春の海風を感じる、スペイン南端発・泡ナチュールの心地よさ。
Mr.TERASHITAの「推しワイン!」
毎月、旬の珠玉の自然派ワインをご紹介するMr.terashitaの「推しワイン!」。今月は春におすすめな、潮風を感じさせるスペイン南端のナチュール・スパークリング「ボデガ・ヴィニフィカテ アモロ・ペットナット・白 2021」です。
アフリカのすぐ対岸、シェリー産地のスパークリング。
やっと春が来てくれたよ、というこの季節。心も体もゆるむ空気感にはジャスト・フィットなナチュール・スパークリングでしょう。
対岸のアフリカ大陸まで100 km 弱。シェリーの聖地として世界に威光を放つアンダルシア州ヘレス近郊の港町、サン・フェルナンドに2011年に誕生したこのワイナリー、ボデガ・ヴィニフィカテ。ヨーロッパのナチュールワイン産地としては、死角であり盲点とも思えたこのエリアに、一気に注目を集めさせるほどのポテンシャルあるワインを生み続けています。
海沿いのセラーで、ほのかなミネラル感。
このワイナリーは、畑の多くだけでなく、セラーもほぼ海沿い。それゆえか、温かく人懐っこいほど朗らかな果実味の奥に、 ほのかな潮風を感じさせるミネラルが、多くのワインになんとも心地よく感じられるのです。 活力あるライムと完熟リンゴの香りと、ペットナットの優しい微発泡感も、暖かな季節の昼酒の……強い(危険な?)味方になってくれそうです。
シャンパーニュセラーは巨匠の盟友と共に鍛え、冴えるセンス。
ワイナリー・オーナーのホセ&ミゲル・ゴメス兄弟は、シャンパーニュの巨星、ダヴィッド・レクラパールがへレスに進出したシェリー・メゾンの共同オーナーであり、クオリティー・シェリーの大御所、アレッハンドロ・ムチャーダと共に長年働いたキャリア。
レクラパールが白羽の矢を立てるほどの名匠と共に鍛え磨いたゆえの、酸と果実味のバランスの取り方など、ワインの要所要所のポイントを外さない、折り目正しい味わいもとても印象的。「価格の高騰」がナチュールワインのトレンドワード1位(?)とさえ思える中で、この価格でこの味わい深さは、有難すぎる福音です。
しかも酸化防止剤添加もゼロ。もちろん、オフ・フレーバーは一切皆無。それゆえのスッと体細胞に溶け込むエキス感とクリーンな後味もナチュールワインの醍醐味です。
そういえば、かつてスペインに取材で訪れた際、現地の名ソムリエからこんな話を聞きました。「スペインにはこんな諺がある。ワインを飲むと人間性が明るくなる。ワインは人を自由にするための招待状である」。
この一本こそ、飲む人の人間性を明るく自由にしてくれる、アンダルシアからの贈り物であり招待状、そのものです。
ボデガ・ヴィニフィカテ アモロ・ペットナット・白 2021、3300円。
スペイン、アンダルシア州は夏は雨がほとんどなく海風が強く、ビオロジック栽培の好適地。そんなサン・フェルナンド地区の石灰と砂質土壌で育った樹齢35年以上のパロミノ品種(シェリーの最重要品種)100%。ワインは、少し果皮浸漬したかのような果実のボリューム感とほどよい奥行きもあり。11.5%の低めのアルコールもこれからの季節、アウトドア飲みなどにもピッタリ。このワインは発酵、熟成ともタンクのみだが、他に「3000年前にこの地で活躍したフェニキア人の伝統にのっとり」アンフォラ(土器)熟成ワインも多く手掛ける。
●問合せ先/ラヴニール【電話番号】03-6457-5982【公式サイト】https://lavenir-wine.com/
Writer ライター
寺下 光彦
Mituhiko Terashita