音楽やアートに出会える場所で、ジャジーなあんこを味わう

音楽やアートに出会える場所で、ジャジーなあんこを味わう

カオリンの「シェフのBGM」

2022.11.24

文・撮影:船井香緒里

京都市役所の西側、美術商店が軒を連ねる通称・寺町美術通りに『ミチカケ COFFEE ANCO MUSIC(ミチカケ コーヒー アンコ ミュージック)』がオープンしたのは2022年4月。ジャジーなあんこスイーツ「ジャズ羊羹」を味わえるカフェ&ギャラリーには、店主のある想いが。

目次

音楽畑の店主が生み出した「ジャズ羊羹」 音に包まれるようなリスニング体験 新しいコト・モノに出会える大人の空間 店舗情報

音楽畑の店主が生み出した「ジャズ羊羹」

ピアノの鍵盤を模した「ジャズ羊羹」に一目惚れしてしまった…。そして味わった瞬間、あんこ好きの友人や音楽関係のあの方へ贈りたい!と心がときめいた。

定番の「クラシック」は、沖縄産黒糖を用いた羊羹の質朴な味わいと、ワインに一晩漬け込んだドライイチジクの芳醇な香りに包まれる。珈琲はもちろん、じつは薄旨の赤ワインとも好相性。ビジュアル一辺倒ではない、その包容力あるおいしさが、私を惹きつけてやまない。

京都『ミチカケ COFFEE ANCO MUSIC』ジャズ羊羹の定番「クラシック」1棹2592円ジャズ羊羹の定番「クラシック」1棹2592円。十勝産小豆と、沖縄産黒糖を用いた羊羹の中には、赤ワインにひと晩漬けたイチジクがゴロゴロと。ミルク餡と竹炭を用いたピアノの鍵盤柄は、「刷り込み」という和菓子の伝統技法で、職人が一つ一つ手仕事で仕上げる。ジャズ羊羹をイートインできるのは『ミチカケ COFFEE ANCO MUSIC』だけ。キューブ&スライスSET(755円〜)。ハンド・ドリップ・コーヒー(600円)。

名作とも言える「ジャズ羊羹」の考案者は、店主の谷川義行さん。大分・湯布院にある音楽好きのためのショップ『湯布院 ジャズとようかん』も営み、京都に姉妹店を開いた今もなお、コンサート企画などを手掛ける音楽畑の人だ。

「ジャズ羊羹はあくまでも入り口なんです。長く愛することができる音楽や手仕事、さらには様々なスタイルで活動を続けるアーティストや作家さんたちを、この羊羹をきっかけに知っていただくことができれば」と話す。

音に包まれるようなリスニング体験を

木の温もりを感じるカフェ・ライブラリー空間には、アップライトピアノの名機「YAMAHA U7 (1965年製)」が鎮座。ふらっと訪れたミュージシャンが不意に弾き始めることもあるらしい。そして本棚の両端では「JBL 4312A(1982年製)」が存在感を放っている。

京都『ミチカケ COFFEE ANCO MUSIC』店内のアップライトピアノの名機「YAMAHA U7 (1965年製)」と「JBL 4312A(1982年製)」

BGMはジャズやピアノが中心。オスカー・ピーターソン、グレン・グールドといったピアノ界のレジェンドはもちろん、プロスケーターのレイ・バービーによるストリート・ジャズも織り交ぜるなど、型に嵌らないセレクト。

「つまりは、混ぜこぜの選曲です。だけど先入観なく“なんか耳障りがいいな”って感じてもらえるように」

時間帯にもよるそうだが、音量は少し大きめ。だから音の振動を受け止めながら、何かに没頭できる時間がこの店にはある。「イヤホンやタブレットで音楽を聴くことが多い今。体全体で音を感じたり、場の雰囲気を楽しむことができるように」と谷川さんが言うように、“音に包み込まれるような感覚”が心地いいのだ。

新しいコト・モノに出会える大人の空間

本棚には、食・暮らし・映画などの古書が並び、実際に手に取ることもできる。

お茶しに(珈琲を飲みに)ジャズ羊羹を味わいにふらっと訪れただけなのに、ふと気づけば音楽や本、アートに触れている。初めてこの店を訪れた時の感覚を、いまだに覚えている。

京都『ミチカケ COFFEE ANCO MUSIC』店内の本棚に並ぶ古書選書家の川上洋平さん(「book pick orchestra」代表)が選ぶ古書が本棚に並ぶ。ジャンルは「映画・カルチャーに関わる本」「食・うつわ・手仕事に関わる本」「旅に関わる本」など。

さらに。店奥にあるギャラリー・イベントスペースでは、アーティストの演奏会や作家の個展などのイベントも随時開催している。

京都『ミチカケ COFFEE ANCO MUSIC』店奥にあるギャラリー・イベントスペース12月3・4日(土・日)には、クラシックユニット「adagio」の演奏会が開かれる。イベント情報はコチラ

「年齢やバックグラウンドに関係なく。大好きなものやお気に入りに“思いがけず、あっけなく”出会っていただける場所になれたら」――谷川さんには揺るぎのない想いがある。

「ジャズ羊羹」がきっかけとなり、まだ知らなかった音楽や珈琲、本、アート…。大人が肩肘張らずして、夢中になれる何かを見つけられるかもしれない。

■店名
『ミチカケ COFFEE ANCO MUSIC』
■詳細
【住所】京都市中京区上本能寺前町476 TATビルディングB1
【電話番号】075-354-5435
【営業時間】8:00〜18:30(季節により変動あり)
【定休日】不定休
【お料理】黒糖あんのバタートースト590円、ジャズ羊羹トイピアノ(イチジク)645円、ハンド・ドリップ・コーヒー600円。
ジャズ羊羹クラシック(テイクアウト)2592円。
https://www.kyoto-michikake.jp/

あまから手帖/2022年11月号
これからの旅は、ローカルへ
わざわざ目指したい、ローカル・レストランとオーベルジュの旅特集。こちらは「Amakara Topics」内の「おいしい音楽」にて掲載。

Writer ライター

船井 香緒里

船井 香緒里

Kaori Funai

「Kaorin@フードライターのヘベレケ日記」でお馴染み。酒と酒場と音楽をこよなく愛し、「Led Zeppelin」、「The Who」はじめ60〜70年代の洋楽ロック好き。愛用するスピーカーは「Tannoy ⅢLZ」66年製。アウトドア好きでもあり、ジョギングとロードバイクにて健康維持。https://kaorin15.exblog.jp/

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