『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』in 奈良

『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』in 奈良

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2023.01.31

文:あまから手帖編集部 / 撮影:大腰和則

『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』が奈良で開催されました。「ガストロノミーツーリズム」とはその土地の気候風土が生み、育まれた食文化を楽しみ、体験することを目的とした観光のこと。昨年行われた2回のイベントを通して、奈良県が今、強く押し進めるムーヴメントをレポートします。

目次

「ガストロノミーツーリズム世界フォーラム」レポート 「スタートアップ・コンペティション」最終審査 奈良県内食材を使ったガラレセプション 奈良県が推し進める「ローカルガストロノミーツーリズム」

「ガストロノミーツーリズム世界フォーラム」レポート

2022年12月12日~15日に奈良市『奈良県コンベンションセンター』にて、日本初となる『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』が開催され、国内外から450名以上、約30カ国から食や観光分野の専門家が集まりました。
同フォーラムは2015年から、国連世界観光機関(UNWTO)などが主催する国際会議。
今回は日本で、しかも東京や大阪、京都ではなく、「奈良」で開催されたということが大きなポイントです。大都会ではありませんが、奈良には古くから培われてきた伝統食材、料理があります。その食文化の情報発信と体験、そして海外での試みなどについてさまざまなテーマで意見を交わすトークセッションが行われました。

記者会見左から、UNWTO駐日事務所 本保芳明代表、奈良県・荒井正吾知事、UNWTO本部 サンドラ・カルバオ観光市場情報・競争力部長、『バスク・カリナリーセンター』ホセ・マリ=アイセガ学長。

「スタートアップ・コンペティション」最終審査

セッション3「SDGs達成に向けた規模の拡大:UNWTOガストロノミーツーリズム・ピッチチャレンジ」では、ガストロノミーや観光をベースとした持続可能なアクションに対してのアイデアやソリューションを提案する「第3回ガストロノミーツーリズム・スタートアップ・コンペティション」の最終審査が行われましたた。各社のプレゼンテーションを経て、選ばれた優勝者は『Byfood』社のセルカン・トソさん。
この会社では国内のグルメと体験商品、食に関するアイテムを集める、日本の食のプラットフォームを作っています。これを使って、食の情報収集、体験情報、レストラン予約サービスなどができるサービスを提案されました。また、1予約・1注文につき10食の給食を途上国の子どもたちに届けるようにしているそうです。

最終審査表彰式セッション3での「第3回ガストロノミーツーリズム・スタートアップ・コンペティション」の最終審査。優勝者は『Byfood』社のセルカン・トソさん(右)

奈良県内食材を使ったガラレセプション

13日夜には奈良春日野国際フォーラムに場所を移して、奈良県主催のガラレセプションが開催。館内では日本各地の食文化紹介の展示・試食や日本酒の試飲、さらにオープニングでは伝統文化である、勇ましい中山太鼓の演奏や「なら燈火会」の会による蝋燭のライトアップなどが演出されました。その後は奈良県内の食材、ブランドイチゴ「古都華(ことか)」や三輪そうめんなどを使った料理をはじめ、全国の郷土料理が屋台風のスタイルでふるまわれ、海外からの関係者も各地の味わいを楽しんでいました。

オープニングパフォーマンス左から、蝋燭によるライトアップ、中山太鼓の演奏パフォーマンス。

ガラディナーパーティー写真右・外国からの関係者もご満悦。写真左下・古都華のかき氷を食べる門上顧問。

奈良県が推し進める「ローカルガストロノミーツーリズム」

奈良県では今回のフォーラム開催に先立って、奈良県観光局主催で、「ガストロノミーツーリズム国内フォーラム」を昨年9月に開催。雑誌「自遊人」代表取締役でローカル・ガストロノミー協会代表理事を務める岩佐十良氏がスペインのバスク地方にあるサン・セバスティアンや氏の地元である新潟を例に「ローカルガストロノミー」についての基調講演を行いました。食文化をキーにしたコンテンツや体験などのプロデュースの重要性、料理人も含めた情報共有の重要性を発表。この他、奈良県川上村の「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」などの事例発表を行ったりと、県をあげて力を入れていることをアピールしました。

『あまから手帖』でも昨年「ローカルガストロノミー」をテーマとして、連載を持っていた弊誌編集顧問の門上武司が、今回の『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』in 奈良についての意義についてコメント。

「ますます世界は狭くなっています。それは旅することのハードルが、これまでと比べ大きく変化しているからです。その目的が『食』である。『旅すること』が簡便になり、目的は『食』。加えて奈良には歴史と文化があります。極論すれば1300年以上も前から海外と交流が行われてきた土地であり、その魅力にはまだまだ眠っているものも多い。そして奈良の『食』は豊かになりました。生産者と料理人の結びつきも強固になってきました。この土地で『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』や『国際フォーラム』が開催されたことは誠に意義深いことです。

「ガストロノミーツーリズム国内フォーラム」右、雑誌「自遊人」代表取締役でローカル・ガストロノミー協会代表理事を務める岩佐十良氏による基調講演。

Writer ライター

あまから手帖 編集部

あまから手帖 編集部

amakara techo

1984年の創刊以来、関西グルメの豊かさをお届けしてきた月刊誌「あまから手帖」編集部。 旨いものを求めて東奔西走、食べ歩いた店は数知れず。パン一つ、漬物一つ掲載するにも、関西の人気店を回って商品を買い集め、食べ比べる真面目なチーム・食いしん坊。

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