奈良県食材とイタリア料理を結ぶレストラン『Lega'』誕生

奈良県食材とイタリア料理を結ぶレストラン『Lega'』誕生

門上武司の「今月の一軒!」

2023.01.11

文・撮影:門上武司

豊かな土壌に育まれた農産物や畜産物が注目される奈良。2022年、葛城(かつらぎ)市にイタリア料理店『Lega '』が誕生しました。皿には、土壌を映したような素材感溢れる料理が。その魅力に迫ります。

目次

奈良の食×イタリア料理の調理 大切なのは知識と技術、その体現 店舗情報

奈良の食×イタリア料理の調理

奈良県の食に関わりを持ち、10年以上の歳月が流れる。「奈良フードフェスティバル」の実行委員長を務め、奈良の食材の流布、料理人と生産者の交流、ネットワークの拡大に少しは貢献できたかと思っている。

2022年3月にオープンした奈良県葛城市のイタリア料理店『Lega '』で食事をした時、その思いを強くした。店名の『Lega '』はイタリア語で「結ぶ・繋ぐ」という意味を持つ。コンセプトは「奈良の食材とイタリア料理を結び、生産者の皆様とお客様を繋ぐことで、今、その時この場所でしか味わえない一皿を提供すること」と書かれていた。
これを目にして、一気にシェフ・菅原将吾さんとの距離が近くなった。奈良県、なかでも葛城市の食材がメインとなる料理店が生まれたことに感動を覚えたのであった。

奈良の文化を知り、そこにイタリアのエスプリを掛け合わせる。
土地の味わいは、土と水の賜物。突き出しは大和肉鶏のコンソメにほうじ茶をブレンドしたもの。まさに象徴的な一品。シェフの思いが伝わってくる。生ハムの柿の葉寿司も印象的であった。その姿は奈良県の名物・柿の葉寿司そのもの。葉を広げると、イタリアを感じさせる生ハムに包まれた寿司が現れる。寿司は発酵料理であり、生ハムも同じである。したがってこのアプローチは極めて理論的なのだ。このような融合が生まれることが文化の交流であり、新たな世界への扉を開くきっかけとなると感じる。

生ハムの柿の葉寿司

「フィットチーネ 渡蟹 蕪」というパスタも素敵であった。パスタの粘りある食感には心が踊る。そこにワタリガニのコク。カブの甘みが麗しく寄り添う。たっぷり盛り込まれたワサビ菜のほろ苦さ、レモンの爽やかな酸味が加わり、このバランスと組合せの妙に、シェフの技量の確かさとイタリアでの修業が生きていると感じた。

「葉鰹 発酵乳 太秋柿」。この時季のカツオは脂が乗って美味である。それをカツレツに仕上げる発想が見事としか言いようがない。それもレアに火入れを施す。ミカン、柿など果実の甘みが入り、発酵乳はソースとして存在感を示す。素敵な出合いが昇華した。
葉鰹 発酵乳 太秋柿

大切なのは知識と技術、その体現

メインの大和牛。菊芋に九条ネギが寄り添う。まず火入れが的確なので牛肉の香りを鮮烈に感じる。里芋のピュレ、菊芋のチップなど野菜の力も偉大である。ソースが大和牛のジュと九条ネギのオイルというバランスの良さにも感激であった。食材を生かすために何をどう使うかを熟知したシェフだと思った。
店を開いて10カ月足らずでこのクオリティ。次第に周辺の生産者たちとの交流も深まってくるだろう。食材は一年に一度しか収穫しないものもある。経験がモノをいう世界。経年変化を楽しみたい一軒と出合った。

大和牛 菊芋 九条ネギ

■店名
『Lega '』
■詳細
【住所】奈良県葛城市八川133
【電話番号】0745-48-2322
【営業時間】12:00~15:00(13:30入店)、18:00~22:30(20:00入店)
【定休日】水曜
【お料理】昼/コース3850・5500・7700円、夜/5500・7700・9900円。
【公式サイト】https://www.lega-nara.com/

Writer ライター

門上 武司

門上 武司

Takeshi Kadokami

あまから手帖・編集顧問。年間外食350日という生活を20年以上続け、食事と食事の合間にもおやつをボリボリ…。ゆえに食の知識の深さは言わずもがな。食に携わる生産者・流通・料理人・サービス・消費者を繋ぎ、発信すべく、日々奔走している。

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