「環プロジェクト 第2弾」太子のタケノコ産地×たつのの牡蛎養殖の資源循環
インフォメーション
タケノコ産地の問題と、牡蛎養殖業の悩みを上手く結びつけた、資源の循環。持続可能なローカルSDGsのものづくりのモデルを示す事業、「環(めぐる)プロジェクト 第2弾」の現場を見てきました。
荒れた竹林。間伐した竹をどう利用する?
写真左/兵庫県太子町松尾地区の広大な竹林。手入れが行き届かず、所々に藪が見られる。写真右/伐採した竹を竹チップに加工。「無料でもいいから、使ってくれる人が増えたら」と松尾農産加工組合の井上一幸さん。
兵庫県太子町松尾地区。こちらは戦後から続くタケノコ産地です。農産加工組合では収穫したタケノコを水煮として加工販売を続けていましたが、生産者の高齢化に伴い、竹林の整備の人手が不足してきました。竹の間引きができず、生えてきた竹が密集し、藪になってしまったところも多数見受けられます。
対策として、伐採した細い竹や枝を竹チップや肥料に加工して、タケノコや野菜の栽培に利用するなどのアイデアも出てきました。
では、一番問題となる太い竹をどうするか…。ここで、驚きの発想が。
1年牡蛎を育てる竹の筏を地産地消で
兵庫県たつの市御津町室津(みつちょうむろつ)にある『公栄水産』では播磨灘の恵まれた環境をいかして、大粒な「1年牡蛎」を養殖しています。通常2〜3年かけて育つ牡蛎ですが、室津産は1年で丸々と大きな身に成長します。
室津にある『公栄水産』。写真左/大量の牡蛎をクレーンで水揚げ。試食時は12月だったのでまだ小ぶりだったが、今では大ぶりのものが出回る。
1年で大きく育つため、えぐみが少ないところも魅力の一つです。養殖用の筏(いかだ)に使う竹は主に1本2000円程度で四国などから購入しています。この竹を地元の播磨で賄い地産地消できれば、高騰している輸送コストが下がり、里山再生にも貢献できる…。
こうして、神戸新聞社が主導している「環プロジェクト」として、竹の里と、海をつなぐ試みが動き出しました。伐採した太い竹は筏に。細い竹や筏から外した古い竹はタケノコや野菜の肥料に活用します。兵庫県内での資源循環が誕生。『公栄水産』の代表・磯部公一さんは、「タケノコ業者も漁業者も、お互いが“ウィンウィン”なのがいいですね」と笑顔を見せました。
採れたての牡蛎尽くしの試食会
昨年、12月に神戸新聞社主催で行われた、SDGs資源現場見学のモニターツアーでは、両産地の見学の後、神戸市内の居酒屋『地魚・地野菜・地酒 なん天』と『地魚・地野菜・地酒 しんど』に分かれて、採れたての牡蛎尽くしの料理がふるまわれました。
「加熱しても身の縮みが少なく、味がのっているのがいいですね」と『なん天』店主の楠本喜章さん。地元・兵庫の幸を愛し、品書きにふんだんに入れ込む楠本さんも納得の一品でした。合わせる酒は「環プロジェクト第1弾」で誕生した「地エネの酒 環」。
食品の残さや家畜のふん尿から作るバイオガスを給湯に生かし、副産物の有機肥料「消化液」で山田錦を育て、4蔵が純米吟醸酒を醸します。こうして造られた地エネの酒、『盛典』『播州一献』『富久錦』『福寿』を飲み比べ。ほかにも手を上げる蔵が出て来ており、プロジェクトはさらに広がりを見せています。
室津の牡蛎づくし。写真左から、蒸し牡蛎。前菜3種、上から時計回りに、タルタルソース焼き、有馬煮、牡蛎スモーク。地エネの酒 環の「盛典」。
今後もこのようなSDGsを考えて、未来につないでいく事業をどんどん創り上げていくことが大切だと感じました。
Writer ライター
あまから手帖 編集部
amakara techo