パン好き聖地の名物が京都でも!/京都・嵯峨『パン処 太陽』

パン好き聖地の名物が京都でも!/京都・嵯峨『パン処 太陽』

小林明子の「偏愛パン」

2022.12.12

文:小林明子 / 撮影:岡森大輔

京福嵐山本線の鹿王院駅から歩いてすぐ。2019年10月オープンの『パン処 太陽』はかつてケーキ屋だったが、今は行列ができるパン屋。店主は、全国のパン好きの聖地でもある超人気店『パン焼き小屋 ツオップ』で腕を磨いた職人だ。

目次

師匠直伝、カレーパン 飲み物感覚のトロトロクリームパン 店舗情報

師匠直伝、カレーパン

キツネ色ならぬタヌキ色とでも呼びたい、濃い茶色の衣をまとったカレーパンは、ひと噛みめから印象を刻む。ザクザクッ、隣にいる人を驚かせるほどの快音を響かせるからだ。

揚げたてはもちろん、冷めてもザクザクが持続する秘訣はじっくり長めに揚げること。市販のパン粉では意図する食感にならないので、カレーパンのためだけに焼く食パンと店頭販売している食パンをブレンドして専用パン粉を特製している。

合挽ミンチに香味野菜、20種近いスパイスを加えて仕込むキーマカレーがたっぷり詰まったパンの考案者は、店主・近藤真悟さんの師匠。千葉県松戸市にある、パン好きの聖地として知られる『パン焼き小屋 ツオップ』のオーナーブーランジェ・伊原靖友さんだ。

近藤さんは京都のパン店で腕を磨いた後、千葉へ。「求人はしていないと言われたにも関わらず、どうしても働かせてほしい」と直訴。根負けした伊原さんに入店を許され、5年にわたって薫陶を受けた。

『ツオップ』のカレーパンは日に700個以上売れることも少なくない。都内にはその専門店もある看板商品だが、取り寄せは不可。行かねば食べられないマニア垂涎(すいぜん)のカレーパンを、近藤さんは師匠の許しを得て製造している。

1つだけ違うのは、京都らしさを出したくて、フィリングに隠し味として粉山椒を加えていること。雅な香りと優しいピリ辛味で今日もファンを増やし続けている。

京都・鹿王院『パン処 太陽』カレーパン冷めてもザクザク。タヌキ色のカレーパン、1個248円。

飲み物感覚のトロトロクリームパン

もうひとつの人気者はクリームパン。ブリオッシュを思わせる、卵を使ったリッチな生地で、卵黄ときび糖を使って銅鍋で炊き上げるトロトロのカスタードクリームを包んでいる。

「開店当初は、生地の表面に卵液を塗ってスライスアーモンドを貼りつけていたのですが、1年ほど前、その食感、要らないかもと思うようになって。止めました」

お約束のように貼りつけられているクリームパンのアーモンドスライスを疑問に思っていた者として、その英断は大賛成。粉糖で薄化粧されたクリームパンは飲み物のごとく。生地と一体化したクリームがトロッとのどに流れ込む瞬間は、歌い出したくなるほどの口福に誘う。

京都・鹿王院『パン処 太陽』クリームパンこちらは旧バージョンのクリームパン。現在は粉糖をうっすら振りかけたスタイルになっている。1個172円。

近藤さんの祖母がケーキ屋、両親が喫茶店を営んでいた、思い入れ深い物件を改装した店舗には、約60種のパンが焼き上がり順に並べられていく。

京都・鹿王院『パン処 太陽』店主・近藤真悟さん

ムギュッと噛み応えあるバゲット生地に、カレーパンにも使っているキーマカレーを塗り、季節の野菜をどっさり乗せたオープンサンド(518円)。牛乳とバター、卵黄、ヨーグルトから作る歯切れの良い生地に、チョコやミルクなどの自家製クリームをサンドしたヴィエノワ(各259円)。『ツオップ』門下生の証、程よい酸味がある食事パンのヨーグルトライ(330円)。迷う楽しみも味わいたいなら、午前中に来店を。

京都・鹿王院『パン処 太陽』外観

■店名
『パン処 太陽』
■詳細
【住所】京都市右京区嵯峨折戸町27-9
【電話番号】075-861-1869 
【営業時間】7:30~18:00
【定休日】火曜・水曜
【Instagram】https://www.instagram.com/pan_taiyo/?hl=ja

あまから手帖/2021年3月
ひとりふたりで、京都。

少人数でしっとりと、心地の良い時間を過ごせる“新しい古都”をご案内。「ふたりの、食卓」、「岡崎・うつわさんぽ」など。

Writer ライター

小林 明子

小林 明子

Akiko Kobayashi

「パンの街」と呼ばれる京都の商家に生まれる。数人の従業員も住み込む、大家族に育ったため、朝食は各自が用意できるパン食が常だった。以来、半世紀以上にわたって毎朝の主食はパン。パン屋巡りの旅に出ることもあるライター。パンシェルジュ1級。

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