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こころに効く1日のはじまり「カフェどんぐりで幸せ朝ごはん」:正和堂書店のおすすめ

大阪市、今福鶴見駅からちょっと歩いたところにある『正和堂書店』は、小西さんご家族が経営する街の本屋さん。実は鞄からチラ見せしたくなるオリジナルブックカバーが大人気の書店さんでもあります。 本はココロのごちそうといいますが、ブックカバーに包んで大切に持ち歩きたい、おいしい本を書店員の小西さんにご紹介していただく連載「ブックカバーの下はごちそう」。
第10回は栗栖 ひよ子さんの「カフェどんぐりで幸せ朝ごはん」。なんとなく憂鬱になりがちな今の季節に寄り添い、元気をくれる1冊です。

カフェどんぐりで幸せ朝ごはん (角川文庫) 栗栖 ひよ子 ・著

私は「朝食」という言葉が好きです。
新しい一日がはじまる爽やかさや、キラキラした感じに憧れるのです。 喫茶店やカフェでのモーニングも楽しいですし、旅先のホテルも朝食の素敵さで決めたりします。朝食と聞くたび、ワクワクする私です。

「カフェどんぐりで幸せ朝ごはん」は、そんな朝食を扱った、ほっこりあたたかい物語です。

カフェどんぐりで幸せ朝ごはん(角川文庫)
10

鎌倉にある『カフェどんぐり』は、ツリーハウスと広々としたガーデンテラスがある素敵なお店。
店主のあさひが作るのは、お客様にぴったりのおまかせ朝ごはんです。
学校に行きたくない気分の女子高生には具だくさんの台湾おにぎり、ブラック企業で疲弊したサラリーマンには滋養たっぷりのスープ、夜もバイトをして夢を追う俳優の卵には甘いミルクレープ――。余裕のない心と身体に、とびきりの朝ごはんが染み渡ります。

物語の魅力は、この朝ごはんはもちろんのこと、店主・あさひの人柄です。
あさひは、客がどんな人であろうと、見た目で判断することがありません。それは、うんと年下の子どもであっても。
決してその人を否定をせず、平等に穏やかに接します。そしてめちゃくちゃに聞き上手。
悩みを抱えた客たちは最初は戸惑うものの、あさひの柔らかな雰囲気に、自然と自分の境遇を話していくのです。

あさひと客たちのやり取りを読むうち、ふと、自分のことをあまり知らない人の方が、話しやすいこともあるなと思いました。
以前仕事が上手くいかず悩んでいた時、同僚や仲の良い友人には、辛いという本当の気持ちを話すことが難しいことがありました。
自分のキャラクターと違ってしまうのではないか。変に傷つけてしまうのではないか。 アドバイス通りの選択をしなかったらどう思うだろう。この部分の話はやめとこうかな。などと、話す内容を調整することも。 それとは逆に、あまり知らない人には自分をつくらず、気楽に話せたように思います。
そしてそういう時の会話って、なんだか分からないけど元気が出たりするんですよね。

店主あさひの穏やかな人柄ととびきりの朝ごはんで、この先に悪いことは絶対に起こらない!という安心感に包まれた物語の数々。刺激的な出来事が良い意味で起こらないので、新生活や新しい環境でちょっとお疲れの方にもおすすめです。

『正和堂書店』が選ぶ、おいしい本連載「ブックカバーの下はごちそう」

大阪の街の本屋さん『正和堂書店』の選書コラム。心に効く本揃ってます。

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正和堂書店

seiwado book store

大阪・鶴見にある1970年創業の街の本屋さん。3代目の小西康裕さんが「読書時間がより楽しくなるように」とデザインしたオリジナルブックカバーが大人気。2代目の典子さん、3代目の康裕さん・敬子さんご夫妻(と4歳の長女)、康裕さんの弟・悠哉さんなど、一家で奮闘するSNSの総フォロワー数は20万人!
instagram@seiwado.book.store