大阪・イタリア料理の名店『ピアノ ピアーノ』第2章
門上武司の「今月の一軒!」
2022年、イタリア料理界を牽引してきた『ピアノ ピアーノ』が閉店。惜しむ声が絶えぬ中、バトンを受け継いだのが『イル ギオットーネ』の笹島保弘さんでした。その想い、その料理とは。さっそく体感してきました。
大阪の名店、継承される喜び
イタリア料理店『ピアノピアーノ』が31年の歴史に幕を下ろしたのは昨年のこと。オーナーシェフの村上卓央さんは、大阪のイタリア料理界を牽引してきた存在であった。
村上さんの元から巣立った料理店は多く(北浜『リルチェンテ』、谷町四丁目『ア カント』、淀屋橋『アンティカ オステリア ダル ポンピエーレ』、福島『パポッキオ』など)、村上さんのDNAは各店に確実に息づいている。その総本山の引退はイタリア料理ファンに多大な衝撃を与えた。
京都『イル ギオットーネ』のオーナーシェフ・笹島保弘さんも、その衝撃を強く受け止めた一人。「30年前に初めて村上さんの料理と出合い、『毎日食べても飽きない味』と、その柔らかな雰囲気に魅せられました。自分もいつかこんな店をやりたい。その想いをずっと持っていたので、継承を願い出たのです」と話した。
店内の雰囲気はほぼそのまま、厨房は少し手を加え、今年の4月1日にリニューアルオープン。名店の灯が消えないことが嬉しかった。
パスタのクオリティに感動
ランチに伺った。パスタランチ、ワンプレートランチ、お任せコースがあり、お任せコースを選んだ。
ビジネス街にある店では、ランチは時間との戦いという側面も持つ。しかしレストランの料理をしっかり食べたい。そんな食べ手の欲求を叶えるコースだった。
まずイタリアを代表するスープ・ミネストローネが運ばれてきた。野菜がたっぷり入った一品で、甘みと旨みが交差する。そして野菜の存在感がしっかり。この一杯で、気持ちが豊かになる。
続いてアンティパストミスト。典型的なイタリア料理の前菜盛合せである。ブロッコリーのアーリオ・オーリオ、蒸し焼きにしたカボチャのバニラ風味、フリッタータ(オムレツ)など馴染みの料理に、「カツオの炙り ワサビ菜添え カラスミかけ」など笹島シェフの個性が光る一品も。この2皿をトントンと提供し、お客を待たせない。
料理はすべてお昼のおまかせコース4389円から。スープ・ミネストローネとアンティパストミスト。
続くパスタに唸った。カウンター前に、大きなパルミジャーノ・レジャーノの塊が登場。茹でたてのトンナレッソが入る。
目の前で料理が仕上がってゆく光景は、食欲を激しく刺激する。チーズのコクとアスパラガスの風味が麗しい融合をみせる。やや硬めのトンナレッソを噛むことで味わいが膨らみ、完成してゆく一品だと思った。
メインは京都産もち豚肩ロースのスカロッピーネ(肉のスライスをさっと焼いてソースなどをかけた料理)。酸味あるソースとも好相性。
デザートとエスプレッソまでいただき、1時間ほどである。ランチで、これだけしっかりと食べることができるのは極めてありがたい。
夜はアラカルトもあり!
ディナーはコースだけでなく、アラカルトも用意されているというのが嬉しい。自らの体調や同席するメンバーによって自由自在な食事が楽しめるということである。
笹島シェフは週に数回、このカウンターに入るという。そして、週に1回ほど、前オーナーの村上さんも顔を出すということも耳にした。
名店が少しずつカタチを変え、継承される。これからの『ピアノ ピアーノ』がどう育っていくのか、楽しみである。
■店名
『ピアノ ピアーノ アル ギオットーネ』
■詳細
【住所】大阪市西区京町堀1-4-22 肥後橋プラザビル 1F
【電話番号】06-6448-5774
【営業時間】11:30~14:00LO、17:30~20:30LO
【定休日】日・月曜
【お料理】昼/パスタランチ1386円、ワンプレートランチ2079円、お任せコース4389円。昼夜共通/Aコース6050円、Bコース9075円。アラカルトあり。
Writer ライター
門上 武司
Takeshi Kadokami