日本人による歴史的金字塔。南フランス産のナチュラルワイン
Mr.TERASHITAの「推しワイン!」
毎月、旬の珠玉の自然派ワインをご紹介するMr.terashitaの「推しワイン!」。第4弾は、渡仏14年目の日本人醸造家・岩田幸樹さんが満を持し自社畑から初リリースしたワイン、「ドメーヌ・ワ・スッド キュヴェ・ガン・シラー2019」です。
価格10倍の有名ワインも顔負け
グラスから弾けるあふれる香り、旨味、そして後味のエネルギー波動。その全ての絶対量と突進力が、異次元レベルだ。普段よく飲むシラー、南フランス産のブドウの香りと旨みの量が家の小型ラジオの音だとすると、今回ご紹介するワインは、野外フェス最前列で聞くスピーカーなみ、なのです。
しかも、大音量なだけでなく、香りと味の要素一つ一つは目覚ましく鮮明、明快、かつ透明。まさに堂々たるこのグランヴァン(偉大なワイン)。価格10倍の南フランス・ローヌ産の有名ワインと十分渡り合うどころか、酸化防止剤(亜硫酸塩、ですよ)が格段に少ないゆえ、こちらのほうが上とさえ感じられるほどです。
渡仏14年目。名門で鍛えた美意識の結晶
高品質の理由は「年毎の葡萄の状態を見極め、それに応じた醸造を。培養酵母を使わず、野生酵母のみで発酵させることでしょうか」と、醸造家・岩田幸樹さん。
渡仏14年目。ブルゴーニュのジャン・フォワイヤールなど、ナチュラルワインのトップ生産者に師事し、腕を磨き続けました。ラングドック地方のサン・シニアン村には2015年に移住。ドメーヌ・スーリエに師事し、賃借畑から生む自らのワインの数々は、既にフランス、スペイン、ベルギーなどのナチュラルワインショップでも確固たる人気を獲得していました。
まさに“ほんまもん”のナチュラルワイン
そんな岩田さんが、満を持し入手した、樹齢22年の樹が育つ自社畑からの初リリース作が「ドメーヌ・ワ・スッド キュヴェ・ガン・シラー2019」。
サン・シニアン村は、ナチュラルワインのスーパースター生産者、レオン・バラルが本拠を構えるフォジェール村のすぐ隣、というというところからも恵まれたテロワール(畑を取り巻く自然環境要因)は十分に推し量れようというもの。そこに加え、わずか25hℓ/haというボルドー最高級ワインなみの低収量と、徹底した選果により酸化防止剤わずか20mg/ℓの“ほんまもんの”ナチュラルワインが、燦然と誕生したのです。
すでに、日本人がフランスやニュージーランドなど、世界のワイン産地に移住し、ワインを造ること自体は珍しいことではなくなった時代です。しかし、数多い海外在住・日本人作のワインの中でも、まさに歴史的金字塔作と断言できるこの1本。味わえば岩田さんこそワイン界の大谷翔平だ、との気持ちさえ、力強く湧き上がります。そして…「日本人醸造家が、とうとうこんなに素晴らしいワインを生む時代に…」と、きっと感涙も。ゆえ、抜栓の際は是非、お手元に涙拭き用ハンカチのご準備も、お薦めします。
ワイン詳細
ドメーヌ・ワ・スッド キュヴェ・ガン・シラー2019、3850円。
南フランス・ラングドック地方サン・シニアン村、標高350m、0.32haの自社畑産。醸造は恩師でこの地方の自然派ワインの先駆、ドメーヌ・スーリエのセラーを間借りする。岩田さんは、大阪・松原市の大型酒販店「小松屋」の社員で、同社の“フランス産自社ワイン生産”プロジェクト“を全委任されて14年目。手がけるワインはいずれも卓越した高品質なだけでなく、価格面でもワイン価格観の根本を揺るがす、福祉のような良心価格が驚異的、かつ衝撃的。
●小松屋 【電話番号】072-331-0179 https://www.komatsuya-net.co.jp/
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Writer ライター
寺下 光彦
Mituhiko Terashita