天井にはオリジナル・スピーカー

「毎日、鳴らしているからなのか、音がまろやかになってきた気がします」

『sabor a mi』のたみちゃんこと、店主・ソムリエールの高橋多弥さんは天井を仰ぐ。その先にあるのは、5年近く使い続けている天井スピーカー。
「開業した頃はスピーカーを買う予算がなかったので、心斎橋『バージャズ』のマッキーさん（店主・牧慶次さん）と、大工さんにアドバイスを頂き」完成したのが、天井埋め込み型。
オーク板に、「Technics」のゲンコツスピーカーをネジで止め天井に貼り付け、壁の裏でデジタルアンプに繋いでいる。知恵を出し合い生まれた、オリジナル・スピーカーだ。

地域や民族に根ざした音楽を軽やかなタッチで

ワインバー『sabor a mi』は、まだ外が明るい時間から飲むことができて嬉しい。

「今日みたいな天気のいい昼間に合う曲です」とかけてくれたのは、キューバン・ジャズ・ヴォーカリストであるマテオ・ストーンマンの名作「sabor a mi（サボラミ）」。
「キューバの香りが漂う、このふわっとしたサウンドが昼飲みに合うなって。実はウチの店名のルーツが、この曲」。

「個人的には、世界の各地域で派生した民族音楽が好きなんですけどね…」。
たとえば、サンバやボサノヴァなどブラジル音楽のルーツとされる「ショーロ」や、西アジアやヨーロッパのロマ民族（ジプシー）を中心に発達した「ジプシー・ミュージック」など。
「時代も地域も様々ですが、全く洗練されていない、魂に響くようなサウンドに惹かれます。だけど、BGMとしてはヘビーなので…。もう少しだけ軽やかなタッチのものを流しています」。

15時の開店以降、明るいうちはブラジリアンやアルゼンチンなどラテン音楽を中心とした爽やかで軽やかなサウンドが優しく響く。
すっかり日も暮れ、お店が活気づき始めた頃には、厚みのあるサウンドも。たとえば、7弦ギターを巧みに操るブラジルのギタリスト、ヤマンドゥ・コスタのアルバムを「気持ち大きめの音量で」流すこともある。
喧騒が通り過ぎた夜には、「お客様の層にもよるけれど…。荒井由実さんなどシティ・ポップや、日本の歌謡曲をかけることもありますよ」とニッコリ。
つまり、時間帯や気候、季節に合わせて選曲は縦横無尽。いつだって自然体なのだ。

そんな彼女がオススメする、喉通りの良いワインが進むのは、BGMはもとより、料理人・内藤みはるさんとのセッションあってこそ。
「ワインありきの味づくりを」。そう話す内藤さんの料理を一言で表すなら、見た目は地味だけどホッとする、また食べたくなる味。

「ししとうのオープンオムレツ」なら、どっしり緻密ながらもスフレのようなエアリーさ。また、きめが細かい鶏レバーのコンフィは、そのクリアな風味に、薄旨系ガメイがピタリと寄り添う。

鶏レバーコンフィとハツのコンフィ800円。グラスワインは常時8種を用意する（1000円〜）。

「自分が飲みに行きたい、心地いい場所にしたかっただけです（笑）」
たみちゃんの想いが詰まった『sabor a mi』の空気感は、いつだって気持ちがいい。
そして音と食とナチュラル・ワインの、無限ループにはまるのだ。

高橋さん（左）と内藤さん。店の半分を占めるオープンキッチンを行ったり来たり。

■店名
『sabor a mi』
■詳細
【住所】大阪市西区京町堀1-9-21 京岡ビル2F
【電話番号】06-6136-5368
【営業時間】15：00〜22：00LO
【定休日】水曜、不定休あり
【お料理】冷菜おまかせ3種盛り1000円、ししとうのオープンオムレツ1200円
【Instagram】https://www.instagram.com/sabor_a_mi.18/