神戸・北野『パティスリー グレゴリー・コレ』のアプソリュ。時を超えた漆黒のスペシャリテ。

神戸・元町での創業から四半世紀を超え、現在は北野で愛される『パティスリー グレゴリー・コレ』。南仏の名門ホテルで腕を磨いたフランス人シェフが、約30年前に震災復興の祈りを込めて生み出した「アプソリュ」は、今なおモダンな魅力を放ち続けるフランス菓子の傑作だ。

フランスの美意識が、神戸にやってきた

阪神・淡路大震災の爪痕がまだ生々しく残っていた1997年。「洋菓子の街である神戸に、本場フランスの職人が腕を振るう本物のパティスリーを創り、街を元気づけたい」という創業者の熱き思いから一人のパティシエが招聘された。

南仏ニースの高級ホテル『ホテル・ネグレスコ』で若くして製菓長を務め、数々のコンクールで名を馳せていた気鋭の職人、グレゴリー・コレさんだ。

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神戸の洋菓子文化は、大正期から昭和初期にかけてドイツ人職人が伝えた菓子やパン、ロシア人が開いたチョコレート店などに始まり、戦後はチーズケーキやカスタードプリンなどが喫茶文化とともに市民の日常に広がった。1990年代には欧州帰りの日本人シェフもまばらに登場していたが、主流はショートケーキやチーズケーキ。そんななか、1998年4月に誕生した『パティスリー グレゴリー・コレ』は、フランスのトップシェフが厨房に立ち、本場の美意識とモダンな技術を披露。当時の関西では異色の存在だった。

「当時は、ショーケースの中が真っ黒なケーキばかりでどういうこと!?とよく驚かれたものです」と、振り返る現取締役社長の淺井良世さん。艶やかなグラサージュをまとった小ぶりのムースケーキは、それほど斬新だったという。

2018年に移転リニューアルした北野本店。元美術館というモダンな店内が、モダンなお菓子とリンクする。2階にはカフェスペースが。
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味と食感を緻密に重ねる

そんな同店の象徴として生まれたスペシャリテが「アプソリュ」だ。

「アブソルート(絶対的な)」を意味する名を冠したこのケーキは、幼少期からショコラをこよなく愛し、名門ショコラトリーでも腕を磨いたコレさんの真骨頂。

まるで鏡のように光を反射する漆黒のグラサージュ。気泡一つない美しい仕上げは、実は職人の腕が必要な難しい作業。アプソリュ864円。コーヒーと合わせるのがお勧め。コレさんはよくエスプレッソを合わせていたという。
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ミロワール(鏡)と呼ばれる艶やかなグラサージュの中には、ほろ苦く炊き上げた自家製キャラメルとショコラを合わせたムースが。その中心には、マダガスカル産バニラが香るブリュレが組み込まれている。「ただ美味しいだけでなく、食べ進める楽しさを出したい」と、土台にはヘーゼルナッツの生地を敷き、ショコラを絡めた薄焼きクレープ「フィアンティーヌ」を重ねる。

中央にはバニラのブリュレとその周囲にはキャラメルショコラのムース。土台のヘーゼルナッツパウダーの生地とサクサクのフィアンティーヌが美しく層を成す。
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チョコレートはヴァローナ社のカカオ分70%のショコラノワールが中心で、後味のキレの要因に。

口に運べば、溶けてゆくムースに続いてサクサクと小気味よい食感が現れ、甘みと苦みが響き合いながら濃厚にして口に残らないキレの良さに、緻密な計算と職人技の矜持を感じる。

四半世紀を経ても褪せない魅力

阪神・淡路大震災の直後にこのケーキに出合ったなら、そのモダンで洗練された佇まいに誰もが息を呑んだはずだ。

だがアプソリュの凄みは、四半世紀以上の時を経た今なお、古びて見えない点にある。単なる流行ではなく、フランス菓子の揺るぎない骨格を守り抜いているからこそ、現代の感性にもしっくりと寄り添う。

そのタイムレスな魅力の根底にあるのは、コレさんが徹底して貫いた味づくりの美学だ。

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1つの単調な味わいで終わらせず、複数の味を重ねて生まれる「味と食感のレイヤー」を重視し、甘さの中にビターな味わいを感じる複雑なムースにサクサクとした食感を合わせるなど、食べ進めるなかでの驚きや変化を何より大切にしたという。さらに、果物などの酸などを入れて甘みと組み合わせることで奥行きを出し、後味をスッキリさせることを目指した。

素材への探究心も相当で、来日当時は理想のコクを求めて本国で使っていたものと似たバターを探し回り、フランスと緯度がほぼ同じという北海道・浜中町で作られる特別なバターに行き着くまで妥協しなかったというエピソードからも、こだわりがうかがえる。

コレさんは2010年に帰国したのち、母国で店を開き、ちょうど今年の秋に引退。帰国後の『グレゴリー・コレ』では薫陶を受けたシェフたちが味を引き継ぎ、現在は5代目の日本人シェフがそのスピリッツ(精神)を受け継いでいる。今でも時折、作品の写真を送り合い、日仏の情報を交換しているという。

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レジェンドのレシピを今に紡ぐ

コレさんが日本で過ごした約15年間。その間に創造されたレシピと技術の蓄積は、今も色濃く残る。

現在ショーケースに並ぶ生菓子全15〜17種類のうち、約9種類がコレさんの時代からレシピを受け継いだもの。歴代シェフたちがその黄金バランスを崩さぬよう、大切に守り継いできた証だ。

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なかでもアプソリュは、北野本店の店頭で買える他、ファンからの絶大な支持から、オンラインショップでは全国配送に対応した冷凍ホールケーキも用意。 特別な日に覚えておきたい、贈り物として重宝するに違いない。

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編集部選☆間違いない関西手土産

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