朝に、昼に、夜に、パンを!/京都・北山『アンドブレッド キタヤマ』
小林明子の「偏愛パン」
今春、開業5周年を迎えた『アンドブレッド キタヤマ』は、昼過ぎに売り切れる日もめずらしくない人気パン店。パンのある暮らしを楽しんでほしいと願う千葉大介さんが、朝に昼に夜に食べたくなる20種前後のパンを焼いている。
国産素材で産地応援
店内に足を踏み入れると、正面の白壁に “千葉さんe(へ) 美味しさの追求” と達筆で書かれているのが見える。
そのサインの主は、低温長時間発酵パン生地の先駆者として知られる、東京世田谷『シニフィアン・シニフィエ』のオーナーシェフ・志賀勝栄さんだ。
「志賀シェフは、私がもっとも影響を受けた方。店を開いて間もない頃、フラッと来られてサインを書いてくださいました」
そう話す千葉さんは数々の名店で腕を磨き、『THE CITY BAKERY』の統括シェフとして活躍した後、奥様の故郷である京都に自店を構えた。
千葉さんが用いる小麦はすべて国産。北海道産や京都府産など、十数種を使い分けている。ミネラル分が多く残る種子島産含蜜糖など、副材料も国産品が中心。そこには産地や生産者を応援したいとの思いも込められている。
会話がはずむような仕掛けも
『アンドブレッド キタヤマ』のバゲットは2種類。少し太めのナンバー1(右)と、やや細めのナンバー2(左)。各1本220円。
「一日を通してパンを楽しんでほしい」と考える千葉さん。
北海道産キタノカオリ100%、朝食に向く“純な”味わいのバゲットナンバー1は開店時間に合わせて焼成。
数種の国産小麦をブレンドした、噛みしめるほどに味わい深く肉料理にも負けないバゲットナンバー2は昼以降に焼き上げる。
ほんのり甘い、一番人気のクロワッサン(270円)は、開業時に比べると1.5倍の大きさに“成長”した。
「無駄をなるべく出さないよう、生地の切り方を変えるうち、段々ビッグサイズになってしまいました」と、サービス精神旺盛な千葉さんは笑う。
かつては折にふれて産地訪問をしていたが、コロナ禍以降は断念。とはいえ、アンテナは常に張っている。
「今、面白いと思っているのは九州産のもち小麦。生地の食感が劇的に変わり、私の好きなモチモチ感が出せる。調べたところ、滋賀県でも栽培されているようなので、リクエストが多いフォカッチャに使えないかと試作を重ねているところです」
全体的にシンプルなパンが多いが、凝った組み合わせのものも季節替わりで登場する。
チャバタに近い生地にココアや胡桃、チョコチップをたっぷり混ぜ込み、自家製シロップに漬けこんだ苺、バトンチョコレートを巻き込んだ、チョコと胡桃と苺のパンは、お菓子感覚のリッチ系。キレのある苺の酸味と多彩な食感で魅了する。
スライスしてそのままで。コーヒーはもちろん、冷やした白ワインやシャンパンにも合いそうだ。
ケーキ感覚の季節替わりパン、チョコと胡桃と苺のパン。1個360円。4月半ばまでの販売。それ以降は具材とフレーバーを一新する。
ショーケースの中や上に並ぶ焼きたてパンには、商品名ではなくナンバーやアルファベットが書かれている。これは「どんなパンなの?」と聞いてもらうためのいわば仕掛け。
「対面販売方式にしたのは、気軽に会話してもらいたかったから。お客様のお声も聴きながら、地域で長く愛されたい」
千葉さんはそう願っている。
オーナーシェフの千葉大介さん
■店名
『アンドブレッド キタヤマ』
■詳細
【住所】京都市北区上賀茂高縄手町88-3
【電話番号】075-746-2223
【営業時間】7:00~17:00(売り切れ次第閉店)
【定休日】木・金曜(不定休あり)
【Facebook】https://www.facebook.com/andbread.kyoto/
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Writer ライター
小林 明子
Akiko Kobayashi