山梨『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』で ワインに浸る山麓の休日

今回ご案内するのは、夢中になって楽しみ尽くす「PLAY HARD(プレイ ハード)」をコンセプトに、斬新な空間デザインやその地域ならではの豊富なアクティビティを備える「星野リゾート リゾナーレ」ブランドの一軒です。八ヶ岳や南アルプスを望むリゾートホテルには、ワインが暮らしの一部のように寄り添う、上質な時間が流れていました。

葡萄畑アペロでほろ酔いに

日暮れを前に夏色に輝く葡萄畑の向こう、真正面にそびえ立つのは雄大な八ヶ岳。野生のキジがのんきに畑を散歩する姿に、つい頬が緩む。気分はヨーロッパのヴァカンスだ。

「振り向けば南アルプスの山並み。素晴らしい大自然に浸ることが‟葡萄畑アペロ“の醍醐味です」。畑の主・小牧康伸さんが微笑む。ここ『Komaki Vineyard(コマキ ヴィンヤード)』で地元産のワインとチーズを嗜(たしな)むホテルアクティビティは、もう10年以上続いているという。

葡萄畑アペロイメージ
葡萄畑アペロイメージ
左/滑らかなトークを披露する自称・シャベリエの小牧さんは山梨県甲府市の出身。大阪や東京のホテルで長年ソムリエとして活躍した後、山梨に戻り『Komaki Vineyard』を開園。右/アペロとは食前酒を意味する言葉。グラスワイン2杯と八ヶ岳産チーズの盛合せをいただける「葡萄畑アペロ」は1名4500円。要予約で1日8名限定。
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ディナーのテーマは‟ワインと野菜‟

日本屈指のワイン産地・山梨県北杜市の別荘エリアに建つ『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』が目指すのは、地域密着型ワインリゾート。人気のワイナリー『ドメーヌ ミエ・イケノ』との提携など生産者との深い繋がりでも有名だが、近年最大のトピックはメインダイニング『OTTO SETTE(オットセッテ)』の全面リニューアルだ。

ワインカーブをイメージした設えに刷新し、コンセプトはイタリア語でワインと野菜を意味する『Vino e Verdura(ヴィノ エ ヴェルデューラ)』。「前菜からデザートまで、以前に増して野菜を軸にしたコース構成に進化しました」と鎌田匡人(まさと)料理長が魅力を語れば、ソムリエの長久保正邦さんは「野菜の味や香り、テクスチャーも意識して、山梨とイタリアのワインを合わせています」とやりがいを話す。気心知れた2人が織り成すワインペアリングをここで頼まない選択は、ありえない。

『OTTO SETTE』料理長とソムリエ
左/「野菜のポテンシャルを最大限に引き出して満足感あるひと皿に仕上げるのが私の仕事です」と気合を見せる鎌田料理長。長野県出身で今年43歳。右/ワインは約500種類2000本で、ほぼ山梨産とイタリア産。ソムリエとして10年以上勤務する長久保さんが主体となって各皿に寄り添う1本を選んでいる。
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刺激に満ちた甲州テロワール

ワインをモチーフにした器が印象的な前菜盛合せ「野菜のアソルティメント」は、そば粉が香るブルスケッタや空豆のクロケットなど4種類。バラエティ豊かなひと皿に合わせるワインは、白から赤まで幅広いニュアンスを持つロゼ。程よいベリー感と厚みある味が、猪肉も包み込む懐深さを見せる。

30種の野菜が並ぶスペシャリテ「畑の前菜」には、イタリア・カンパーニャのミネラリーな白ワイン。「潮風を受けて育ったブドウならではの塩気が、野菜の甘みを引き出します」と長久保さん。クレソンのジェノベーゼにはハーブ的な清涼感のある白、地元産鹿肉のコトレッタ(カツレツ)には、少しスパイシーな赤。個性的な10組のマリアージュは、デザートに至るまで続く。

『OTTO SETTE』の前菜盛合せ
『OTTO SETTE』のコース(全10品)は15730 円。ワインペアリングは9500円。写真の「野菜のアソルティメント」は、ブドウの葉を象った皿や、ワインコルクをあしらった器で登場。ブルスケッタの上にのっているのは、セロリと鶏レバーのムース。ひと口タルトの中身は、セージが香る猪肉のサルシッチャ。ワインは勝沼『中央葡萄酒』の「グレイス・ロゼ2023」。
『OTTO SETTE』の「畑の前菜」
スペシャリテ「畑の前菜」は、冷たいヴァーニャフレッダソースやグリーンマスタードマヨネーズを自由に絡めて味を変えながらいただくスタイル。イタリアの白ワイン「ヴィア・デル・カンポ・ファランギーナ2022」を合わせて。
『OTTO SETTE』の「ジェノベーゼ」「コリンキーと鹿肉のコトレッタ」
左/クレソンのジェノベーゼとリングイーネ。山梨の煮貝文化にちなみ、ツブ貝の旨みを生かした味付けに。右/燻りたくあんで風味付けした「コリンキーと鹿肉のコトレッタ」。鹿の旨みをベースに塩柚子と山梨伝統の万能七味・スリダネを利かせたソースで。
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幸せすぎる部屋飲み

ボルドーカラーを基調とした特別客室に戻れば、施設内のワインショップ『八ヶ岳ワインハウス』で入手しておいたおつまみセット「VINO BOX」が待っている。部屋付きのワインセラーの中には、希少な『ドメーヌ ミエ・イケノ』のワインが何本も揃っていたことも、もちろん忘れてはいない。

まだまだ夜を終わらせたくないけれど、目覚めの白ワインも悪くないな。そう思案しつつ、快適で上質な部屋飲みにふける。

『リゾナーレ八ヶ岳』の特別客室
左/特別客室「ワインスイートメゾネット」は3室のみ。2名1室利用時で1名あたり32000円~。広々とした寝室フロアの壁には、八ヶ岳が描かれている。右/階段を昇った先は、部屋飲みに最適なソファフロア。セラーに眠るワインは常時10数種で、750㎖5000円前後から(価格は銘柄により変動)。ワインクーラーや専用グラスも完備されている。
『リゾナーレ八ヶ岳』の「VINO BOX」
左/山梨県、長野県の24種類のワインを25㎖200円からで飲める「八ヶ岳ワインハウス」は22時まで営業。量り売りも25㎖から対応してくれる。右/持ち運び可能なオリジナル木箱におつまみ4種とワイン2種(赤白各200㎖)を詰めた「VINO BOX」は2800円。施設内のどこでも飲食OK。
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まだまだ続く、ワインの時間

野鳥の賑やかなさえずりに目を覚まし、朝食はビュッフェ&グリルレストラン『YYgrill』へ。山賊揚げや鳥モツ煮などほっこりする山梨の郷土料理で胃を満たした後は、施設内のブックストア『BOOKS&CAFE』でお土産探し。旅や料理など約3000冊を取り揃える本格的なブックカフェには、地元クラフト作家の作品や雑貨も豊富に並んでいる。

チェックアウト後も、楽しみは尽きない。
レストランやカフェ、ベーカリー、ヨーロッパ雑貨など、ジャンル豊富な19店舗のショップが立ち並ぶホテルのメインストリート「ピーマン通り」の散策も外せない。

BYO (Bring Your Own(wine)の略称)といって、レストランやカフェにワインを無料で持ち込めるサービスも、『リゾナーレ八ヶ岳』ならではの、気の利いたサービス。『清里ハム』で注文したアソートピッツァのまわりに、買い集めたつまみと昨夜飲み残したワインを広げて、昼酒に興ずる。

帰りの電車まで、まだまだ時間はある。雲一つない青空が、いつにも増してキレイに見えた。

『リゾナーレ八ヶ岳』の朝食ビュッフェなど
左上/『BOOKS&CAFE』は壁一面の本棚が印象的。右上/『YYgrill』での朝食は宿泊者限定。ビュッフェ形式の食べ放題で2800円。左下/『清里ハム』のアソートピッツァ1850円。ホテル売店で購入できるオリジナルのドライフルーツは、シャルドネ&メルロー、シャインマスカット各1袋760円。右下/『ハレテラス』のジェラートは常時15種類前後。チーズ&チーズといちご姫夢物語のダブルで1190円。
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