大丸京都店「まんがの壁」の奥深さに胸が熱くなった話
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2023年9月末に「大丸京都店」のレストランフロアがリニューアルオープンしました。店の並びには「まんがの壁」という、約3000冊ものグルメ漫画だけを集めた熱いコーナーが。1日中、居座りたくなるほどマンガ好きにはたまらない充実っぷり。しかし、いったいなぜ、百貨店に?レストランフロアに??
グルメ漫画のみ、約3000冊
2023年9月末、「大丸京都店」のレストランフロアがリニューアルオープン。そのニュースを読みながら目に留まったのは、「『美味しんぼ』など約3000冊の食マンガを揃えた『まんがの壁』コーナーができた」ということだった。
なぜ百貨店に、なぜレストランフロアに…疑問符だらけでマンガ好きの血が騒ぎ、仕事帰りに行ってみた。
一等地に、名作から話題作まで
エスカレーターを登りきり振り返ると、目に飛び込んできたのはマンガがぎっちり並んだ本棚と、ゆったり配された木のイスに座って物語の世界に没入する人たち。本棚を見て回ると、不朽の名作から、最近の話題作まで「グルメ漫画といえば」が罪なほどに並んでいる。
ほっこりオブジェが可愛い、木を基調とした「まんがの壁」コーナー。貸出はしていないが、同じ8階にある屋上広場への持ち出して読むことはOK。
そんな中で、“一般的に”グルメ漫画のジャンルに入らない作品があることに胸が躍った。常々、ストーリーの主軸は食ではないけれど、史実に基づいた食事シーンもすごく魅力的だと思っていた作品だったからだ。グルメ漫画の楽しさは、ただ美味しそうということだけでなく、設定や登場人物の環境を踏まえて、その食事がどんな意味を持つのか、ということこそ魅力だと思う。
そんなセレクト眼を感じてますます意図が気になり、取材を申し込むことに。
グルメ漫画の金字塔『美味しんぼ』が並ぶ壁は圧巻。
往年の名作から、話題作、京都のマンガ特集コーナーも。
日露戦争後の北海道を舞台にした「ゴールデンカムイ」は、“金塊争奪戦”の冒険ものだが、アイヌの食文化を知るグルメ漫画としても魅力的な作品。
マンガは食文化の入口
「マンガは、若い方たちに“食”に興味を持っていただくためのツールなんです。京都には、世界唯一のマンガミュージアムや、「マンガ学部」を有する京都精華大学など、マンガ文化が根付いている土壌がありますからね」と取材に応じてくださった食品部長の今井良祐さん。
「“食”とひと口に言っても、味や料理の話だけではなく、文化的な背景や環境が抱える課題など、その言葉が意味するところは幅広いですよね。そんな奥深い、ときにちょっと難しい「食」の世界を、敷居低く知ってもらうための入口として、マンガを置いたんです。この『まんがの壁』で出合った1冊がきっかけで、食の業界に来る子どもがいるかもしれない。新しい食の未来を作れたらと思っています」。
一方で、食の課題の解決に向けては、大丸京都店は直接的な行動も起こしている。
「京都には素晴らしい生産者さんがたくさんいらっしゃいますが、収穫量は季節や気候などによって変わるので、余ってしまったり、出荷のタイミングで鮮度が落ちてしまったり…作ったものが無駄になってしまう現実があるんです」
京都で300年以上続く百貨店として、課題解決に貢献したいと考えている今井さんたち。様々な協力を得て誕生したのが、3温度帯(常温・冷蔵・冷凍)のトラック運行だ。京都府中の生産者から新鮮で良質な食材、ときには珍しい食材が定期便で大丸京都店に届けられ、このレストランフロアで使えるようにしたのである。ここのテナントは8店舗と、百貨店の規模としては決して多くはないけれど、大丸京都店の熱い想いに賛同した同士たちというわけだ。
環境への意識が高い店や、非効率でも実直に職人の技を磨いてきた店など、料理だけでは見えないテナントの魅力を伝えるのも百貨店の仕事。SNSでの発信だけでなく、「将来、テナントを主役にしたマンガを作りたいとも考えているんです」と今井さん。
大丸京都店をハブとして、地域ぐるみのイベントなども行う予定とか。「まんがの壁」は、大丸京都店が描く未来への入口だったのだ。
同フロアの壁。京都府中の生産者との繋がりが分かる。
「食業界の人は、みんなグルメ漫画を通っているから、オーナーさんたちとも盛り上がるんです」と今井さん。お気に入りの「将太の寿司」の棚の前でにっこり。
■店名
大丸京都店8階レストランフロア「まんがの壁」
■詳細
【住所】 京都市下京区四条通高倉西入立売西町79
【電話番号】 075-211-8111
【公式サイト】https://www.daimaru.co.jp/kyoto/restaurant_floor_open/
Writer ライター
あまから手帖 編集部
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