山上遊園地の三角点を攻略! 眺望とインドネシア料理の生駒山ハイク

連載10回目。今回登る生駒山と言えば、家族連れのレジャースポットとして関西ではおなじみの山。その一方で山麓には古い神社仏閣があり、大阪・奈良の両側から参道がのびる。そこにはなにやらインドネシア料理をアテに、下山後飲める酒場があるという。

【下山後酒場3箇条】
1.遅くとも16時から営業している。土日祝日のみの営業でも可(下山するのはだいたい夕方早めだからね)
2.下山(登山)口から徒歩圏内、あるいは公共交通機関一本で行ける(すぐ飲みたいからね)
3.立ち飲みではなく、椅子席がある(休みたいもんね)

占いの聖地を抜け、開運目指し古道を行く

ミツル
生駒山と言えば、山頂一帯に広がる生駒山上遊園地のイメージが強いですね。関西で生まれ育った人なら、子どもの頃に一度は行ったことがあるはず。山頂まではケーブルカーや車道も整備されていますが、実はトレッキングコースも複数整備され、初心者から楽しめる山です。

今回は近鉄新石切駅から石切参道商店街を抜け、辻子谷コースへ入り、生駒山山上遊園地にある山頂を目指します。下山はケーブルカーを使い奈良県側へ。乗換駅の宝山寺駅近くにあるインドネシア料理がウリの『摩波楽茶屋』で一杯やりたいと思っています。これまで経験を積んできたおばやしさんなら楽勝ですな。
おばやし
は、はい。実は一ヶ月前の中山最高峰以来、山に登っていないんですよね。なんかカラダが重い・・・。

生駒山は小さい頃に行ったような記憶があるような、ないような……。でも今回の登山口となる石切参道商店街は行ったことがあります!ここはおでんやよもぎ餅を売る店が並ぶ中に、占い店もたくさんある占いの聖地!何年か前にも占ってもらいましたよ!
なだらかな登りが続く石切参道商店街。土産店や飲食店に混ざり、占い店が多数点在する。 中腹の興法寺までの道沿いには石仏が八十八体並ぶ。江戸末期から明治にかけて四国八十八ヶ所巡りを模して立てられた。
ミツル
一ヶ月ぶりの登山!? 相変わらず山を舐めていますな。山を楽しむためにも、日頃からせめてウォーキングやジョギングをして体力維持を心がけたいところです。

今回は生駒山の数あるルートの中でも、歴史風情が楽しめ人気があります。しかも帰りはケーブルカーも利用できて安心。

して、その時の占いの結果は?
おばやし
え~と「一生誰かを乗せたリヤカーを引いていく人生」らしいです……。
生駒山辻子谷コース
スタートは近鉄新石切駅から石切参道商店街を抜けていく。その後興法寺への道標を頼りに進み、石段や石畳が続く登りをひたすら耐えて進む。信貴生駒スカイラインまで行けば、山頂三角点がある生駒山上遊園地はすぐそこ。下山はケーブルカーを使い乗換駅の宝山寺駅で下車。そこから宝山寺参道沿いの『摩波楽茶屋』へ向かう約3時間のコース。
ミツル
それアタリ?ハズレ?よう分からん鑑定結果やな!

さて気を取り直して行きますよ!しかし石切神社への参道商店街は賑わってますな〜。飲食店も多いですが、どこも参拝客向けの軽食ばかり。しかも15時頃には閉店する店が多い。我々のように下山後に、がっつり飲みたいハイカーには鬼門ようです。
おばやし
なかにはお洒落なカフェもあるみたいですけど、汗をかいた下山後にはちょっと入りにくいんですよねえ。

しかも今日は湿度が高い!湿気がまとわりついて気持ち悪い……。
あー、お風呂入りたい!ビール飲みたい!
ミツル
…まだ歩き始めて20分な。

参道商店街を過ぎ、近鉄奈良線の高架下をくぐれば、徐々に高度が上がりますよ。振り返って見れば大阪の街並みが意外と下の方に見えます。

今回のコースはほとんどが舗装道や石畳で、歩きやすいです。途中に石切大仏や弘法大師ゆかりの爪切地蔵、四国八十八ヶ所を模した石仏群などが残る古からの信仰の道なのです。

それにこの周辺は、かつては川の流れを利用した水車製粉が盛んでした。
復元水車がある辻子谷水車郷で家族連れがBBQを楽しんでいるでしょう。
途中にある「すなくら橋」までの舗装道は車も通るので注意が必要。
七丁から先は道は古い石段となり、興法寺へと続いていく。
おばやし
事前に予習した付け焼き刃の情報を、相変わらずしたり顔で語りますね。

しっかし、ずーと舗装道の登りですね。じわじわ体力が奪われます。あ、橋が見えました! 橋のたもとで休憩休憩っと。あ〜重い重い、何が重いって自分のカラダが一番重い。

お! 下からカップルが登山とは思えないカジュアルなファッションでやってきます。そんな気軽なコースなんだ……って、橋から先がさらにすごい坂なんですけど!
ミツル
ここまで登山とは言えないような道が続きましたからね。これくらいは辛抱しましょう。ほら、横を流れる川のせせらぎも増して、頭上からは野鳥のさえずりも聞こえます。結構自然を感じさせてもらえるよね〜。

七丁の丁石を過ぎると興法寺へ続く石段が始まります。気合を入れていきましょう!

モミジの森を抜け、山上遊園地内の三角点へ

おばやし
なにこの階段!? ぐぐぐ〜、キツすぎて死にそう。

ふぅ、興法寺到着!あら、門が閉まっている。湧き水で喉を潤そうとも「飲めません」って。いつの間にか野鳥のさえずりはカラスの鳴き声に変わっているし、なんなのこの感じ!
ミツル
そうイライラすると眉間にシワが増えますよ。ここから先は一旦車道とぶつかりますが、中央の石段をそのまま進みます。その先は広葉樹の明るい森に石畳が続き、階段を登れば生駒山上遊園地の駐車場に到着です!
興法寺直前の石段を登るおばやし。 興法寺の先にある広葉樹の森。石畳が整備され歩きやすい。
おばやし
なんだか素敵な森ですね〜。モミジもあって紅葉もきれいかも。しかも山頂に近づくに連れ、心地よい風が吹いてきました。

よいしょっと、階段を登ってと……。ヤター! 駐車場だー! けど車道を駐車場側に渡るにも、ガードレールを乗り越えないといけないし、横断歩道もないし、注意が必要ですね〜。

えーと、ここから先はどこに行けば? ふむふむ。駐車場の警備員の人によると駐車場に沿って歩いていけば、再び登山道があるとな? 分かりにくい! 皆さんも迷った場合は、警備員の人に聞いてください。
ミツル
駐車場奥にある結構長い階段を登れば、ついに生駒山上遊園地到着! そう、生駒山は三角点が遊園地のなかにある珍しい山。インフォメーションを左に曲がってSL列車のコース内にあります!

これまで歴史風情のある登山道を登ってきて、ファミリーやカップルがキャッキャ賑わう生駒山上遊園の中を歩いていくのは若干抵抗がある。しかしこれもまた生駒山。胸を張って歩いていきましょう。SL列車のコース内というもの鉄道ファンの心をくすぐりますしね。
おばやし
ていうか、この遊園地めっちゃ昭和でなんかいいわぁ、和むわぁ。あんな時代ありましたよねえ。SL列車ね、あ、あったあった。
柵に囲まれてSLに乗らないと近くに行けません! 山頂感がないですけど、これも生駒山らしいといえばらしい…。けれど今日は曇ってるし、眺めがいまいち楽しめませんね〜。

あ!あの空中モノレールのぷかぷかパンダに乗れば、絶景が楽しめるはずですよ。乗りましょうよぅ♥ただし一人ずつ。
ミツル
モノレールも確かに鉄道だが、いくら私が鉄道好きと言っても、この歳でぷかぷかパンダは……ええい、これも仕事だ、乗るとしますか。
山頂にあるミニSL。おばやしの視線の先に三角点がある。
ぷかぷかパンダに乗り、上機嫌に手を降るおばやし。乗車料金は一人500円。
おばやし
ーーーぷかぷかパンダ下車ーーー

いや〜楽しかった。
霞がかかってクリアではなかったけど、大阪の街並みは確認できました!ひょっとして山頂より高い位置から眺望が楽しめたかも!
ぷかぷかパンダからの眺望
ぷかぷかパンダからの眺め。あいにく霞んでクリアな眺望とはならなかったが、十分に高度感を楽しめる。

週末の下山後酒場に最適『摩波楽茶屋』

ミツル
おじさんが一人でぷかぷかパンダに乗る辛さを考えてほしいよ、まったく……。

さて、下山して『摩波楽茶屋』を目指しましょうかね。生駒行きのケーブルカーは宝山寺駅で乗り換えが必要ですが、ちょうどそこで下車して徒歩3分ですから。
宝山寺の参道の石段沿いにある摩波楽茶屋。コーヒーマイスターの資格を持つ店長の石渡晃士さんが淹れるコーヒーも評判だ。
おばやし
徒歩圏内といえども、また石段の登りすか・・・。でもこの宝山寺の参道も昭和レトロな雰囲気がいいですね〜。あ、ありました『摩波楽茶屋』! インドネシア料理が食べられるなんて面白いな。

こんにちは〜。あ、奥のテラス席にしましょう! 生駒の街並みはもちろん大和平野が一望できて気持ちいい〜。
ミツル
2011年オープンのこちらは、インドネシア・バリ島のホテルで腕をふるっていたシェフのプルさんが提供するインドネシア料理が自慢。

奈良県産の食材と現地で仕入れたスパイスやハーブを使用し、奈良とインドネシアを融合させたメニューが50種類ほども楽しめるのだ。

平日は14時30分から17時の間は休憩時間だが、土日祝日は嬉しい通し営業!週末の下山後酒場にふさわしい店なのである。
しかも近くの宝山寺に祀られている大聖歓喜天は、インドネシアでも信仰されている象の神様ガネーシャがルーツ。生駒山と不思議な縁で結ばれているのも興味深いじゃろう。
左/大和平野を望むテラス席。二階には貸切可能な個室も用意されている。
右/インドネシアのホテルや東京でも料理の腕を磨いてきたシェフのプルさん。
おばやし
はいはい、いつもの能書きは分かりましたよ。早く飲み物を注文しましょうよ!

えーと、私はハートランドの生ビール(650円)、ミツルさんはいつもの瓶ビールですね? せっかくなのでインドネシアのビール・ビンタン(330ml瓶750円)をお願いします!

そしてアテは、木の実のチップス・ウンピン(600円)、若鶏の炭火焼・サテ アヤム(3本850円)、焼きそばのミー ゴレン スペシャル(1500円)、テンペの炒め物・テンペ サンバル(1000円)にしましょう!
ミツル
ビンタンビールが来ました! ぐびびび〜、プファ〜、うまい! さっぱりした味わいだけど、どこかフルーティさと苦みがほんのり後で来る。何なんだろこの味わい。うまく表現できないけど、うまいものはうまい!
メリンジョと呼ばれる木の実が原料のウンピン。手前が自家製チリソースのサンバル。お酒は日本やインドネシアのビールのほか、バリ島のココナツの蒸留酒アラックを使ったカクテルもある。
おばやし
その表現でよくグルメ雑誌の取材をしていましたね。では私はハートランドを……ふぅ、大和平野の風景を眺めながらビールを味わえるなんて、極楽。

お、ウンピンが来ました! サクッとした歯応えと、ほど良い塩味。ほんのりした苦みもあって、ビールのアテに最高ですわ〜。添えられたサンバルを付けて、味変と・・・。か、辛い!これはつけすぎに注意。ますますビールが進んじゃう辛さです。
ミツル
そのサンバルはこの店の自家製なのじゃ。さぞかし辛いであろう。では私も……。
うわ!辛っ!ヒィ〜、ビールビール。ビールおかわり!いや〜参った、下山後なのにまた汗が流れてきたわい。
酸味のあるソースと野菜、テンペを絡めて炒めたテンペ サンバル。
おばやし
辛いのが苦手なくせに、なにやってんですか!

おっと、テンペ サンバルもやってきましたよ! 私、テンペだ〜い好き! インドネシアの納豆とも言われるけど、日本の納豆ほど臭みがなく、ホクホクしておいしいんですよね〜。発酵食品だから、体にもいいし。
ミツル
普段揚げ物を中心としたジャンクフードばかり食っとる輩には、健康食品であるテンペも焼け石に水じゃよ。

わわわ〜!! 雨が降ってきた! ちょっと店内に移動しましょう! すいません、席の移動をお願いします〜。
店内のテーブルは麻の暖簾で仕切られている席もある。
おばやし
わ! 15時になったところなのに、店内はカップルや女子たちで一杯。やっぱり人気なんですね〜。
お隣の女子はスイーツでティータイムを楽しんでますわ。私にそんな時代があったのかしら・・・。

お、サテ アヤム、ミー ゴレン スペシャルも運ばれてきました〜。サテ アヤムはインドネシアの焼鳥といったところですね。サンバルマニスやピーナッツソースの甘いタレがよく絡んで、うんま!

そんでもってミー ゴレン スペシャルのこのボリューム! 二人でシェアしても十分楽しめますね。味は日本の焼きそばに近く、ツルッとした麺の食感が心地良いわ〜。添えられたピクルスもお口直しにピッタリ。

焼鳥に焼きそばって、お隣のテーブルとは全く趣きが違いますが、だからどうしたってことですよ。
ボリューム感がうれしいミー ゴレンスペシャルと甘いタレが特徴のサテ アヤム。どちらも味変用にピリッと辛いスパイスが添えられている。
ミツル
よし、では私は日本酒に切り替えて……
なになに? 奈良の地酒「夢錦」と「春鹿」、それに「八海山」というレパートリーか。インドネシア料理店なのに、日本酒も嬉しい品揃えじゃのう。では「夢錦」で!

くぴぴ〜。う〜んさらりとした飲み口で上品な甘さ。刺激的なインドネシア料理を邪魔しない絶妙な味ですな〜。
おばやし
ミツルさん、偉そうに語ってますけど、ほんとにお酒の味がわかっているの?

では私はせっかくなので、オリジナルカクテルのウブドフォレスト(750円)をお願いします!

あら〜、なんて美しいグリーンなんでしょ。それにストローで飲むなんてオリジナリティ溢れるカクテルだわ〜。飲んでみると甘いメロンの味わいが広がります。
メロンリキュールのグリーンが美しいオリジナルカクテル・ウブドフォレスト。
ミツル
ウブドとは、インドネシア・バリ島の中央にある森林が広がるエリア。海のイメージが強いバリ島だけど、そこは森のリゾート地なのです。そんな森の緑を表現したカクテルだそうですよ。

さあ、結構お腹も張って、酔いも回ってきました。
これ以上飲むと帰りの石段でひっくり返る可能性もある。ここからの夜景が見れないのは残念ですが帰るとしましょう。
では、ごちそうさまでした〜!!

profile

藤川満

藤川 満

神戸在住のフリーライター。全国各地の低山と酒場をフィールドに飛び回る。日本酒をこよなく愛し「日本酒では全く酔わない」が口癖。
instagram@fujikawamitsuru

おばやし零余子

おばやし零余子

兵庫県宝塚市在住の独身アラフォー編集者。酒と酒場好きで、年々大きくなる身体に危機感を覚え山登りに目覚めるが、一向に痩せる気配なし。最後の晩餐は雑煮。

脱力系山歩き酒飲み連載「下山go酒場」

ベテラン酒飲みハイカー・ミツルと、初心者ハイカー・おばやしが下山後の至福の一杯を求めて六甲山や北摂界隈を痛快トレッキング。

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