グレース・チョイさんの日本での初コラボ

今回のコラボイベントに招いたグレース・チョイさんは、香港の少人数紹介制の中華レストラン『CHOY CHOY KITCHEN』のオーナーで、CNNが選ぶ『香港プライベートキッチン10選』に選出されるなど「隠れ家レストランの女王」として知られている料理家です。

世界中のラグジュアリーホテルとコラボイベントを経験しているグレースさんですが、実は和食の料理人と日本でコラボイベントを行うのは、今回が初めて。開催の狙いは、同ホテルが開業時からテーマに掲げている‟日本のいいものの発信“。視点も感性も異なる食のプロによる、日本食材の魅力再発見です。

数ある中からグレースさんが使うことにした食材は、奈良の特産品として知られる大和肉鶏、大和ポーク、大和牛の肉3種。 さて、これらをどのように調理されるのでしょうか。

2019年から東京・青葉台にも4席だけのプライベートキッチンを構え、1日数組限定で腕を振るっているグレース・チョイさん。

和食と中華を交互に味わうコース

「普段作っている、等身大の料理も味わってほしい」というグレースさんの希望もあり、コースは、『校倉』料理長・吉田信一さんによる和食と、グレース・チョイさんによる中国料理を交互に提供する仕立てでした。

「中華との調和を図りながら、素材の旨みをシンプルに生かすメニューを考えました。特別な時間に相応しい贅沢な素材使いと、適度な遊び心もお楽しみください」と語る吉田料理長。一方グレースさんが用意したのは、香港スタイルのチャーシューやよだれ鶏、エビのスパイシー煮込みなど、自身が得意とする料理を交えたりベースにしたりしながら、奈良の食材を随所に取り込んだ品々です。

左／吉田料理長による、前菜盛合せ。毛ガニと生ウニをのせたトウモロコシのプリン、スダチを挟んだカマス寿司、鱧ちりと三輪素麺の大和真菜ジェノベ風。バジルの替わりに大和野菜のひとつ・大和真菜を使用。右／グレースさんによる前菜2種。香港スタイルの大和ポークの叉焼（チャーシュー）と、よだれ鶏風に仕立てたピリ辛の大和肉鶏。

左／造り盛合せ。スズキの洗い、戻りガツオの漬け ニンニク卵黄醤油、ボタンエビの紹興酒漬け。紹興酒の甘い余韻が、この後に続くグレースさんの海老料理にさりげなく寄り添います。右／大和肉鶏のスープを隠し味にして旨みを増幅させた、海老と春雨のピリ辛炒め。殻付きブラックタイガーの旨みは「ぜひ手づかみで豪快に味わってください」とグレースさん。香り付けには青森産のニンニクを使用。

左／アワビと小芋の吉野煮。山口産の上等なアワビは、その柔らかさを生かすために葛粉をまぶして仕上げにサッと火を通したのみ。右／グレースさんによる、大和牛と大根の煮込み。ブリスケットと呼ばれる、前足付け根の少し手前にある胸肉を使用して、ほんのり八角の香りを利かせています。2品ともしみじみする滋味深い旨み。

ご飯物は吉田料理長から。土鍋で炊いた白ご飯に鰻の蒲焼きと卵黄の天ぷらをのせて蒲焼のタレを回しかけ、さらにトリュフのスライスをたっぷり散らした贅沢な混ぜご飯。海苔で巻いてかぶりつくスタイルでした。

締め括りのデザートは、2人の作品を盛り合わせて登場。手前が『校倉』の名物デザートの白餡カステラ。上にのっているのは桃の日本酒コンポートとシャインマスカット。仕上げに奈良産のハチミツをかけています。奥がグレースさん作のカシューナッツのスープ。氷砂糖で澄んだ甘みを添え、高級中華食材のツバメの巣と金箔を飾っています。

「特に印象的だった食材が大和和牛。予想以上にやわらかくてエレガントな味。いつもより煮込み時間を短めにして、八角の香りもマイルドに調整しました。同じ調理法でも食材で印象が変わるのが、料理の面白いところですね。和食ならではの美しい盛付けも大いに参考になりました」とコラボした感想を語るグレースさん。吉田料理長も「今まで使ったことのない食材や調理法を知る良い機会になりました」と刺激的な試みを心から楽しんでいる姿が素敵でした。

今後も同ホテルでは、国籍・ジャンルを問わずにコラボイベントを開催する予定だそう。次はどんなタッグで攻めるのか、期待せずにはいられません。

カウンターで共に料理パフォーマンスを披露しているうちに、すっかり仲良くなったグレースさんと吉田料理長。

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