14年親しんだ大山崎から北野白梅町へ

「京都の迷い方（2023年5月号）」の「日々是パン 6店6様の物語」から、誌面に載せられなかった情報をプラスして紹介。第4回目は『ブーランジュリー エトルタ』。フランスを愛してやまない古田夫妻が、寝る間も惜しんでパンを焼き続ける小さな店だ。
※前回はこちらから

学問の神様としても知られる、北野天満宮のすぐ近く。入口には「合格クリームパン」と書かれた、人目を惹く大ポスターが貼られている。 「子どもたちが作ってくれたんです」と、夫妻は目を細める。大山崎駅前に店があった頃は、子どもたちが寝ている間に京都市内の家を出て、帰宅するのは彼らがすっかり寝静まった時間。「子どもの成長が見られる店舗付き住宅を探し、この場所に巡り合いました」。
今も愛さんは夜明け前に厨房に入り、朋広さんは夜ふけまで仕込みに勤しむが、合間には子どもたちの笑顔も見られる。より一層、パン作りに邁進できるようになった。

店名は絶景で知られる観光地に因んで

朋広さんは、ホテルのベーカリーなどで腕を磨いた、コンクールの受賞経験もあるベテランブーランジェだ。愛さんは菓子職人。共通するのは、フランスへの想いだ。

店名の「エトルタ」は、怪盗ルパンシリーズの人気作品「奇岩城（きがんじょう）」の舞台としても知られるノルマンディー地方の有名観光地。その絶景に憧れる愛さんは「いつか店を開く時には店名にしたい」と考えてきた。

店を構えてからも、夫妻は度々フランスに出かけ、各地を食べ歩いた。その成果は、店に並ぶ数多くのパンに生かされている。
「日本人はもちもちとふわふわが好きですが、フランス人はちょっと違う。パンごとに異なる食感を求めるので、職人はたとえ同じ生地を使う場合でも、焼き方を変えてひとつはカリカリに、もうひとつはしっとり仕上げるような工夫をします」と朋広さんは話す。

アルザス地方の名物、薄く伸ばした生地にベーコンや玉ネギを乗せて焼くタルトフランベ。カソナードと呼ばれる赤砂糖をたっぷり振りかけたパイのようなクロワッサン、アルレット。シュークリーム皮の生地で焼く、カリッ＆サクッ食感がクセになるシュケット。フランスのパン屋さんのように、おやつの時間を豊かにしてくれる焼き菓子も数多く作っている。

シュケットは、フランスのパン屋さんではよく見かける焼き菓子。シュー生地をひと口サイズに成型して焼き、カリッとした食感の砂糖をたっぷりまぶす。1袋10個入210円。チョコレートを掛けたものは10個入280円。

そんなフランス風のパンが並ぶ一方、自家製カスタードをたっぷり詰めて“合格”の焼き印を押したクリームパン、手作りカレーと半熟卵を包んで揚げたカレーパンといった馴染み深いパンも人気。

看板商品の合格クリームパン(150円)。は、店頭の様子を伺いながら、日に何回も焼いている。ベーグルからサンドイッチ類、マカロンまで、レパートリーは実に幅広い。

「大山崎の店に比べると、陳列スペースが狭くなったんです。でも、パンの種類は変えてません(笑)。そのかわり、一度に焼き上げてしまわず、少しずつ窯入れしているので、店頭には常に出来たてが並びます」
楽しそうに話しながらキビキビ立ち働く古田夫妻からは、フランスとパンと焼き菓子への深い愛が伝わってくる。

とても仲が良い朋広さんと愛さん。毎日、約80種ものパンと焼き菓子を作っている。

■店名
『ブーランジュリー エトルタ』
■詳細
【住所】京都府京都市上京区西町35
【電話番号】075-468-1547
【Instagram】https://www.instagram.com/boulangerie_etretat/