
大分『界 由布院』で時間を忘れる里山暮らし
季(とき)を告げる棚田の景色
すくすくと稲が育つ青田を、薄紫から濃紺へと日暮れゆく空が、柔らかく染めていく。誰もがその美しさに言葉を奪われ、周囲に響くのはヒグラシやカエルの切なげな鳴き声だけ。自然に抱かれるまま何もしない時間の豊かさに、じっくりと心が満たされていきます。
由布院と言えば、大分随一の湯治場・別府の奥座敷として知る人ぞ知る山間の人気温泉地。その中でもここ『界 由布院』は、敷地内に棚田を擁するという、全国的にも稀なランドスケープ。‟棚田暦で憩う宿“をコンセプトにした日本の原風景に出合える宿として、海外からも高い評価を得ています。
内装のテーマは‟上質な農家“
「ありのままの自然に癒されながら、大分の歴史や文化にも触れていただくご滞在になれば」と、総支配人の森川 環さん。由布院の農閑期の手仕事・わら綯(な)いを体験できるご当地楽に続き、1日1組限定で「本格焼酎ディスカバリー」なる大分の麦焼酎講座を新たに提案中。アプローチに竹林を配し、トラベルライブラリーを竹のフローリングにしているのは、大分が真竹の生産日本一なことが理由です。
しっとり落ち着いた内装のキーワードは‟上質な農家“。黒を基調としたフロントカウンターは、かまどを模した丸い形状に羽釜のオブジェを据えた遊び心ある意匠。館内随所に惜しげなく使う日田杉や国東(くにさき)半島の七島藺(しちとうい)、竹、ワラなどのご当地素材が、洗練されていながらも寛げる柔らかな空気感を生んでいます。
鹿と猪の出合いを知る‟ももんじ鍋“
食事は朝夕共に、1階にある半個室風の食事処でいただきます。三百年以上の歴史を繋ぐ日田市の小鹿田(おんた)焼に盛られた先付は、猪と椎茸のパテを挟んだ温かい最中。続く温物は松茸ほか3種のキノコを使った土瓶蒸しで、八寸を飾るのは渋皮栗の白和えや鶏と干しブドウの松風など。豊かな山の恵みを巧みに魅せる会席は、コース終盤の‟山のももんじ鍋“が山場です。
聞き慣れない“ももんじ”とは由布院でジビエを指す言葉で、ショウガが浮かぶ琥珀色の鍋だしは、骨やスジでとった特製の鹿コンソメだそう。ワクワクしながら猪・鶏・豚3種の肉をくぐらせていただけば、程よい野趣に満ちた初めての口福な出合いが訪れます。
旨みを増した鍋だしは、生蕎麦を直接投じて無駄なく堪能する流れ。締め括りの甘味は、大分の伝統食・やっこめ(炒り米)を忍ばせたミルクジェラート。大分の食文化を何気なく織り込んだ仕立てがほっこり和みます。
雑木林に囲まれたご当地部屋「くぬぎ離れ」専用の湯小屋で月明かりの湯浴みに興じ、翌朝は縁側に腰かけて温かいお茶を一服。旅行というよりも、気分はまるで里帰り。郷愁誘う穏やかな時間を過ごせる、心まで温かくなる温泉旅館です。
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- 店名
- 界 由布院
- 住所
- 大分県由布市湯布院町川上398
- 電話番号
- 050-3134-8092(界予約センター)
- 営業時間
- in15:00~、out~12:00
- 料金
- 1泊2食付38000円~
- 交通
- JR由布院駅から車で約10分、または大分空港駅から車で約60分
- 備考
- ※このページに掲載の内容は2025年7月時の情報です。
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