山口『界 長門(ながと)』で新しいフグ料理に出合い、温泉街をそぞろ歩く
モダンでレトロな温泉街
音信川(おとずれがわ)のせせらぎに癒されながら、浴衣姿で提灯片手にぶらり、立ち寄り温泉『恩湯(おんとう)』へ。月夜の散歩を楽しむ熟年夫婦や、川べりで地元産クラフトビールを立ち飲みする西洋人の姿が、道すがら目に入ります。思い思いに時を過ごしている緩い空気感。欄干や川面を温かく照らすライトアップが、モダンでレトロな温泉街によく似合っています。
コンセプトは「藩主の御茶屋屋敷」
JR新山口駅から車で約70分、山口県西北部の長門市にある長門湯本温泉は、かつて江戸時代に歴代藩主が湯治に訪れていた場所。その歴史ある温泉街再生の一環として2020年に開業した温泉旅館のコンセプトは「藩主の御茶屋屋敷」です。
ロビーは武家文化を意識して床の間飾りを表現。客室にあしらわれているのは伝統工芸の萩焼や大内塗、徳地和紙など。宿併設の『あけぼのカフェ』でいただけるどら焼きは、夏ミカンやゆずきちなど、山口特産の柑橘のジャムを挟んだオリジナル。赤間硯(あかますずり)で墨を磨る「大人の墨あそび」なる無料体験もあり、滞在する中で自然と地元の文化に多角的に触れられます。フグとミカンの意外な出合い
土鍋の中、フグの身と共にプカプカと浮かぶのは、ミカン。秋冬限定「てっさと源平鍋で味わうふく会席」のメインは、意表を突く2色鍋仕立てです。「フグもミカンも地元特産品。ミカン鍋は、周防大島などで古くから親しまれているもの。そのアレンジです」と、総支配人の羽毛田実(はけたみのる)さんは話します。
鍋だしにもさりげなくミカンの風味を忍ばせ、特製ポン酢にもミカン果汁を使用。菊盛りされたてっさは、ちり酢のほか、長門の製塩所『百姓庵』のミネラル豊かな海塩や、フグ魚醬とオリーブ油を合わせた粒ウニダレで。次々と訪れる地元の美味との出合いに、旅の幸せを実感できます。徒歩圏内に、気になる新顔だらけ
‟温泉街そぞろ歩き“を観光まちづくり計画のテーマのひとつに掲げた街の変化は、『恩湯』改装や『界 長門』の誕生だけではありません。朝食で供されたアジの干物は、近くの仙崎漁港で水揚げされた地魚を地元業者が加工した逸品。『恩湯』からすぐ、今春新設された『ひものや食堂ひだまり 長門湯本温泉店』へ行けば、食事はもちろん、土産用の干物を買うことができます。
昨晩の夕食で口開けの一杯に選んだクラフトビールは、築60年の元薬局を改装して3年前から醸造を始めた『365+1BEER』(サンロクロクビール)の品。滞在中に宿で触れた若手作家の萩焼をもっと見たいとスタッフに尋ねれば、その醸造所の斜め向かいにある『cafe & pottery 音(おと)』を教えてくれました。
どこも宿から歩いて10分圏内。ときに川辺での休憩を挟みつつ、気の赴くままにミニマルな旅を。それが、今の長門湯本温泉街でおすすめの過ごし方です。data
- 施設名
- 界 長門
- 住所
- 山口県長門市深川湯本2229-1
- 電話番号
- 050-3134-8092(界予約センター)
- 営業時間
- in15:00~、out~12:00
- 料金
- 1泊2食付き1名あたり32000円~。