昆布の使い道としての今回の提案には、「和菓子に仕立てる発想が斬新」との声が集まった。畑会長も「美味しかった!」と絶賛。「料理屋では熱々で出した方がいいのでは? その方が、より昆布の個性が愉しめると思う」と付け加えた。

桜餅 昆布餡

「だしをとった後の昆布で何かできないか」と考えた一品。『雲鶴』では、だしがらの昆布を佃煮にして活用しているが、それでも昆布は大量に余る。佃煮にできない切れ端などもうまく使う方法として、小豆見立てのあんこに仕立てることを提案。磯の風味が抜けていることを逆手に取るという発想で、ミキサーでペースト状にして砂糖を加え、鍋で煉って餡に。蒸した道明寺粉で、先の昆布餡を包み、桜の葉でくるむ。塩漬けの桜の花の戻し汁で作った塩昆布、桜の花を添える。


大阪料理会





撮影/藤澤 了  文/笹井良隆