
広がっています。フランス政府認定、ナチュラルワイン認証入りワイン。
Mr.TERASHITAの「推しワイン!」
毎月、旬の珠玉の自然派ワインをご紹介するMr.terashitaの「推しワイン!」。今月は、広がっているフランス政府も認めた認証マーク入りの「アン・ブラン・リーブル2021オンブル・デュ・レザン」です。
ナチュラルワインの基準は、ビオワインより厳しいのです。
長い間、ナチュラルワイン(=通常のビオワインより基準がぐっと厳しい)の認証は、私的な団体のもので、公的な認証基準がありませんでした。
しかし。やっと。2020年末に、フランス商務省及び、フランス原産地呼称委員会のお墨付きで、ナチュラル方式ワイン(Vin Methode Nature)の認証が発効し、大いに話題になりました。
畑が有機農法認定を受けているだけではなく、培養酵母の使用や補酸、補糖といったワインへの”味付け”も一切禁止なのはもちろん。酸化防止剤の含有量がトータルで30㎎/L 以下というなかなかに厳しい基準も大胆でした。
実際、この基準をシビアに適用すると 、現在世界(もちろん日本も)のワインショップやワインバーで「ナチュラルワイン」として売られているものの中で、そこそこの割合が「ナチュラル、の基準に達していない!」ということになる点でも、世間を揺るがすニュースでした。
しかし。そんな厳しい基準を満たすワインは、 南フランスのマイナー産地、アルデッシュなどにも確実に広がっているのです。
今回お薦めするこの生産者は、初の一般リリースが2018年ですが、ナチュラルワイン認証マーク発効と同時に、その審査を通過。2020年からラベルに誇らしく表示しています。
フランス発、認証マークは2種類。
実はこの認証マークは2種類あり、酸化防止剤添加30㎎/L 以下のものと、 完全無添加のものがあります。
こちらは酸化防止剤添加30㎎/L 以下の認証マーク。完全無添加ヴァージョンは、ロゴの右下の小さな文字もなし。
この生産者のものは後者、完全無添加のもの。
2021年ヴィンテージは、ガメイ品種ならではの、素朴で朴訥と、人懐っこさを感じさせる葡萄の果実味と、干した藁のようなニュアンスあるタンニン、 そして酸化防止剤無添加ならではのスウ~ッと自然に喉と体細胞に溶け込むような後味が、目覚ましく心地いい名品です。
そして、一口飲む事に、真面目で情熱ある若者が、無名産地で情熱ある手仕事で、葡萄の世話をしているんだなぁ、という情景が舌とまぶたに浮かびます。
認証があっても、「全ての人のための価格」。
ナチュラルワインの世界的需要の急増により、毎年多くのナチュラルワインの価格が無慈悲なほどに値上がりする中で……、一本3300円という価格も、私の家計には救命ボートのよう、でさえありました。
この上質のワインを、この価格でリリースするのは「上質ワインは、お金持ちの特権であってはいけない。どんな人にも飲んでもらえることが大切だから」との造り手、コラン・アレックスの志も、合掌ものです。
ともあれ、この、まさに真面目な手仕事の味。結構な量の亜流酸を入れつつナチュラルワインを装うコマーシャルな生産者(けっこう多いです)とは、やっとマークでちゃんと区別ができるようになったという点でも貴重です。
そんなナチュラルワイン認証マークの発効、まさにとっておきのシャンパンを開けてお祝いしたい快挙です。
「アン・ブラン・リーブル2021オンブル・デュ・レザン」3300円。
南フランスのナチュラルワインの巨星、アントナン・アゾーニにブドウを売却していたコラン・アレックスが、アゾーニに教えを仰ぎながら2018年からスタートした自社ドメーヌ。ブドウの栽培から瓶詰めまで自分たちで行う。ガメイ品種100%使用。ローヌ北部、アルデッシュのランティリエール村にある畑は、長年ビオロジック栽培だった区画を引退する農家から譲り受けたもの。酸化防止剤は醸造時、瓶詰め時とも完全無添加。ガメイ以外に、シラーやヴィオニエも生産 。社名の意味「自由な藁」は、福岡正信「わら一本の革命」もアイデア源の一つ。
●問合せ先/ラシーヌ【電話番号】03-6261-5125【公式サイト】http://www.racines.co.jp
Writer ライター

寺下 光彦
Mituhiko Terashita