
大阪・淀屋橋『ルポンドシエル』が新スタイルでオープン!
門上武司の「今月の一軒!」
1973年の創業以来、大阪を代表するフランス料理店としてハレの日に彩りを添えてきた『ルポンドシエル』。50周年を迎えるにあたって、北浜から淀屋橋へと移転しました。新たなもてなしをご紹介します。
“架け橋”をイメージした設え
大阪のフランス料理店を代表する一軒。『ルポンドシエル』が2022年末、北浜から淀屋橋に移転した。それも新しく建ったビルの地階。しかしながら、戸外からエントランスに入る。つまり、サンクンガーデン(地下を掘って空間を作る)スタイル。扉が開くと、左側にはウエイティング兼ギャラリーの「THE BRIDGE」。ここでしばし気持ちを整え、レストランに移る。
食事スペースはカウンターと個室に分かれている。個室へ向かうアプローチ、そしてアールが付いた壁や足裏に伝わる上質な絨毯の感触など、居心地の良さも素敵だと感じる。地階でありながらゆとりのある雰囲気が流れている。
左/個室へのアプローチでは、迫力あるワインセラーが眺められる。右/個室は4部屋。さまざまな広さの部屋を用意する。個室料1名2420円必要(税・サービス料込)。画像提供:『ルポンドシエル』。
今回はメインのカウンターに腰を落ち着ける。なんと厨房を取り囲むようにコの字型となっている。設計のコンセプトは“架け橋”。店名の『ルポンドシエル』は「天架ける橋」という意味であることから、橋をイメージしたデザインだという。
おまけに驚いたのは地階の厨房内に薪の炉があること。確かに料理界で薪の存在は注目のアイテムであり、自らの調理に薪を取り入れたい料理人は多い。だが、都会のビル内では排気も含めハードルは極めて高い。それを可能にしたこのレストランに関わる人たちの想いの深さと勇気には拍手ものである。
「橋」をコンセプトに設計された店内。アイランドキッチンを囲む14席では、ライブ感を楽しめる。左画像提供:『ルポンドシエル』。
モダンで瑞々しい味わい
総料理長の小楠 修さんは『ルポンドシエル』で29年働く猛者。歴代フランス人シェフのエスプリと確実な技術を見事に吸収し、それを昇華させる料理人である。
「小さなお口始め」が3種。一皿目はフキノトウやスティックセニョールなど季節の食材を巧みに扱い、食べ手の意欲を掻き立てる。二皿目は水タコのカルパッチョ、ハーブの香りと筍を軽やかに合わせ、印象に残る一皿となった。そして三皿目は季節の野菜。木苺や赤ワインなどのソース全てを混ぜ合わせることで相乗効果が生まれる。この3皿を食べただけですっかり小楠さんの世界に引き込まれる。
料理はすべて夜の「グスタティフ」19360円から。「小さなお口はじめ」の3皿。
続く「メカジキのグリルとタルタル トマトと共に」は、トマトのクーリの柔らかな酸味がメカジキに優しく寄り添う。次なる仔牛胸腺肉(リードヴォー)のソテー。胸腺肉の柔らかくて淡白な味わいに何をプラスするか。ここではトリュフと2種のジャガイモのピュレ。ねっとり感を残す王道の仕上がりながら、繊細でたおやかな味わい。これは相当な技術を要する献立だ。 鏡鯛のポワレも同様である。微妙な火入れとブイヤベースソースとの相性が素晴らしい。 仕事の確かさを感じた。
左は「メカジキのグリルとタルタル」、右は「仔牛胸腺肉のソテー ポテトのマキシム風とマッシュルーム」。
取締役総料理長の小楠 修さん。画像提供:『ルポンドシエル』。
薪の力を発揮する料理
メインは「フランス産鳩のロースト シューファルシ ローストのジュ」。胸肉の細やかな火入れとジュのマッチングには食欲が盛んになるほどだ。ソフトなタッチで鳩が喜んでいるかのように胃袋に収まってゆくのである。 また、別皿で用意されたササミと野菜のピュレ。まさにフランス料理を楽しんでいるという感情が込み上げてくる。
このような料理に対して的確なメッセージを届けてくれるのが支配人の田中健二さん。小楠さんの仕事と個性をきちんと理解、そして料理の知識に裏打ちされた言葉が、より興味と理解を深めるのであった。
フランス料理を食べる、というか味わう楽しみに満ち溢れたレストランという印象が強い。次回は個室で仲間と興じたいと思っている。
■店名
『LE PONT DE CIEL(ルポンドシエル)』
■詳細
【住所】大阪市中央区北浜3-5-29 日本生命淀屋橋ビルB1
【電話番号】06-6233-5005
【営業時間】11:30~13:00LO、17:30~19:30LO
【定休日】日・月曜、祝日
【お料理】昼/13310円~、夜/19360円~。※税・サービス料込。
Writer ライター

門上 武司
Takeshi Kadokami