2000円代で十分、の福音。夏味、ナチュール・スパークリング。

2000円代で十分、の福音。夏味、ナチュール・スパークリング。

Mr.TERASHITAの「推しワイン!」

2023.05.15

文:寺下光彦 / 画像提供:ディオニー

スパークリング・ワイン、といえばシャンパーニュ?いえ、それ以外にもヴァリューに優れたスパークリング・ワインは無数です。旬の珠玉の自然派ワインをご紹介するMr.terashitaの「推しワイン!」。今月は、「シン・カヴァ・チャレッロ2019 シン・プロジェクト」の話――。

目次

世界各地で、ますます増えています。上質スパークリング。 農家の自家食卓用野菜のように、手塩にかける。 高品質の秘密は、標準的シャンパーニュの半分以下の収量。 ワイン詳細

世界各地で、ますます増えています。上質スパークリング。

”シャンパーニュ以外のスパークリング・ワインの選択肢の増加と品質向上”。
これは、ここ10年ほどの間の世界のワイン・トレンドの大きな(有難い)キーワードの一つです。

本当にワインの世界は日進月歩。しかも、進歩の速度は年々上がっているようです。値上がりする一方のシャンパーニュと比べて、価格は時に半分、時に1/3。そんなスパークリング・ワインが、世界のあちこちで新たに生まれ始めています。
その代表格の一つが、2018年初リリースのこのカヴァ、「シン・カヴァ・チャレッロ2019 シン・プロジェクト」です。

農家の自家食卓用野菜のように、手塩にかける。

スペイン、バルセロナから南西に車で約1時間。
ベネデス地方で広大な農園を所有するオーナーがナチュールにインスパイアされ、自分の所有するオーガニック栽培畑の中でも特別な区画のブドウだけを厳選。
酸化防止剤(亜硫酸塩)も完全無添加で醸造したナチュール・スパークリングです。

つまり、大地主の農家が自分の家族用と友人用に、特別に手をかけて無農薬で作った野菜、的なニュアンスもある1本、なのですね。

スペイン・カタルーニャのブドウ畑

生産者のアモスさん&アレックスさん生産者のアモスさん&アレックスさん

力強い泡立ちと、イキイキと活力ある酸、明るく朗らかに微笑むようなグレープフルーツ、干したレモンの皮、青リンゴ、ミント、上品なスダチを感じさせる香りと味わい。
酸化防止剤無添加ゆえのなめらかな喉越しの”スイスイ感”も、たまらない魅力です。

余韻の中にほのかに感じる、繊細な塩のニュアンスも、初夏から盛夏まで、太陽の季節の昼酒にも、アペリティフにも、1日の締めにも。マルチな時間帯で幸せを高めてくれること確実。

とても1本2750円とは思えない品質なのですが……高品質に”まぐれ”も”偶然”もなし。オーガニック栽培だけでなく、樹齢40年から60年の貴重な古木の区画から、わずかに1haあたり32hl、という英雄的な収穫量の低減も大きな要因です。

高品質の秘密は、標準的シャンパーニュの半分以下の収量。

この収穫量(hl/ha)という数字は、ワインの品質決定要因の大きな要素なのです。

同じ畑(土に含まれる栄養素は一定)からブドウを4t採るのと、倍の8t採るのでは、それぞれのブドウに詰まった味の濃さと深さは、変わるのは当然。それはまるで1個のティーバックから、お茶を一杯だけ取るか、薄~~くなってもいいから無理に2杯取るか、という世界に近いのです。 ゆえ、世界の主要ワイン産地には必ず収穫量の上限が法律で定められています。1個のティーバックから紅茶4杯採って売ってはいけない、というような趣旨の法律ですね。

もちろん、ブドウ品種が違うので単純比較はできませんが、このスパークリングは、標準的なシャンパーニュの半分以下の収穫量です。高品質なのも納得ですよね。

そんな名品を知れば知るほど、広く世界のいろいろな産地からスパークリング・ワインを試してみようよ、という気運が、今(意識高めの)ワイン・ラヴァ―の間で、高まっているようです。

シン・カヴァ・チャレッロ2019 シン・プロジェクト(Sin Cava Xarel-lo 2019 Sin Project)シン・カヴァ・チャレッロ2019 シン・プロジェクト(Sin Cava Xarel-lo 2019 Sin Project)2750円。
スペイン、カタルーニャ州ベネデス地方で代々、大農園を所有するアレックス・ライオスと、ナチュールに精通する醸造家アモス・バレネスによる新ブランド。所有する区画の中で特に古木が多い6.2haからチャレッロを手摘みで収穫。野生酵母のみで発酵。ドザージュ(最終瓶詰時の極甘口の砂糖リキュール添加)もなし。酸化防止剤無添加。ガス圧もしっかり5.3気圧あり、一般的シャンパーニュとほぼ同等。アルコール11.5%。

●問合せ/ディオニー【電話番号】075-622-0850【公式サイト】http://www.diony.com/

Writer ライター

寺下 光彦

寺下 光彦

Mituhiko Terashita

ワイン&フード・ジャーナリスト:約30年間ボルドー、ブルゴーニュのトップワインを経験後、現在は自然派ワイン一筋。ワイン専門誌の取材でフランス、イタリア、ジョージアなどのワイナリー計300社以上を現地取材。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」青山校、大阪校講師。

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