
お菓子を「かがく」するレシピ集『火・空気・水で 極める焼き菓子』
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どんなお菓子にも欠かせない「火・空気・水」をテーマに、全21品の焼き菓子の作り方を解説する本書。お菓子作りをさらにアップグレード! 楽しさと発見に満ちたレシピ集です。
お菓子作りに欠かせない「火・空気・水」の3要素
レシピ集である本書の表紙を飾るのは、卵・砂糖・小麦粉・バターで作られたキャトルカール。4つの同量の材料を使うシンプルなケーキだが、「組み立て次第でお菓子の味も、形も、うんと違ってくる」。同じ素材をパズルのように組み立てては崩しを繰り返し、お菓子の化学変化に出合ってきたという著者の言葉からは、お菓子作りへの探究心、わくわく感が伝わってくる。
同じ材料でも、変化する。ポイントとなるのは、本書のテーマである「火・空気・水」の視点だ。どんなお菓子にも欠かせないこの3つの要素が、仕上がりにどう影響してくるのか、全21種のメニューを通して解説されていく。
本書の冒頭で「表紙のキャトルカールを見て不思議に思ったなら、お菓子作りを楽しむセンスあり」とのこと。答えは「水のこと」の章の中で明かされる。
「かがく」的に焼き菓子作りを楽しむ
例えば「空気のこと」の章では、メレンゲの役割に注目したガトーショコラの作り方が紹介される。チョコレートとバターの重い生地を支えながらも、ふんわりとした軽やかさが出るのは、メレンゲの繊細な空気の泡が要となっているからだ。一方、同じガトーショコラでも「水のこと」の章では、水分を多く取り込むよう、型を置いたバットに湯を注いで焼き上げる「湯せん焼き」の手法がとられる。すると前者は表面がパリッと軽やかな仕上がりに、後者はしっとり喉ごしのあるお菓子に変化する。
こうした火・空気・水によるお菓子の変化、反応は化学/科学的ではあるが、「数字ではかりきれないと感じる」という著者は、あえて「かがく」とひらがなで表現する。
「失敗なくして気づきなし、です。恐れず、火と空気と水を意識しながら感覚鋭く集中するのは、意外と心地よい時間です」
サクサク、しっとり、ふんわり。焼き菓子の心地よさは3つ要素から生まれてくるのだと、作って食べて感じられる。お菓子作りの発見と楽しさを与えてくれるレシピ集だ。
『火・空気・水で 極める焼き菓子』
【概要】20 x 21 x 1 cm、オールカラー、107ページ、1980円
【発行日】2022年12月25日
【著者】津田陽子
【出版社】文化出版局
Writer ライター

あまから手帖 編集部
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