
多くの京都人が知る、アノ店の名物メニューに深く関わる/京都『プチベア』
小林明子の「偏愛パン」
京都で暮らしている、または学生時代を過ごした人ならほとんどが知っているに違いない、有名串揚げ店の名物がある。そのメニュー誕生時から関わってきたのが、『プチベア』オーナーの田中淳一さん。長年にわたってパンを作り続けるベテランパン職人だ。
20年以上続く、人気串揚げ店との付き合い
「京都の迷い方(2023年5月号)」の「日々是パン 6店6様の物語」から、誌面に載せられなかった情報をプラスして紹介。第6回目は『プチベア』。他店ではあまり見かけない焼きたてパンで、長く地域に愛されている。 ※前回はこちらから
『プチベア』のパンが使われているのは、行列ができる人気串揚げ店『串八』のガーリックトースト。こんがり焼かれたバゲットの上に、たっぷりのガーリックペーストが乗せられていて、子どもから大人までを笑顔にさせる。
『プチベア』と『串八』の付き合いが始まったのは20年以上前。「今の場所に移転する前、ウチの店は『串八』の本店近くにあったんです。おやつ用のパンを社長の奥様が買いに来てくださっているうち、新しいメニュー用のパンを作ってくれないかと頼まれました」と田中さんは話す。
早速、気泡がしっかり入った本格的なバゲットを焼いて持参したところ、「これでは、穴からガーリックペーストが流れ落ちてしまうからアカンと言われました」と笑う。試行錯誤を重ねて、密度が高い生地ながら、焼くとモッチリした食感になるオリジナルバゲットを創作。今も『串八』全店への納品を続けている。
差し入れにも向く名物クリームパン
20数年前、パン屋で見かけることは少なかった、クリスマス用のフルーツケーキ・シュトーレン。当時から毎年焼き続けている田中さんのモットーは「他の店にはない物を」。それを象徴する看板商品が、一日に100個以上売れることもあるクリームパンだ。
型に入れて焼いた生地に、生クリームを混ぜたリッチな味わいのカスタードを後詰めするタイプで、「今は似たような作り方をするクリームパンもあるけど、当時はウチぐらいだったと思うなぁ」。
京都の撮影所への差し入れにされることもしばしば。「人気俳優さんが絶賛してくれたと聞くと、それはもう嬉しくてね」と目を細める。
生クリームを加えたカスタードは美味しいけれども、生地に包んで焼くことができないためどうしたら良いか考えて「後詰めにすることを思いついた」。1個118円。
多くは作らないため、レアな存在になっているのはフルーツサンドだ。ほんのり甘い、ふわふわ食パンにホイップクリームをたっぷり。イチゴやキウイ、黄桃など、季節の果物を挟んでいる。
ベテランパン職人ならではのパンもある。かつて京都にあった『西湖堂』チェーン傘下のベーカリー『バード』の人気商品だった揚げパン・ニューバード(1個216円)だ。パン生地、中に包むソーセージもカレー味。レトロパン好きを喜ばせている。
しっとりきめ細かなパン生地と、ホイップクリーム、季節のフルーツの一体感で魅了するフルーツサンド。1パック378円。
■店名
『プチベア』
■詳細
【住所】京都府京都市北区大将軍西鷹司町12-8 蔭山ビル1F
【電話番号】075-464-1950
【Instagram】https://www.instagram.com/petit.bear1960/

「あまから手帖」2023年5月号/京都の迷い方