京都のホテルフレンチ『都季 TOKI』がスタイル一新!
門上武司の「今月の一軒!」
「HOTEL THE MITSUI KYOTO」のレストラン『都季 TOKI』が、2022年10月に「イノベーティブ京都フレンチ」を掲げ、スタイルを刷新。編集顧問・門上武司が早速訪問、その魅力をお伝えします。
水の都の「イノベーティブ京都フレンチ」
「水の違いは大きいです。仕事をしたパリと京都では全く異なります。ここでは硬度61度(軟水)の京都・伏見にある酒蔵の仕込み水、伏水(ふしみず)を使います。素材の甘みの出方がこんなに違うのか、と驚きました」と料理長・浅野哲也さんは、鉄板の向こうで話し始めた。
2020年にオープンした「HOTEL THE MITSUI KYOTO」のレストラン『都季 TOKI』は、「ガストロノミー鉄板」として多くの注目を集めた。しかしシェフは京都の和食の料理人などと交流を深め、かつ京都の文化に触れるうち、ここでしか成立しない新たなフランス料理を作ろうと、この10月から「イノベーティブ京都フレンチ」を標榜し、スタイルを一新した。「伏水からとるフォン=だしを見直し、旬の美味しさを映す。これが新たなコンセプトです。カウンターの目の前を厨房にしましたので、臨場感も楽しんでいただければ」と付け加えた。
左/眼前での調理が楽しいカウンターは12席。左から2番目が料理長の浅野シェフ。右/ダイニングは26席、他にもプライベートダイニング1室(6席)を擁する。料理はすべてシグネチャーコース(全12品)18500円から。
“京都フレンチ”を考え抜いた料理
まずは「伏水のお白湯」から始まる。続いて「だしのスナック3種(野菜出汁・鰹出汁・鴨出汁)」。野菜はキャロットラペ、カツオのタルタルをビーツのチュイルで巻いたもの、鴨はモモ肉のコンフィと、フランス料理の手法が存分に生きたスタートである。
そしてこのコースの中でもシグネチャーメニューになるのではないかと思った「鮭 西京味噌 いくら」。鮭は10日間マリネをしてイクラと合わせ、“水のソース”を流す。このソースは伏水と昆布の融合。昆布の旨み、京都の西京味噌の風味、鮭の味わいが渾然一如となり、妙(たえ)なる調べを奏でる。他では味わえない一品だと感じる。
その他、酒粕とフォアグラのテリーヌは田楽仕立てにして供するなど、一皿一皿にフランスと京都の出合いを楽しむことができ、嬉しいかぎり。
技術の高さ×豊かな発想の結晶
「伝助穴子 蕪 百合根」と表記された料理では、そこにイカが加わり、4つの白い食材が揃い、ビジュアル的にも映える。それぞれ異なる火入れと食感、それをまとめるソースの力にはやはりフランス料理の的確な技術が生きていると強く感じる。甘鯛はウロコをパリッとさせた若狭焼き。銀杏のソースが巧みに配置され、季節感とテクニックが見事に息づいているのだ。メインの七谷鴨(ななたにがも)は、まさにフランス料理の世界観が現れていた。鴨の断面の色艶から発する旨みのシグナルに、思わず喉が鳴る。しっとりした質感に仕上げる、的確な火入れ。微かな鉄分と香り、味わいにうっとりしたのである。
視座の高さが料理を前進させる
「和食の料理人さんの勉強会に定期的に参加させていただき、かなりの刺激を受けています。まだまだ京都においても知らないことばかりで、これから自分でもどう変わっていけるか楽しみなんです」と笑顔を絶やさず話す姿には、こちらの気持ちも高揚する。パリではアラン・デュカスと共に働き、「ホテルリッツ」のメインダイニングでは日本人初の統括副料理長を務めるなど、輝かしい実績の浅野シェフ。何時も手綱を緩めない姿勢は、美しく映る。
■店名
『都季 TOKI』
■詳細
【住所】京都市中京区油⼩路通⼆条下ル⼆条油⼩路町284 HOTEL THE MITSUI KYOTO1F
【電話番号】075-468-3100(代表)
【営業時間】17:30~20:30LO
【定休日】ホテルに準ずる
【お料理】シグネチャーコース18500円。※サービス料15%込。
【公式サイト】https://www.hotelthemitsui.com
Writer ライター
門上 武司
Takeshi Kadokami