『トゥールダルジャン 東京』で40年の歴史を実感。
門上武司の「今月の一軒!」
1984年、東京に、ヨーロッパで最古のレストランのひとつ『トゥールダルジャン』の世界唯一の支店がオープンした。今秋40周年を迎える『トゥールダルジャン 東京』の記念ディナーに参加しこれまでの歴史や古典フランス料理の意味を再確認してきた。
店と共に歩んできた総支配人
1582年にオープンして以来、440年以上フランス料理を作り続けてきたグランメゾン『トゥールダルジャン』。その世界唯一の支店『トゥールダルジャン 東京』が誕生したのは、1984年のこと。この時、初代総支配人に就任したクリスチャン・ボラー氏が、なんと現役であるというから驚いた。
「オーナーの故クロード・テライユから『本店をそのまま持って行ってほしい』と。一切妥協は許されない状況で、本店から10名の選りすぐりのメンバーと共に向かいました。ホテル側は90名ものスタッフを用意し待ち受けていたんです」
そこに双方の矜持を感じないわけにはいかない。調理場のスタッフだけなく、ソムリエ、サービスなどあらゆる分野のスタッフを育成していたということになる。
その40周年を記念したプレスディナーに参加してきた。
左から時計回りに日本代表総支配人のクリスチャン・ボラー氏、シェフのルノー・オージェ氏、『トゥールダルジャン』3代目オーナーのアンドレ・テライユ氏。
グランメゾンはかくあるべきを知る。
数十名のゲストに対してかなりの数のサービスマンが配置されていた。ソムリエも数名。空間が醸し出す雰囲気は重厚ではあるが、スタッフが発するフレンドリーで柔らかな空気感が食べる側に緊張感を与えない。これぞサービスの極意と思われる瞬間もあった。ガス入りの水が欲しいと思った途端スタッフがさりげなく側に現れ「お水をお持ちしましょうか」と声をかけてくれたのである。聞けば「全日本最優秀ソムリエコンクール」の優勝者に『トゥールダルジャン』経験者は4名もいるとのこと。そうした素晴らしい人材が育つ環境が整っているのだ。
改めてグランメゾンとは、内装やカトラリーなどハード面の充実だけではなく、そこで仕事する人たちの自由闊達な動きがあって初めて成立するのだと思った。
このディナーのために来日した『トゥールダルジャン』3代目オーナー、アンドレ・テライユ氏は「ここはパリの本店と同じだと思っています。料理はエスコフィエ以来の伝統を守っていますが、常にシェフのクリエーションを楽しんもらえるようにしています」と。
現在のシェフ、ルノー・オージェ氏は32歳という史上最年少の若さで「MOF(フランス国家最優秀職人章)」を獲得した料理人。2013年以降、『トゥールダルジャン 東京』を牽引し続けている。
料理のテーマは「継承」
さて料理はどうか。
それは現在から過去へと遡る「継承」という、非常に考え込まれた素敵なテーマであった。
帆立のマリネ ジンジャーとオレンジの芳香 爽やかなフヌイユのジュレと香気なサフランクリーム。盛り付けから軽やかな味わいまで、まさに現代の料理という感覚
カルディナール風 リ・ドゥ・ヴォーとオマール海老のブレゼ 優美なビスクソース。リ・ドゥ・ヴォー(子牛の内臓)とオマール海老を包み、強調するビスクソースの優雅で軽やかなこと。
フランス産舌平目のムニエル ヴェニシエンヌソース 彩り豊かなキャロットコルネ。グリーンのソースと多彩な色合いが視覚的な美しさを生む効果をもたらしていた。フランス産舌平目の特徴はその厚みにあり。舌平目の皮目の香ばしさと身のふっくら加減が見事。
幼鴨のロッシーニ ロワイヤル仕立て ジロル茸のラグーと薫香ポテトのニュアージュ。シンプルかつ迫力のある一皿は、ロワイヤル仕立ての潔さ。フランス料理におけるソースの存在意義を強く感じる。
マダガスカル産ヴァニラ香るショコラニアンボのムース グリオットチェリーとカカオのアイスクリーム。デザートはフランス料理の過去・現在・未来が表現されていた。
グランメゾンや古典フランス料理の意味を再確認したディナーであった。こうした体験ができる店は、現代において大変貴重である。
■店名
『トゥールダルジャン 東京』
■詳細
【住所】東京都千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニザ・メイン ロビィ階
【電話番号】03-3239-3111
【公式サイト】https://tourdargent.jp/
【Instagram】https://www.instagram.com/tourdargenttokyo/
40周年を迎える今秋には4日間限定の特別メニューを提供する「40th ANNIVERSAIRE SPECIAL 4 DAYS」開催を予定
【期間】2024年11月7日(木)~11月10日 (日)
【時間】ランチ12:00~、ディナー17:30~
【料金】ランチ50000円、ディナー100000円 ※お料理、お飲物(ワインペアリング)、税・サービス料込み