
鹿児島『界 霧島』で 霧島の絶景と薩摩の味に憩う
絶景を‟魅せる“仕掛けが満載
立ち込める朝霧が雲海を描く霧島高原のはるか遠く、風に流された雲間から桜島がゆっくりと姿を現す。霧に煙る海に浮かぶ島を思わせる幻想的な景色に息を呑みながら、‟霧島“の名の由来を実感。「日ごと時ごとに移ろいゆく自然風景への没入感は、ご滞在中の楽しみのひとつですね」。総支配人・松嶋 勇さんの言葉が、素直に響く。
鹿児島空港から車で45分。霊峰高千穂峰に鎮座する霧島神宮からほど近い山中に建つこちらのコンセプトは、‟桜島をはるかに見渡し、湯浴み小屋でうるおう宿“。
全客室が桜島に面したパノラマビューで、すすき野原に佇む温泉へのアクセスは、心躍るスロープカーに乗車しての3分半の小旅仕様。そのほかにも、風を感じるビューテラスなど、随所に施された絶景を‟魅せる”仕掛けが、堪らない。
薩摩名物の美味しい協演
ごく薄削りにされたフワフワのカツオ節が、目の前でアゴ(飛び魚)だしに投入される景色は、唾を飲む絶景。いわゆる追いガツオを卓上で行うしゃぶしゃぶとは、粋なメインだ。
「鹿児島自慢のカツオ節の香りと旨みをダイレクトに伝える、美味しくて新しいしゃぶしゃぶです」と微笑む料理長の福山直人さん。具材の主役はサツマイモをたっぷり食べて育った霧島高原純粋黒豚。鹿児島産ヒノヒカリで造った自家製米麹で仕込む芋焼酎の快作「なかむら」のお湯割りを合わせれば、肉と米の甘みと旨みがふわりと重なり、美しい味の膨らみを見せる。
郷土料理の餅菓子・あくまきをアレンジした香煎揚げには、ビール酵母を使った芋焼酎「一尚(いっしょう)ブロンズ」のソーダ割りを合わせて軽やかに。甘味の軽羹(かるかん)あんみつには、氷点下でキンキンに冷やした黒糖焼酎「紅さんご」のとろんとした甘みを重ねてコク深く。2年目を迎えて巧みさを増す焼酎ペアリングの楽しすぎる提案に、陽気に酔いが回る。
美麗で荘厳な、神々の舞
現地の文化を‟楽“しく‟学“ぶ提案「ご当地楽」のひとつ「天孫降臨ENBU」も、食後の佳景として見逃せない。日本建国の歴史が霧島から始まったと言い伝える神話「天孫降臨」をモチーフにした約20分の演舞は、宿のスタッフが演者とは信じがたいクオリティー。神楽鈴と太鼓を鳴り響かせながら神々が躍動的に舞う姿に、夢見心地になる。
薩摩らしい朝食に、ほっこり
胃を目覚めさせる黒酢リンゴジュースに、具沢山のさつま汁、陶板で焼いていただくさつま揚げ。翌日の楽しみは、心温まる薩摩の朝食から始まる。
「0.01㎜の薄さにこだわった、削り立てのカツオ節です。お好きなだけ白ご飯とどうぞ」。ツヤツヤの白ご飯にふわふわのカツオ節をこれでもかとのせて、甘くて旨くて濃い、地元『サクラカネヨ』の薩摩醤油をひと垂らし。昨夜のしゃぶしゃぶとは趣向を変えた滋味深い口福は、懐かしくて贅沢な味がした。
手業のひとときで焼酎を身近に
宿からほど近い霧島神宮で開運を願った後は、『界 霧島』が提案する文化体験のひとつ「手業(てわざ)のひととき」にて、市内にある焼酎蔵『中村酒造場』へ。1888年の創業以来すべての銘柄を手作業で仕込んでいる県内3軒のみの石造り蔵は、蔵付き酵母を生かした米麹造りから手掛けている数少ない一軒。
「霧島の自然が育む味を造りたい」という強い想いから、蔵にはエアコンどころか扇風機すら置かない電化製品皆無の環境を貫いている。「伝統を繋ぐためには、守るだけではダメ。変化や挑戦も恐れたくない」と話す6代目の中村慎弥さんの、我が子を慈しむように作業する姿や、自身が手掛ける新ブランドを語る眩しい瞳に、胸が熱くなる。
「造り手を知ることで、焼酎が少しでも身近な存在になれば嬉しいです」。『界 霧島』総支配人・松嶋さんの言葉が、再び頭に浮かぶ。
さて、お土産の焼酎はどれを買って帰ろうか。旅の楽しみが、これでまたひとつ増えた。
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- 店名
- 界 霧島
- 住所
- 鹿児島県霧島市霧島田口字霧島山2583-21
- 電話番号
- 050-3134-8092(界予約センター)
- 営業時間
- in15:00~、out~12:00
- 料金
- 1泊2食付き1名あたり31000円~。
- 備考
- ※このページに掲載の内容は2024年5月時の情報です。
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